内耳炎(読み)ないじえん(英語表記)Otitis interna

精選版 日本国語大辞典 「内耳炎」の意味・読み・例文・類語

ないじ‐えん【内耳炎】

〘名〙 内耳炎症多く中耳炎から進行して起こる。めまい、はきけ、平衡障害やひどい難聴を主症状とする。

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デジタル大辞泉 「内耳炎」の意味・読み・例文・類語

ないじ‐えん【内耳炎】

内耳の炎症。難聴耳鳴りめまいなどを起こす。迷路炎。

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六訂版 家庭医学大全科 「内耳炎」の解説

内耳炎
ないじえん
Otitis interna
(耳の病気)

どんな病気か

 内耳炎は、主に中耳腔の炎症が、中耳と内耳を隔てている2つの窓(正円窓(せいえんそう)卵円窓(らんえんそう))を通して内耳に及んだものです。しかし、時には真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)によって内耳の骨が破壊され、そこを通して中耳腔の炎症が内耳に及ぶものや、髄膜炎(ずいまくえん)原因で起こるものなど、他の経路から起こるものもあります。

原因は何か

 中耳の炎症を起こす病気が原因になります。たとえば、急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)慢性化膿性中耳炎(まんせいかのうせいちゅうじえん)、あるいは真珠腫性中耳炎がある時に内耳炎になりやすくなります。中耳の炎症が内耳に波及する時は、急激に波及することもあれば、徐々に波及していくこともあります。また、髄膜炎になった時に炎症が内耳に波及することもあります。

 しかし、中耳に炎症があったり、髄膜炎になったりしたからといって、すべての人が内耳炎になるわけではありません。

症状の現れ方

 内耳への炎症の及び方が急で、しかもその程度が強い場合には、激しい回転性のめまい吐き気嘔吐に加えてひどい難聴耳鳴りが起こります。

 内耳には、体のバランスをとるために不可欠な三半規管(さんはんきかん)などの前庭器官(ぜんていきかん)と、音の感覚器官である蝸牛(かぎゅう)があります。これら内耳の機能が、強い炎症で障害を受けて急激に低下するため、これらの症状が起こるのです。

 内耳への炎症の及び方が徐々に起こる場合には(慢性中耳炎に多い)、耳鳴りが起こったり、難聴が少しずつ進んだり、あるいは軽いめまいやふらふら感が起こるようになります。

検査と診断

 難聴がある場合には聴力検査を、めまいがある場合には平衡機能検査を行います。平衡機能検査では自発(じはつ)眼振(がんしん)(コラム)が認められることが多く、また、温度眼振反応が低下したり、瘻孔(ろうこう)症状(コラム)があったりすることもあります。耳のCTMRIによる画像診断も有効です。

治療の方法

 原因になっている中耳の炎症や髄膜炎と、それによって起きた内耳の炎症を治さなくてはなりません。急性の中耳の炎症や髄膜炎には抗生剤が使われますが、同時に内耳の機能低下にはビタミン剤や副腎皮質ステロイド薬などが併用されます。

 慢性中耳炎がある場合には抗生剤も使われますが、慢性感染の原因である中耳炎を手術的に治す必要が出てきます(鼓室(こしつ)形成術)。

 これらの治療によって中耳の炎症が治っても、しばしば内耳の機能障害(主に難聴)が残ることがあります。

病気に気づいたらどうする

 急性中耳炎では耳が痛くなります。それに引き続いてめまいや強い難聴が起こったら、すぐに専門医を受診してください。

 また、慢性中耳炎がある場合には長期にわたって放置せず、内耳に影響が出ないうちに専門医を受診してください。

工田 昌矢

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「内耳炎」の意味・わかりやすい解説

内耳炎
ないじえん
labyrinthitis

迷路炎ともいう。内耳の炎症。感染経路は中耳腔炎症の波及,髄膜炎からの進展,血行性感染などがある。外傷,化膿性感染,中毒,梅毒,白血病などに起因し,耳鳴,難聴のほかにめまいや平衡障害を伴う。中耳炎から波及した場合は,その根治手術を行うほか,特に抗生物質の大量投与を行う。

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世界大百科事典(旧版)内の内耳炎の言及

【内耳】より

…感覚細胞の変化による難聴には有効な治療法がない。中耳炎から内耳に炎症が及ぶと(内耳炎),難聴のほかにめまいが起こるが,これは平衡装置が影響されるためである。メニエール病も難聴のほか内耳性めまいを起こす代表的な病気である。…

※「内耳炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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