六地蔵(狂言)(読み)ろくじぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「六地蔵(狂言)」の意味・わかりやすい解説

六地蔵(狂言)
ろくじぞう

狂言曲名雑狂言。新たに建立した御堂(みどう)に安置する六体の地蔵を購入するために上京した田舎(いなか)者、声をかけられたすっぱ(シテ)を仏師と信じ込み、翌日に因幡(いなば)堂で受け取る約束をする。まんまと仏師になりすましたすっぱは、仲間2人を呼び出し、3人で3体ずつ二度に分けて地蔵の姿に取り繕い田舎者をだます算段をする。当日、因幡堂の後ろ堂と脇(わき)堂の二か所を忙しく行き交いながら、田舎者に地蔵を見せるうちにだんだん立ち姿が崩れ、ついに化けの皮がはがれ、追い込まれる。和泉(いずみ)流ではすっぱの仲間3人が地蔵に化け、シテは仏師の姿で終始する。類曲に『仏師』がある。地蔵のおひろめ場所を本舞台と橋懸(がか)りに設定し、その間をだまそうとするすっぱと確かめようとする田舎者が走り回り、能舞台の特性を縦横に発揮する。

[油谷光雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例