六分儀
ろくぶんぎ
sextant
物標(目標となる物)または天体の高度や角度を測定する計器。天体の高度を正確に測定すれば大洋中の船の位置が決定できるので、古来からアストロラーベ、コードラント、クロススタッフ、バックスタッフなど、種々の高度測定器具が発明された。現在の六分儀のような円弧状の枠をもつ型式となってからも、弧の大きさによって四分儀、五分儀、六分儀、八分儀など、360度の何分の1の角度まで測定できるかによっていろいろな器具がつくられてきた。六分儀の弧は実角にして120度まで測定できるから、実際には三分儀だが、この形の測角器具をすべて六分儀とよんでいる。
六分儀は、弧の中心を支点として動くインデックスバー、これに取り付けられた動鏡、枠に固定された水平鏡と望遠鏡、弧上に刻まれた角度目盛りによって構成されている。天体の高度を測定するには、まず望遠鏡Tを通して水平鏡の片面から水平線を見る(図)。ついで、動鏡Iに反射して水平鏡Hに映る天体Sの像が水平線と一致するようにインデックスバーを動かす。このときのインデックスバーの回転角∠AOBは、天体高度∠SEO′の2分の1となるから、弧上の目盛りを実角の2倍に目盛っておけば天体の高度が測定できることになる。また、位置のわかっている陸上の二つの物標の角度を、六分儀を水平方向に用いて測定し船位を求める方法も行われている。六分儀の角度測定誤差は0.5分程度である。
[飯島幸人]
『伊関貢・庄司和民著『航海計器学』(1950・海文堂)』▽『飯島幸人・林尚吾著『航海計測』(1986・成山堂書店)』▽『米沢弓雄著『基礎航海計器』(1995・成山堂書店)』▽『田口一夫・田畑雅洋著『海洋計測工学概論』(1997・成山堂書店)』
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六分儀
ろくぶんぎ
sextant
観測者から見た2物体の方向の角度を精密に測定する装置で,据付けを要せず手に持ったまま使用する。分度器の目盛りが 60°あり,円を6つに分けた形の枠組みをもつところからこの名がある。その円の中心に回転する鏡があり,そこで反射した星の像と直接前方の水平線とを望遠鏡の視野内で重ね,天体の高度を 120°まで,10″内の誤差で読取ることができる。天測による遠洋航海で,船の緯度や経度を定めるのに,クロノメータとともに欠かせない器械であった。航空機では水平線が利用できないので,水準器をつけ,その気泡が視野に現れるようにしたものが用いられる。鏡の代りにプリズムを用いたものでは,4分の1円周を用いて 180°近くまではかることができる。
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六分儀【ろくぶんぎ】
二つの天体の夾角(きょうかく)または天体の高度を測る光学器械。円を6分した目盛環に二つの反射鏡と望遠鏡を取り付けたもので,一つの天体からの光は反射鏡を経て,他は直接望遠鏡の同一視野に入れて一致させたとき,指標の移動の角度で夾角を知る。
→関連項目航海計器
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ろくぶん‐ぎ【六分儀】
〘名〙 全円の六分の一の円弧形のわくを持つ測量器機。目盛盤・望遠鏡・鏡・指標などで構成され、任意の二点間の角度を測る。ふつう、船の位置を知るために天体の高度を測るときに用いる。六分円器。
セクスタント。〔工学字彙(1886)〕
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デジタル大辞泉
「六分儀」の意味・読み・例文・類語
ろくぶん‐ぎ【六分儀】
天体の高度を測るための携帯用の器械。望遠鏡、2枚の反射鏡、円周の6分の1(60度)の目盛りをつけた弧などからなる。船の位置を求める天文航法に使用。セクスタント。
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ろくぶんぎ【六分儀 sextant】
手持ちで操作する小型の天文観測器具。通常は経緯度決定のため天体の高度測定に使われる。主要部は望遠鏡,固定鏡,腕とともに動く指示鏡,円弧状の目盛など。全体の形が円の1/6なので六分儀の名がある。鏡で反射した天体の像と水平線を望遠鏡の視野内で一致させたときの腕の位置で天体の高度がわかる。使用法が簡単で得られる精度がよいため,古くから航海者に愛用されている。【長沢 工】
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