典(漢字)

普及版 字通 「典(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] テン
[字訓] ふみ・のっとる・つかさどる

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
册(冊)(さつ)+(き)。机上に書冊をおく形。〔説文〕五上に「五の書なり。册の上に在るに從ふ。之れを閣するなり」という。尊閣重に擱(お)く意。また「に、典は大册なり」という通人説を加えている。〔左伝、昭十二年〕に「三・五典・索・九丘」という古籍の名がみえ、また〔周礼、春官、外史〕に「三皇五の書を掌る」とあって、古帝王の書があったという。金文の〔陳侯因敦(ちんこういんしたい)〕に「永く典と爲せ」、〔叔夷(しゆくいはく)〕に「其の先び其の高に典(のっと)る」とみえ、先蹤とすべきものがあったのであろう。〔書、周書〕の〔五誥〕や〔詩〕の〔雅・頌〕の諸のうちに、儀礼典範とみられるものがある。典当(担保)のような用例も、金文の〔(ほうせいき)〕に「用(もっ)て格伯の田を典す」とあって、その文は抵当権の設定を証するためのものであったと思われる。

[訓義]
1. ふみ、古代のふみ、尊ぶべきふみ。
2. のり、のりとすべきふみ、のっとる。
3. つね、みち、おしえ。
4. ただしい、ととのう。
5. つかさどる、規範をつかさどる。
6. 質入れ、担保、抵当。

[古辞書の訓]
名義抄〕典 ノリ・ツカサ・ヨシ・ツネ・ヲギノル・ツカサドル・カフ 〔立〕典 ツネ・ツバビラカ・ツカサ・マサ・ツカサドル・ヒサシ・クハシ・トル・ヲギノル・ノリ

[声系]
〔説文〕に典声として腆・など五字を収める。腆(てん)は〔説文〕四下に「膳を設くること腆腆として多きなり」と腆厚の意とする。〔書、酒誥〕に「自ら洗腆す」とあるのも設膳の意。〔左伝〕に、諸侯自らいうとき「不腆(ふてん)なる邑」(僖三十三年)、「不腆なる先君の敝」(文十二年)のように、「不腆」を謙称として用いることが多い。

[語系]
典tyen、dyen、腆thyenは声義近く、典は儀礼の重要な文献を机上におく形、酒食をおくことをいい、腆は設薦のことをいう。

[熟語]
典案・典委典彝典鬻典謁・典奥・典価・典雅典戒・典幹典拠・典教・典業・典訓・典刑・典型・典経・典契・典芸・典憲・典故・典護典誥・典獄・典妻・典策・典冊・典式・典実・典主典娶・典書・典商・典章・典掌・典常・典職・典身・典制・典税・典籍・典銭・典則・典知典秩・典貼・典定・典程・典売・典範・典物典墳・典典舗・典牧・典没・典要・典律・典領・典礼・典麗・典例
[下接語]
彝典・栄典・恩典・外典・寛典・儀典・旧典・教典・訓典・刑典・経典・慶典・憲典・原典・古典・故典・五典・香典・鴻典・国典・祭典・司典・祀典・字典・事典・辞典・質典・釈典・主典・祝典・出典・掌典・常典・政典・盛典・聖典・先典・綜典・贈典・大典・通典・帝典・特典・内典・不典・仏典・墳典・宝典・法典・明典・礼典・麗典

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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