内膳司(読み)ナイゼンシ

デジタル大辞泉 「内膳司」の意味・読み・例文・類語

ないぜん‐し【内膳司】

律令制で、宮内省に属し、天皇食事をつかさどった役所うちのかしわでのつかさ。

うちのかしわで‐の‐つかさ〔うちのかしはで‐〕【内司】

ないぜんし(内膳司)

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精選版 日本国語大辞典 「内膳司」の意味・読み・例文・類語

ないぜん‐し【内膳司】

〘名〙
令制での官司一つ。宮内省に属し、天皇などの食事の調理毒味などをつかさどった。奉膳(ぶぜん)二人典膳六人、令史一人、膳部四〇人などから構成される。長官である奉膳には高橋安曇両氏がなり、二氏以外の長官の場合は内膳(ないぜんのかみ)と称した。内膳。うちのかしわでのつかさ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② 明治三年(一八七〇)三月、宮内省に置かれ、天皇の食事および臣下への賜饌のことをつかさどった役所。同六年七月廃止された。

うちのかしわで‐の‐つかさ うちのかしはで‥【内膳司】

〘名〙 令制における官司の一つ。宮内省に属する。供御(くご)の調理、毒味をした。職員に奉膳(または正)二人、典膳六人、令史一人、膳部四〇人その他がある。ないぜんし。
令義解(718)職員「内膳司 奉膳二人」

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改訂新版 世界大百科事典 「内膳司」の意味・わかりやすい解説

内膳司 (ないぜんし)

令制の宮内省所属の官司。供御(くご)(天皇に供する物)の食事や皇后の食事の調理をつかさどる(供膳は後宮職の膳司がつかさどる)。職員は奉膳(ぶうぜん)(長官)2人,典膳(てんぜん)(判官)6人,令史(主典)1人,膳部(伴部)40人など。飛鳥浄御原令以前から存在した膳職が,大宝令により官人等の食事をつかさどる大膳職(だいぜんしき)と,内膳司に分立した。異例の長官2人制は,令制以前から供御をつかさどった高橋氏(膳(かしわで)氏の一族)と阿曇(あずみ)氏(海人を統率した)が相並んで奉膳に任ぜられるようにはかられたものか。他氏の者が長官となる場合は〈正〉と称した。膳部は調理人,典膳はその監督者で,奉膳は後宮膳司の尚膳とともに御所で供御の毒味をした。主食品は大炊寮から,副食品・調味料は大膳職から支給された。798年(延暦17)および800年には大膳職から雑供戸の網曳,江人や筑摩御厨が移管され,贄殿も併設されて,供御の食料を直接に収納するようになった。また896年(寛平8)には供御の菓菜を栽培している園池司を併合した。官舎は平安宮では内裏の西北に存在した。平城宮では第1次内裏,第2次内裏の北方に存在したらしい。官司名の和訓は《和名抄》に〈うちのかしはてのつかさ〉とある。なお《延喜式》には園圃での菓菜の栽培の方法などが記されていて,当時の農業生産の重要な資料となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「内膳司」の意味・わかりやすい解説

内膳司
ないぜんし

令制下、宮内省(くないしょう)の管轄で天皇の食膳の調理を担当した役所。正六位(しょうろくい)の奉膳(ぶぜん)(長官)2人が毒味を担当。調理責任者たる典膳(てんぜん)6人、令史(さかん)1人、調理をする膳部(かしわで)40人、使部(つかい)10人、直丁(じきちょう)1人、駈使丁(くしちょう)20人が所属した。高橋・安曇(あずみ)両氏以外が長官のときは奉膳ではなく、内膳正(ないぜんのかみ)と称した。奈良時代の内膳司の位置は、平城宮跡の出土木簡の記載内容と「内裏盛所(だいりもりどころ)」の墨書土器から、内裏地区の北側と推定されている。

[岩本次郎]

『奈良国立文化財研究所編・刊『平城宮発掘調査報告Ⅶ』(1976)』

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世界大百科事典(旧版)内の内膳司の言及

【高橋氏】より

…この点に関連して,高橋氏を膳氏の支流とする説と膳氏の本宗とする説との両説がある。高橋氏は律令制の成立後は,膳氏が大化前代以来天皇の供御に奉仕した実績を背景に内膳司の長官である奉膳(ぶぜん)(あるいは判官の典膳)に任ぜられるのを常としたが,同じく奉膳として奉仕する阿曇(あずみ)氏との間に対立を生じ,とくに神事の際の行列の前後についてしばしば争った。ちなみに内膳司の長官の奉膳の定員が2名と定められているのは高橋,阿曇両氏の伝統的立場を考慮した結果と思われるが,それが両氏の対立の原因ともなった。…

※「内膳司」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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