六法(読み)ろっぽう

精選版 日本国語大辞典 「六法」の意味・読み・例文・類語

ろっ‐ぽう【六法】

〘名〙
[一] (ロクハフ)
① 中国南斉の画家謝赫(しゃかく)が「古画品録」で述べた絵画の制作・鑑賞批評の六つの規準気韻生動(生命感の表現)・骨法用筆(力強い筆法)・応物象形(写実的に描くこと)・随類賦彩(対象に従って彩色すること)・経営位置(構図)・伝模移写(古画の忠実な模写)をいう。近代まで中国の画論の中心をなした。
② 六つの基本的な法典。ふつう、憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法をいう。
⑤ 花札のオイチョカブで、手札の合計点数が六のこと。
※競馬(1946)〈織田作之助〉「オイチョカブ賭博の、一(インケツ)、二(ニゾ)、三(サンタ)、四(シスン)、五(ゴケ)、六(ロッポー)、七(ナキネ)、八(オイチョ)、九(カブ)の内」
[二] (ロクホフ) 仏語。比丘尼になるための二年間の修行期間中に守らなければならない、不妊・不盗・不殺・不妄語・不飲酒・不非時食の六か条。〔八宗綱要(1268)〕

りく‐ほう ‥ハフ【六法】

〘名〙 ⇒ろっぽう(六法)(一)①

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デジタル大辞泉 「六法」の意味・読み・例文・類語

ろっ‐ぽう〔ロクパフ〕【六法】

現行成文法中の、憲法刑法民法商法刑事訴訟法民事訴訟法の六大法典。基本六法
六法全書」の略。
りくほう(六法)
六方ろっぽう34

りく‐ほう〔‐ハフ〕【六法】

東洋画の制作・鑑賞のための六つの規範南斉謝赫しゃかくが「古画品録」の序で挙げた、気韻生動骨法用筆・応物象形・随類賦彩・経営位置・伝模移写をいう。ろっぽう。

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改訂新版 世界大百科事典 「六法」の意味・わかりやすい解説

六法 (ろっぽう)
liù fǎ

中国絵画における規範を表す用語。六朝斉の画家謝赫(しやかく)の《古画品録》(《古今画品》)に見える。画品とは画の優劣の品等,すなわちランクづけすることで,六法は品等の基準となる概念であり,法は原理または要素,あるいはその両者を含んだ意味をもつ。品等は漢の人物評論に始まり,六朝になって詩と書,さらに画の世界に及んだ。品等は貴族文化の典型(理想像)志向に基づくもので,精神と感覚(内容と形式)の美しい調和を求めている。六法とは気韻生動(写実的に描かれた形象(主として人物像)に生き生きとした生命感があふれ,その内面がありありと表れる),骨法用筆(筆とは線描,画の骨格をなす線),応物象形(写実的表現,形似ともいう),随類賦彩(彩色,ただし固有色),経営位置(構図),伝移模写(古画を模写すること,記録伝達の重要手段)で,明確な輪郭線と固有色とから成る人物画についての原理,要素である。中世末から近世にかけて線描が多様化し,ついには筆に対して墨を重視する水墨画が成立すると六法の解釈も大きく変化した。唐の張彦遠(ちようげんえん)は気韻生動を画家の意が線描にあらわれることとし,伝移模写はとるにたらぬといい,宋の郭若虚は,気韻生動を画家生得の人柄が画にあらわれることとした。水墨画は線と色を相対化し,そのテーマも山水を主としたから,本質的に六法とは合わぬものであり,唐末五代の荆浩(けいこう)はその水墨山水画編《筆法記》の中で六法にかわる六要を唱える。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六法」の意味・わかりやすい解説

六法
ろっぽう
Six Acts

六議会制定法とも呼ばれる。 1819年イギリスで制定された急進派抑圧のための6つの法律の総称。ナポレオン戦争以後,「ピータールーの虐殺」事件が示すように議会改革派の動きが高まり,これに対処するためにトーリー党リバプール (伯)内閣のカスルレー (子)が議会に法案を提出した。言論・出版の自由の制限,大衆政治集会の制限,武器,旗の使用禁止,新聞税の適用範囲の拡大などの規定が含まれた。

六法
ろっぽう
liu-fa

中国,六朝時代に謝赫が説いた絵画制作,技法修得の基本理念と,鑑賞に必要な6つの規範。「りくほう」ともいう。気韻生動,骨法用筆,応物象形,随類賦彩,経営位置,伝模移写の事項があり,清代まで続いた。しかし唐代に入り,張彦遠が『歴代名画記』のなかで六法のうち気韻生動を重視してから,これが東洋画の絵画観の根源と考えられるようになった。

六法
りくほう

六法」のページをご覧ください。

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とっさの日本語便利帳 「六法」の解説

六法

▽憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法

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世界大百科事典(旧版)内の六法の言及

【画論】より

…この方法は鍾嶸(しようこう)《詩品》などの詩論,虞龢(ぐわ)《論書表》などの書論にもみられ,当時の貴族の間で盛行した人物批評の影響を受けている。《古画品録》はまた絵画の基本原理として六法(気韻生動・骨法用筆・応物象形・随類賦彩・経営位置・伝移模写)を提起し,特に第一の気韻生動は,後世画論のつねに中心的テーマであった。 唐代は,初期に李嗣真《続画品録》,張懐瓘《画断》などが著され,六朝に引き続いて優劣を問題とした《画断》は顧愷之を頂点に,神・妙・能の三品に分けたが,後期の朱景玄《唐朝名画録》に至ると,時流を反映し,常法にこだわらない逸品をこれに加えた。…

【謝赫】より

…論画の書物で現存最古とされる《古画品録》の著者で,27人の画家を6品に分類してその優劣を批評した。なかでもその序にみえる〈六法〉は,謝赫の創唱ではないが,最古の言及として名高い。【古原 宏伸】。…

※「六法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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