公益信託(読み)こうえきしんたく

精選版 日本国語大辞典 「公益信託」の意味・読み・例文・類語

こうえき‐しんたく【公益信託】

〘名〙 学術祭祀(さいし)慈善宗教技芸などの公益目的とする信託。その引受けについては主務官庁許可を必要とする。
信託法(1922)六七条「公益信託は主務官庁の監督に属す」

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デジタル大辞泉 「公益信託」の意味・読み・例文・類語

こうえき‐しんたく【公益信託】

祭祀さいし・宗教・慈善・学術・技芸など公益を目的として設定される信託。

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改訂新版 世界大百科事典 「公益信託」の意味・わかりやすい解説

公益信託 (こうえきしんたく)

祭祀,宗教,慈善,学術,技芸その他公益を目的とする信託(信託法66条)で,個人または法人が社会公共のために財産を信託し,受託者(信託銀行など)に公益活動を行わせる制度である。民間公益事業には,財団法人や社会福祉法人など公益法人による事業と公益信託による事業とがあるが,英米では公益信託charitable trust(charity)がさかんに利用されている。日本では,1922年に信託法による公益信託の制度が設けられながら久しく実用化が見送られてきた。しかし公益法人について,休眠法人の増加や経理乱脈などの問題が生じたため,総理府後援で公益信託の育成が進められ,77年から82年の間に80件を超える公益信託が発足した。これまでの公益信託は,奨学金の供与や研究助成など資金の給付を目的とするものが多く,社会福祉や救貧を目的とするものが少ない。これは,公益信託が財産給付型の公益活動に適していることもあるが,社会福祉に関する厚生省の認可基準がきびしいことにも由来している。また拠出金が税法上損金扱いにならないため,財産の出捐(しゆつえん)者は事業法人が少なく個人が多い。公的な公益事業が財政事情の制約下にあるため民間の相互連帯的な公益活動の進展が望まれるだけに,税制上の助成と認可基準の緩和が必要であろう。イギリスナショナル・トラストは自然環境運動のための公益信託だといわれている。
信託
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公益信託」の意味・わかりやすい解説

公益信託
こうえきしんたく
public trust

金銭,有価証券,不動産など個人や法人の財産を福祉,教育などの公益的事業に振り向ける信託をいう。従来は財団法人がこうした事業の中心となっていたため,アメリカやイギリスと比較しても日本では未発達であったが,1977年に第1号が発足した後,徐々に普及してきている。公益信託の目的としては,奨学金,研究助成などが全体の6割を占め,そのほかにも障害者・老人福祉,国際交流,青少年の健全育成などが主なものであったが,最近ではこれを住民の創意工夫による自主的な町づくり,地域の自然環境保全,郷土文化の振興にも活用しようとする「町づくり公益信託」なども普及し始めている。

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世界大百科事典(旧版)内の公益信託の言及

【信託】より

…日本では1905年の担保付社債信託法によって信託思想が導入され,22年の信託法および信託業法によって一般的な信託制度の法制化が実現した。
[信託の種類]
 信託には大別すると私益信託と公益信託の2種がある。公益信託は宗教,慈善,学術など公益を目的とする信託であり,その設定には主務官庁の許可が必要である(信託法68条)。…

※「公益信託」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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