六波羅蜜(読み)ろくはらみつ

精選版 日本国語大辞典 「六波羅蜜」の意味・読み・例文・類語

ろく‐はらみつ【六波羅蜜】

〘名〙 (「波羅蜜」はpāramitā の音訳。度・到彼岸などと訳す) 仏語。大乗菩薩六種の実践修行布施持戒忍辱(にんにく)精進禅定智慧の六種で、これによって涅槃境界に至ることができるとされる。六度。ろっぱらみつ。
往生要集(984‐985)大文四「時諸仏胸。出百千光、一々光説六波羅蜜
※栄花(1028‐92頃)玉のうてな「六波羅蜜の身心相に住せる所」 〔法華経序品

ろっ‐ぱらみつ ロク‥【六波羅蜜】

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デジタル大辞泉 「六波羅蜜」の意味・読み・例文・類語

ろく‐はらみつ【六波羅蜜】

《「ろっぱらみつ」とも》大乗仏教における六種の修行。菩薩ぼさつ涅槃ねはんに至るための六つ徳目布施ふせ持戒忍辱にんにく精進しょうじん禅定ぜんじょう智慧。六度。

ろっ‐ぱらみつ〔ロク‐〕【六波羅蜜】

ろくはらみつ(六波羅蜜)

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改訂新版 世界大百科事典 「六波羅蜜」の意味・わかりやすい解説

六波羅蜜 (ろくはらみつ)

〈ろっぱらみつ〉ともいう。波羅蜜はサンスクリットのpāramitāを音写した語で,波羅蜜多ともされる。〈完成した,到達した〉を意味し,仏教経典では古くは〈度(ど)〉,またのちには〈到彼岸(とうひがん)〉などとも訳されている。この度や到は〈渡る,到る〉の意味で,迷いのこちら側から,悟りのむこう側へ渡った,到着したことを表している。大乗仏教の最も重要な修行方法を六種とし,それらの完成した,完全なあり方を波羅蜜と名づけたのである。その六種とは,布施(ふせ)(与えること),持戒(じかい)(戒律を守ること),忍辱(にんにく)(耐え忍ぶこと),精進(しようじん)(ひたすら努力すること),禅定(ぜんじよう)(心を集中・安定させること),智慧(ちえ)(とらわれなく判断すること)である。これらが単にみずからのための修行であるだけではなく,他のすべての人々のためのものとなってはじめて波羅蜜といいうるのである。また,智慧は前の五つの根本となるもので,六波羅蜜は智慧波羅蜜を中心としている。智慧をさらに方便ほうべん)(手段),願(がん)(自発的),力(りき)(能力),智の四つに分かち,合計して十波羅蜜とすることもある。
般若(はんにゃ)
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百科事典マイペディア 「六波羅蜜」の意味・わかりやすい解説

六波羅蜜【ろくはらみつ】

大乗仏教で説く悟りの彼岸(ひがん)に至るための六つの修行徳目。六度とも。布施(ふせ)(完全な恵み,施し),持戒(戒律を守り,自己反省する),忍辱(にんにく)(完全な忍耐),精進(しょうじん)(努力の実践),禅定(ぜんじょう)(心作用の完全な統一),智慧(ちえ)(真実の智慧を開現し,命そのものを把握する)の六つ。智慧は他の五徳目の根拠となる。
→関連項目檀那菩薩

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六波羅蜜」の意味・わかりやすい解説

六波羅蜜
ろくはらみつ

大乗仏教の求道者が実践すべき6種の完全な徳目のこと。波羅蜜とはサンスクリット語のパーラミター pāramitāの音写。6種とは,(1) 施しという完全な徳 (布施波羅蜜) ,(2) 戒律を守るという完全な徳 (持戒波羅蜜) ,(3) 忍耐という完全な徳 (忍辱波羅蜜) ,(4) 努力を行うという完全な徳 (精進波羅蜜) ,(5) 精神統一という完全な徳 (禅定波羅蜜) ,(6) 仏教の究極目的である悟りの智慧という完全な徳 (般若波羅蜜) である。これらのなかで最後のものは,前の5者のよりどころとなるものである。

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世界大百科事典(旧版)内の六波羅蜜の言及

【般若経】より

…ただし単一の経典ではなく,諸種の般若経典を総称したもの。何ものにもとらわれない〈空観(くうがん)〉の立場に立ち,またその境地に至るための菩薩の〈六波羅蜜(ろくはらみつ)〉の実践,とくに〈般若波羅蜜〉の体得が強調される。そこから従来の部派仏教に対しては厳しい批判的な態度をとる。…

【彼岸】より

…同書には,太陽が真東から出て真西に没する春分・秋分にこそ日想観を行い,極楽往生を願うべきであることがのべられている。彼岸会は盂蘭盆(うらぼん)会とともにはやくより仏教行事となっており,その典拠なり意味づけについて今日ひろくなされている説明は,六波羅蜜の徳目(布施・持戒・忍辱(にんにく)・禅定・精進(しようじん)・智慧)を前後3日のそれぞれにあて,中日は先祖に感謝する日とし,宗教的理想に向かっての実践週間が〈お彼岸〉だとするものである。巧みな解釈ではあるが,これでは彼岸が日本独自の国民的行事になったことの説明にはならない。…

【仏教】より

…定と慧を合わせて止観(しかん)ということもある。大乗では実践を六波羅蜜(ろくはらみつ)にまとめる。波羅蜜とは完成されたあり方,もしくは理想世界(彼岸)にわたることと解釈される。…

※「六波羅蜜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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