再保険(読み)さいほけん(英語表記)reinsurance

翻訳|reinsurance

精選版 日本国語大辞典 「再保険」の意味・読み・例文・類語

さい‐ほけん【再保険】

〘名〙 責任保険の一つ。保険者が、巨額の被保険物件に対する保険責任の分散を図るため、責任の一部または全部を他の保険者に負担させること。〔英和商業新辞彙(1904)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「再保険」の意味・読み・例文・類語

さい‐ほけん【再保険】

保険者が保険契約によって引き受けた責任の一部または全部を、さらに他の保険者に引き受けさせることを目的とする保険。危険分散の方法の一つとして行われる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「再保険」の意味・わかりやすい解説

再保険 (さいほけん)
reinsurance

ある保険者が自己の引き受けた保険契約上の責任の一部または全部について,他の保険者に保険を付けること。はじめの保険者を元受保険者または出再保険者といい,後の保険者を再保険者または受再保険者と呼ぶ。たとえば,1億円の建物の火災保険を引き受けた元受保険者は,3000万円を自分で危険負担(保有)し,残りの7000万円を単数または複数の再保険者に再保険する。この場合,元受保険者は自分の受け取った保険料の中から再保険者の責任に応じた再保険料を支払い,再保険者から元受保険契約獲得に要した費用として再保険手数料を受け取る。再保険者はさらにこの責任の一部を再保険に出す場合があるが,これを再再保険という。再保険取引の効果を元受保険者の側から見ると,自己の責任を分散させ危険の平均化をはかることができるのに対し,再保険者の側から見ると,同質の危険をできるだけ多く集めて〈大数の法則〉がより有効に機能するために資することとなる。再保険は国内の保険者間だけでなく広く国際的に交換されており,ロンドンは再保険交換の世界的中心地となっている。歴史的には,1370年ころイタリアのジェノバからフランドルのスルイスに至る航海の海上保険についての再保険が最古のものといわれ,火災保険は18世紀末ころ,生命保険は19世紀の中ごろから再保険が始まったとされている。なお生命保険の再保険も再保険自体は損害保険の一種類である責任保険であるが,生命保険会社が生命保険の再保険を引き受けることは認められている。ただし損害保険において,特に巨額の危険を引き受ける場合には,再保険が前提となるほど再保険の重要性が高いのに比べると,生命保険における再保険の利用度は低いというのが実態である。

 再保険の形態としては,任意再保険(個別再保険)と特約再保険に大別される。前者が,元受保険契約を引き受けるつど個別に再保険者と交渉して再保険契約の内容を決定するのに対して,後者は,あらかじめ再保険者と契約をし保険契約の種類等による一定の契約群を対象として,約定の条件に合致した引受けは一定の期間すべて自動的に再保険に出すしくみである。再保険は任意再保険から特約再保険へと発展し,現在では,再保険を必要とする巨額の引受けが多くなったことから特約再保険が大部分を占めている。もともと再保険取引は保険会社間の信用に基づいて行われるものであるが,近年事務コスト軽減の要請から,個別契約の明細を添付せずに非常に簡略化した報告書様式で特約再保険取引が行われており,信用度の重要性はますます高まっている。特約再保険をさらに分類すると,(1)元受保険の一定割合を再保険に出す比例再保険,(2)あらかじめ定めた元受保険者の保有額を超えた部分を再保険に出す超過額再保険,(3)一事故による保険金が一定額を超過した場合にその超過額を再保険者が元受保険者に支払う約定をする超過損害額再保険などに分かれる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「再保険」の意味・わかりやすい解説

再保険
さいほけん

ある保険者が引き受けた保険契約上の責任の一部または全部について、さらに他の保険者に保険を付すること。たとえば、10億円の契約を引き受けた場合、そのうち3億円は自分で保有し、残り7億円は他の保険者に再保険する。再保険を出す保険者を元受保険者または出(しゅつ)再保険者といい、再保険を引き受ける保険者は再保険者または受(うけ)再保険者という。再保険は、保険取引そのもののもつ特殊性に基づく危険分散の方法であるが、共同保険がいわば危険の横の分割であるのに対して、再保険は危険の縦の分割である。対加入者関係においては、共同保険ではすべての保険者が加入者に対して直接の関係にたつが、再保険は一保険者(元受保険者)だけが加入者と直接の関係にたち、他の保険者(再保険者)は背後に位置する。近年、生産力の発展による経済規模の拡大につれて、個々の元受保険契約の金額も巨額化してきた結果、元受のつど必要に応じて再保険に出す任意再保険は少なくなり、あらかじめ再保険者と契約しておいて、特定の条件に合致した引き受けは、すべて自動的に再保険に出す特約再保険によって危険の分散をするのが常態になっている。元受保険者がもっている出再保険特約は、実質的に元受能力の非常に大きな部分を形成していることになる。なお、生命保険では損害保険に比べて1件当りの保険金額が巨額に上ることが少ないため、再保険の利用度も損害保険に比べて一般的に少ない。

[金子卓治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「再保険」の意味・わかりやすい解説

再保険【さいほけん】

保険者が契約者から引き受けた保険責任の一部または全部を他の保険者に肩代りさせることを目的とする保険。保険者はこれによって自己の責任を分散し,危険の平均化を図ることができる。生命保険でも一部でみられるが,一般的には損害保険特有の制度であり,国際的にも行われる。英国のロイズが再保険引受機関の世界最大手として著名である。
→関連項目協栄生命保険[株]航空保険地震保険保険契約者保護機構

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「再保険」の意味・わかりやすい解説

再保険
さいほけん
reinsurance: reassurance

保険者 (保険会社) が引受けた保険契約上の責任によってこうむる損害の全部または一部を,他の保険者に填補させることを目的とする保険。第1の保険を元受保険または原保険という。つまり再保険は元受保険によって保険会社が負担する保険金支払責任の一部または全部を引受ける,いわば保険の保険であり,元受保険があってはじめて成立する。また元受保険と再保険は法的には別個独立のものである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

保険基礎用語集 「再保険」の解説

再保険

保険会社が自ら負担してもよいと考える額を超える契約を引受けた場合、または一回の大災害によって多数の契約に損害が発生し保険金支払が高額化する可能性があると判断した場合などに、危険の平均化と危険の分散を図ることを目的として自己が引受けた保険責任の全部、または一部を他の保険会社に転嫁する保険契約のことを指します。

出典 みんなの生命保険アドバイザー保険基礎用語集について 情報

損害保険用語集 「再保険」の解説

再保険

保険会社が自社で引受けたリスクの一部または全部を他の保険会社に引き受けてもらうことをいいます。

出典 自動車保険・医療保険のソニー損保損害保険用語集について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android