共鳴エネルギー(読み)キョウメイエネルギー

化学辞典 第2版 「共鳴エネルギー」の解説

共鳴エネルギー
キョウメイエネルギー
resonance energy

共役二重結合を有する分子の極限構造間の共鳴によって安定化されるエネルギー.たとえば,ベンゼンの極限構造のうち,ケクレ構造の一つをC-C,C=C,C-Hの結合エネルギーの和として計算し,実際のベンゼン分子の実験によって求められるエネルギーと比較すれば,155 kJ mol-1 だけベンゼン分子のほうが安定になっている.この安定化のエネルギーは,二つのケクレ構造の間の共鳴によるものと考え,共鳴エネルギーという.原子価結合(VB)法によれば,ケクレ構造の全π電子状態を表す波動関数ΨaΨb,およびデュア構造に対する波動関数を用いて計算される最小のエネルギーを E 0 とすれば,これと Ψa または Ψb のエネルギーEとの差

REE 0
が共鳴エネルギーである.この量は分子の安定性を表し,芳香族性に関係がある.なお,共鳴エネルギーはπ電子の非局在にもとづく安定化のエネルギーでもあり,この立場から分子軌道(MO)法によっても計算できる.[別用語参照]非局在化エネルギー

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「共鳴エネルギー」の解説

共鳴エネルギー

 ブタジエンやベンゼンのような化合物では,仮定された二重結合の結合エネルギーより多くの結合エネルギーをもっていると考えると化学的な現象が説明できる.この安定化を表すエネルギー量.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の共鳴エネルギーの言及

【共鳴】より

…すなわち2種のケクレ構造の間に共鳴を考えると,EE1だけ安定になるわけで,もっとも安定な状態にあるはずの実際の分子により近づいたことになる。このエネルギー差EE1のことを共鳴エネルギーと呼ぶ。ケクレ構造を3個のC-C結合,3個のC=C結合および6個のC-H結合に分けて,それぞれの結合エネルギーの和を計算すると約5344kJ・mol-1になる。…

※「共鳴エネルギー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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