円筒埴輪(読み)えんとうはにわ

精選版 日本国語大辞典 「円筒埴輪」の意味・読み・例文・類語

えんとう‐はにわ ヱントウ‥【円筒埴輪】

〘名〙 円筒状を呈し、外面に数本の凸帯をめぐらした土管状の埴輪古墳封土上に列状に多数並べて用いた。円筒の上部漏斗状にひろげたものを朝顔形円筒埴輪とよぶ。

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デジタル大辞泉 「円筒埴輪」の意味・読み・例文・類語

えんとう‐はにわ〔ヱントウ‐〕【円筒×埴輪】

土管に似た円筒形で、外側に数本の突起した帯をめぐらせた埴輪。高さ60~100センチ。墳丘上に垣根のように同心円状にめぐらせた。

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改訂新版 世界大百科事典 「円筒埴輪」の意味・わかりやすい解説

円筒埴輪 (えんとうはにわ)

埴輪の一種。普通円筒ないし円筒形埴輪と呼ぶ筒形品と,朝顔形円筒埴輪との総称。朝顔形円筒埴輪は,筒形の上部がいったんくびれて,斜上方に大きく開く。円筒埴輪には,底径15cm,高さ40cmほどの小型品から,底径80cm,高さ2m余の大型品まであるが,底径15~35cmのものが多い。筒形部に2~7条のたが状突帯をめぐらせ,突帯間には1段おきに孔をうがつ。孔形として方形,三角形,逆三角形,円形があり,まれに巴形,L字形などがある。突帯間の孔数は,ふつう2~4個を数える。2孔の場合は,相対する位置に配し,上段と下段とは孔向をちがえることが多い。円筒埴輪は形象埴輪とともに墳丘に樹立される。その風習の確立は古墳時代の開始にやや遅れ,その廃絶は古墳時代の終焉に先行する。古墳に伴う器物のなかでは存続期間の長いもののひとつである。その間には形態や技法の変遷があり,その変遷にもとづいて,円筒埴輪を5時期に編年している。また円筒埴輪には地域ごとの相違する特色があり,その解明も進んでいる。いっぽう,円筒埴輪の起源については長い学史がある。1888年(明治21)坪井正五郎がはじめてこの問題をとりあげて,古墳の土留め用の柴垣を模倣したものであると説いた。そこで,坪井の柴垣模倣説の当否をめぐって,明治20~30年代に論争がおこった。しかし,墳丘に関する基礎知識が当時きわめて乏しかったために,事実の誤認などがあり,結局この著名な論争は落着をみずに終わった。起源問題がふたたび学界の注目を集めるのは,1967年以降である。これは,岡山県地方における弥生時代のある種の器台形土器に円筒埴輪の祖形を求める,近藤義郎・春成秀爾の共著論文の公表を契機とする。なお,円筒埴輪の特殊な用途として,棺に転用される場合がある。この転用棺をとくに埴輪円筒棺と呼ぶことがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「円筒埴輪」の意味・わかりやすい解説

円筒埴輪
えんとうはにわ

朝顔形円筒埴輪と普通円筒埴輪との総称。前者は墓前に供える壺(つぼ)とそれをのせる器台とが畿内(きない)で結合、形式化したもので、後者は器台が別個に変容したもの。後者の源流は岡山県地方の弥生(やよい)時代後期の墳墓で特殊化した土器にある。

[橋本博文]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「円筒埴輪」の意味・わかりやすい解説

円筒埴輪
えんとうはにわ

円筒形をなし,外面に数本の凸帯のある普通にみられる赤褐色または淡褐色の埴輪。口縁部が外に開いたいわゆる朝顔形と呼ばれるものもある。通常凸帯の間に円形の穴がみられる。古墳では墳丘の裾などに1重から3重ぐらいに列をなして置かれ,表飾か垣根のような役割をしたとも考えられる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「円筒埴輪」の解説

円筒埴輪
えんとうはにわ

埴輪の一種
土管状の埴輪で,古墳の墳頂部や墳丘を取り巻き,うめこまれた。

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世界大百科事典(旧版)内の円筒埴輪の言及

【五色塚古墳】より

…墳丘の排水面では,葺石の直下に砂質土を敷き,また下段の両くびれ部には礫(れき)をつめた施設があった。埴輪列は墳丘を三重にめぐり,推算2200本を数えるほとんどが鰭付(ひれつき)円筒埴輪である。埋置用の溝を掘って立てならべたことも判明した。…

【埴輪】より

…表飾として古墳に樹立した土製品の一種。円筒埴輪形象埴輪とに大別する。円筒埴輪は筒形を呈し,外面に箍(たが)状の突帯を巡らせ,突帯間に孔をうがつ。…

※「円筒埴輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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