精選版 日本国語大辞典 「再販売価格維持契約」の意味・読み・例文・類語
さいはんばいかかくいじ‐けいやく ‥カカクヰヂ‥【再販売価格維持契約】
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商品の流通過程において,その商品の所有権がメーカーから卸売業者を経て小売業者に移転していく場合に,すでにその商品の所有権を他に移転した事業者(例えばメーカー)が,所有権を有している事業者の,当該商品の販売価格(例えば卸売業者の小売業者に対する販売価格や小売業者の消費者に対する販売価格)を決定し,それを維持させることを内容とする契約。メーカーがブランド商品について,ブランド・イメージの確立を図ったり,小売業者に対して競争メーカーよりも多額のマージンを保証して自己の商品の店頭での推奨販売をさせるための手段として用いられる。流通系列化の代表的な行為類型である。
1953年の独占禁止法の改正の際に,〈不公正な取引方法〉の禁止に関する規定が設けられ,この種の契約が公正な競争を阻害する場合には,〈不当な拘束条件付き取引〉に該当すると理解されることとなったが,同時に,不当廉売やおとり販売等の不当な競争を防止し,小売業者の利益保護を図ることを目的として,公正取引委員会が指定した商品と著作物についての再販売価格維持契約を独占禁止法の適用除外とする規定も設けられた(24条の2-1項,4項)。ただし,公正取引委員会の指定を得るためには,当該商品が一般消費者によって日常消費されるものであり,当該商品について自由な競争が行われているという条件が満たされねばならない。また著作物については24条の2-4項の規定から直接に適用除外が認められると解されるため,公正取引委員会の指定は不要であり,届出も不要と解される。
日本においてはアメリカ等と異なり,昭和30年代後半に入るまでは,このような制度ができた後も,化粧品,染毛料,歯磨,家庭用セッケン,医薬品,雑酒,キャラメル,写真機等の一部の業界と出版物でこれが利用されたのみで,社会的にさほど大きな問題となることもなかった。ところが1962年以降,日本のメーカーが国内での流通経路を整備し,マーケッティングの体制を充実させるのに平行して適用除外制度の利用が急増し,同時に,指定を受けずに行ういわゆるヤミ再販も活発になった。昭和40年代に入って,消費者物価の上昇に対する物価政策が政府の大きな課題となるにつれ,独占禁止法によるこの種の契約の規制が問題とされることとなった。
諸外国でも,伝統的にこの種の契約を違法とする例が多く,また結果において,小売業者の段階での同一ブランド商品の価格競争を消滅するために,カルテル類似行為として評価されやすいこと等もあって,1975年には最高裁が粉ミルクのヤミ再販を〈不当な拘束条件付き取引〉で独占禁止法違反とする判決を下した。その後,82年の〈不公正な取引方法〉の一般指定の改正によって,ヤミ再販を原則的に違法な行為として扱うようになった。
このような流れの中で,公正取引委員会も指定による適用除外を縮小してきたが,著作物についての再販売価格維持制度をどのようにするかについてはさまざまな見解があり,1996年から97年にかけての独占禁止法の適用除外制度の全面的な見直しの際に,非常に大きな論点となった。それに先立って,公正取引委員会はレコードやCDについては,一定の条件で法定再販からはずす取扱いをして部分的な著作物の再販制度の適用除外の修正を行っていた。しかし,適用除外の全面的廃止をめぐっては,新聞社を筆頭にして,出版業界からの文化的理由による再販制度維持の動きと,競争政策としての再販制度の廃止を求める意見とが鋭く対立し,いまだにその結論は出されていない。
執筆者:来生 新
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生産者と流通業者との間で生産者が設定した転売(卸売りと小売り)価格を流通業者が維持することを定めた契約のこと。略して再販制、再販契約ともいう。再販には、適用期間を限定するか否かによる時限再販か永久再販、適用商品範囲による部分再販か包括再販、値引きを許容するか否かによる値幅再販か確定再販の別がある。このような契約が結ばれる目的は、商品の乱売が行われると、生産者にとっては商品の信用が失われ、流通業者にとっては必要なマージン(利幅)が確保できなくなり、その結果として消費者にとっては商品の説明やサービスが十分に受けられなくなるなど、関係者すべての利益が損なわれる状態に陥ることを防止するという点にある。しかしその反面、現実には、生産者とくに強力な寡占企業が流通業者に定価の維持を強制して価格の下方硬直をもたらし、流通業者間の無用なサービス競争を生み出すなど、消費者に自由経済の恩恵を与えるうえで障害になることが多かった。このため、日本では、独占禁止法により原則的に禁止され、公正取引委員会の指定した品目についてのみ実施(指定再販)が認められてきた。指定の要件は、商品の品質の一様性の識別が容易にできること、その商品が一般消費者により日常使用されるものであること、その商品について自由な競争が行われていること、再販制を実施しても一般消費者の利益が害されないこと、などである。日本では医薬品、化粧品などの商標品について実施されてきたが1993年(平成5)に廃止され、1996年には指定再販そのものが廃止された。ただし例外として、著作物(書籍、雑誌、新聞、音楽ソフト)については、当面維持されるとされた。
[森本三男]
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[再販制]
日本においては,出版物はどこの書店でも定価で売られている。値引きして売ってはならないという契約(再販売価格維持契約)を,出版社,取次店,小売書店の3者が結んでいるためである。このような再販売価格の維持(定価販売)を申し合わせることは,〈自由競争の原理〉に背くため消費者の利益にならない,ということから,通常は独占禁止法によって禁止されている。…
※「再販売価格維持契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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