公事(読み)おおやけごと

精選版 日本国語大辞典 「公事」の意味・読み・例文・類語

おおやけ‐ごと おほやけ‥【公事】

〘名〙
① 朝廷、国家の政務。公務。おおやけわざ。⇔私事(わたくしごと)
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「おほやけごとも知り給はず、ただ斎(いもひ)精進(さうじ)をし給て」
② 宮中で行なわれる儀式。節会(せちえ)、競技、祭などの行事。公事(くじ)。おおやけわざ。⇔私事(わたくしごと)
※伊勢物語(10C前)八三「おほやけごとどもありければ、え侍はで、夕暮にかへるとて」
③ 租税、賦役(ぶやく)などの国家から課せられた義務的奉仕。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「一国(ひとくに)をおさむるに、おほやけごと、全(また)くなして」
④ 公的に限度の定まっている形式。通りいっぺんのしきたり。お役所仕事。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「内蔵寮(くらつかさ)穀倉院など、おほやけごとに仕うまつれる、おろそかなる事もぞ」
⑤ 私事ではない、表立ったこと。主君に関する事柄。主人の事。⇔私事(わたくしごと)
※源氏(1001‐14頃)夕顔「手をとらへ給へれば、いと馴れて、疾く、『朝霧の晴れ間も待たぬけしきにて花に心をとめぬとぞ見る』と、おほやけごとにぞ聞えなす」

く‐じ【公事】

〘名〙
① 公務。朝廷の儀式。
※続日本紀‐和銅五年(712)五月乙酉「又国司因公事京者」
※徒然草(1331頃)一九「公事ども繁く、春の急ぎにとり重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや」
② 荘園制で、年貢以外の雑税や夫役(ぶやく)を総称していう。荘園領主のほかに、預所、守護、地頭、下司、公文も賦課した。また、中世中期以後は銭貨で代納されるものが多く、公事銭、公用銭、公事別銭、公事役銭などと称した。公用(くよう)
※御成敗式目(1232)三条「而近年分補代官於郡郷、充課公事於庄保、非国司而妨国務
③ 訴訟およびその審理、裁判をいう。
※今昔(1120頃か)二「賢し人、出て公事(くじ)共定め申して、日暮方に家来たり」

こう‐じ【公事】

〘名〙 (古くは「こうし」とも)
① おおやけの仕事。公務。⇔私事
菅家文草(900頃)四・書懐奉呈諸詩友「公事聞人談説得、野情趁我寂寥来」
※政党評判記(1890)〈利光鶴松〉一「公事を議するの心を以て私事を議す可からず」 〔詩経‐大雅・瞻卬〕
② 公共の事柄。おおやけごと。公儀。
治安警察法(明治三三年)(1900)三条「公事に関する結社又は集会にして政治に関せざるものと雖」

くう‐じ【公事】

〘名〙 「くじ(公事)」の変化した語。
※金刀比羅本保元(1220頃か)上「あはれ節会(せちゑ)・印奏・除目(ぢもく)なんど公事(クウジ)の奉行には似ぬものを」

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デジタル大辞泉 「公事」の意味・読み・例文・類語

おおやけ‐ごと〔おほやけ‐〕【公事】

朝廷の政務・儀式・行事など。公事くじ
「源氏の―知り給ふ筋ならねば」〈紅葉賀
朝廷への奉仕。租税を納め、賦役ぶやくに従うことなど。
「武蔵国を預けとらせて、―もなさせじ」〈更級
公式に定まっているやり方。
「祭のほど、限りある―に添ふこと多く」〈・葵〉

く‐じ【公事】

公務。
朝廷の政務・儀式。
「今日は―ある日なれば、とく参らるらむ」〈大鏡・伊尹〉
中世、年貢以外の雑税夫役ぶやくの総称。
訴訟およびその審理・裁判。
「賢し人、出でて―ども定め申して」〈今昔・二・三三〉

こう‐じ【公事】

政府・官庁などのおおやけの仕事。公務。⇔私事
公共に関する事柄。⇔私事

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改訂新版 世界大百科事典 「公事」の意味・わかりやすい解説

公事 (くじ)

〈くうじ〉とも読む。もともとは朝廷の〈公(おおやけ)のこと〉すなわち政務一般をさす語。のち種々の意味をもつようになる。

(1)平安時代の儀式化した朝廷の行事 節会(せちえ)や除目(じもく)など四季折々に,あるいは期日を定め,あるいは臨時に,年中行事として行われた。朝廷ではその運用について《延喜式》などの式で定めたが,式の編纂が行われなくなってからは,貴族が私的に著した《西宮記》や《北山抄》等の故実書に記された公事の実際が重視された。公事をとりしきったのは,上卿(しようけい)と呼ばれる公卿と弁官,外記,史等の官人であるが,やがて貴族の家柄の固定とともに,公事の知識を継承する家が成立し,その家では代々,日々の公事の実際を日記に書くことが行われた。鎌倉幕府においても,朝廷にならって行事や政務を公事と称し,公事を執行するため公事奉行人を置いている。やがて鎌倉末期以後になると,朝廷では実権の低下に伴って,たくさんの公事を維持できず,衰えてゆくものや形式化するものが多くなった。室町中期に出た一条兼良は,こうした公事の衰えを嘆き,《公事根源》等を記し,公事の復興に努めたが,実権を失った朝廷にはもはやその力はなく,幕府の権力の支えによって公事を維持するのが精いっぱいだった。

(2)荘園公領体制下の雑税の総称 儀式,行事としての公事を遂行する費用は,律令国家においては国庫の支出で賄ったが,その規模と参加する官人の増大には応じきれず,国家は公事を名目とした課役をさまざまな形で賦課するようになった。そのうちで最も一般的にとられた方法は,諸国に費用の負担を求めるものである。これは諸国の受領(ずりよう)の富をあてにしたものであるが,その負担がしだいに増えると,受領は自己負担とせずに,公事の課役を臨時に国内に課して徴収するようになる。これが臨時雑役(りんじぞうやく)であるが,やがてこれも恒常化し,朝廷でも初めから国内からの賦課を認めて公事を課すようになった。これが造内裏役(ぞうだいりやく)や伊勢神宮役夫工米(やくぶくまい)等の勅事(ちよくじ)の公事である。他方,諸国では朝廷の公事だけでなく,国司の役所である国衙を中心に独自の課役としての公事を成立させていった。それは国司の館の警固や官物の京上の警固などの警固役,国内の一宮,国分寺等の社寺の造営や神仏事への奉仕と,課役の範囲はしだいにひろがり,ついには年貢(官物(かんもつ))と並んで国衙の収取体系の基本にすえられるにいたった。また荘園,所領を経済的基盤とする権門寺社の荘園領主も,荘園,所領に対して公事を課すようになった。それは国衙の公事に似て,年貢の運上のための人夫役や権門寺社の館や堂舎の警固役であり,朝廷の公事に似て,権門寺社の年中行事の諸費用の課役であった。そうした権門寺社の公事のなかで,院政時代以後に国政を支配した院の公事は,諸国に課されたが,これは〈院事〉 〈院役〉と呼ばれ,勅事と並んで重視された。鎌倉時代になると,鎌倉幕府は公事の費用を諸国の御家人に課したが,これは関東公事(くうじ)と呼ばれ,大番役とともに重要な課役であった。

 課役としての公事は,警固役,人夫役,御家人役のように,もともとは人を対象に課され,課された人はその能力(器量といった)に応じて務めた。しかし公事の経済的負担の側面の比重が高まると,負担能力は土地(田畠)や家(在家)の数量で評価され,公事は田畠・在家数に基づいて課され,公事を負担する田畠・在家はとくに公事田,公事畠,公事屋等と呼ばれた。こうしてさまざまな公事が荘園,所領や国衙領の田畠・在家に課されるようになり,それらはあわせて〈雑公事〉とか〈万雑公事(まんぞうくじ)〉とかいわれた。雑公事が免除される田畠・在家もあったが,これらは免田,免畠,免在家と呼ばれ,特定の公事を務める人に対して報酬として免除されたものであって,その人はそれらの田畠・在家から雑公事分の得分を得ていた。

(3)中世末~近世の訴訟の別称 室町時代になると課役としての公事は,公事役とか公事物とか呼ばれ,その内容,種類も増えたが,それと並行しながら訴訟を公事と表現する用法が広まった。上から下に課される課役とはまったく逆に,下から上にむけられる訴訟が公事と呼ばれるにいたった背景には,裁判権をもつものこそが公権力たりうるという当時の社会の動向があったとみられる。訴訟としての公事は戦国大名において一般的に用いられ,さらに江戸幕府では公事といえば訴訟をまず意味するようになった。〈公事方〉とは訴訟を取り扱う裁判機関を意味し,《公事方御定書》と呼ばれる訴訟・裁判にかかわる法令や手続の書物も編集された。
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百科事典マイペディア 「公事」の意味・わかりやすい解説

公事【くじ】

〈くうじ〉とも読む。本来は朝廷の政務一般をさす。平安時代には儀式化した朝廷の行事の意であるが,荘園公領制下では年貢以外の雑税や夫役(ぶやく)を総称していう。荘園領主のほかに預所(あずかりどころ)・守護地頭下司(げし)・公文(くもん)などによる賦課があり,公用(くよう)ともよぶ。銭貨による代納が多くみられ,公事銭・公事役銭・公用銭などと称した。中世末から近世においては訴訟およびその審理・裁判をいう。→公事方御定書
→関連項目大浦荘門役関東御領検注江家次第地下請下地下地中分信太荘荘園(日本)荘家の一揆土一揆名寄帳人吉荘名主名・名田免田和佐荘

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公事」の意味・わかりやすい解説

公事
くじ

中世、官物(かんもつ)、年貢(ねんぐ)と並ぶ主要な税目。本来「おおやけごと」と読まれたように、朝廷における政務や儀式・行事を意味し、それらに必要な経費は国庫でまかなうのがたてまえであった。平安時代後期になると財政難から「おおやけごと」の経費は臨時雑役(ぞうやく)として別途に徴収されるようになる。こうして公的な事業や職務の遂行に必要な物資を徴収する名目として公事が一般化する。公事には、内裏(だいり)造営、大嘗会(だいじょうえ)、伊勢(いせ)遷宮、官寺修造など勅命で全国的に課せられるもののほか、一宮(いちのみや)や国分寺の修理、河川改修など国衙(こくが)が一国内に課すものもあり、官人の往来に際しては送迎・接待も公事とされた。また中央官衙、貴族、武家、寺社も、それぞれ公的職務に携わっているとする立場から自己の所領・荘園(しょうえん)に対して公事を課し、家産経済を運営している。あらかじめ予想される1年間の儀式や行事の経費を恒例公事とよんで、徴収品目、量、納入期日を定め、計画的に賦課している。さらに必要に応じて臨時公事と称して恣意(しい)的な徴収もしばしば強行されている。官人や荘官・地頭(じとう)らも現地に臨んで公事を徴収したが、旅費、生活費から接待饗応(きょうおう)にまで及び、収取の拡大・強化が公事を名目に行われていることが注目される。公事の名目がしきりに用いられ、徴収品目もあらゆる物資から夫役(ぶやく)まで含まれることでしばしば万雑(まんぞう)公事などともよばれた。中世末期、いやでも避けがたいことといった意味で天然痘(てんねんとう)も「くじ」とよばれていたらしい。中世を通じて公事を名目とする徴収が繰り返されたのは、一方で公事を負担することが「おおやけごと」にかかわることと意識され、公民とみなされるための象徴的な意味合いが含まれていたものと考えられる。

 近世、公事は「おおやけごと」のなかでも、とくに裁判に用いられた。

[富沢清人]

『網野善彦著『日本中世の民衆像』(岩波新書)』

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普及版 字通 「公事」の読み・字形・画数・意味

【公事】こうじ

公務。〔三国志、蜀、劉巴伝〕自ら歸附して素に非ざるを以て、猜せられんことを懼れ、恭默守靜、いて私無く、事に非ざれば言はず。~誥策命は、皆巴の作るなり。

字通「公」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公事」の意味・わかりやすい解説

公事
くじ

(1) 令制における公務,朝廷の儀式。 (2) 武家社会では訴訟,裁判。 (3) 鎌倉時代以後の荘園制下では雑税を意味する。公事と称したのは,それまでの田租が私 (荘園領主) 収入であったのが,公 (幕府) 収入と変ったことに伴う。荘園の賦課を大別すると,年貢 (所当) と公事に分けることができる。年貢は田租であり,令制の租にあたるのに対し,公事は調,庸,雑徭の系統をひくものである。公事はさらに夫役 (ぶやく) と雑公事 (ざつくじ) に区分できる。夫役には,勤仕の期間によって長日夫役と日役夫役の区別があるが,一般的には荘官の送迎などに従う京上夫,年貢の運搬,護衛などの兵士役,その他大番役,房仕夫,仕丁などがあった。また佃 (つくだ。荘園領主の直営地) の耕作にあてられた。一方,地頭,荘官以下の名主の収取する夫役もあった。彼らは給田のほか幕府や荘園領主から公事免または雑免 (ぞうめん) の地を獲得して,これを荘民の夫役によって経営する方法も講じた。雑公事には,主として地域的な特産物がこれにあてられ,それは 30種にも及んだ。したがって雑公事の種類に応じて賦課方式も異なり,日別公事,月別公事,反別公事などの区別があった。雑公事は元来現物納を原則としたが,次第に代銭納 (→銭納 ) に変り,公事銭,公用銭,公事役銭などと呼ばれた。荘園制の崩壊期には,田租も公事も大名領主の収入となっていった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「公事」の解説

公事
くじ

「くうじ」とも。もとは朝廷の公務・儀式。荘園公領制で租の系譜をひく年貢に対し,庸調(ようちょう)や雑徭(ぞうよう)の系譜をひく課役を公事とよんだ。雑公事(ぞうくじ)と夫役(ぶやく)に大別され,雑公事は山野河海の特産物や手工業品など多種多様なため,万雑公事(まんぞうくじ)ともよぶ。夫役も京上夫・兵士役・陣夫などさまざまであった。公事には賦課する者の側から勅役・院役・国役・寺社役・本家役・守護役・武家役など,賦課される側から御家人役・百姓役・段銭・棟別・人別・牛別・山手・川手・関銭・津料・座銭・節料(せちりょう)・一献料などの呼称がある。収取方法には,日(月)別,段別,名別などがあり,公事地や公事家の指定もあった。近世の公事は訴訟・裁判の意味。

公事
くじ

近世における私人間の紛争(出入物),もしくはその紛争を裁判する手続き(出入筋)のこと。刑事事件とその裁判手続き(吟味物・吟味筋)に対して,おおむね民事事件と民事裁判手続きに該当する語。また訴訟と同義に用いられることもあった。この場合は,奉行所でのはじめての審理を訴訟,2度目の審理以降を公事と称して区別したり,願出を訴訟,訴を公事といって区別したりすることもあった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「公事」の解説

公事
くじ

②中世〜近世の訴訟・審理・裁判
③荘園制下における雑税
①朝廷の公務・儀式をいう。
江戸時代には主として民事訴訟をいう。公事方御定書の名称もこれに由来する。
土地を対象とする年貢に対し,人間を対象として課せられ,公に奉仕する課役を公事といった。関東御公事など。江戸時代には公事は小物成になったものが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の公事の言及

【公事】より

…(1)平安時代の儀式化した朝廷の行事 節会(せちえ)や除目(じもく)など四季折々に,あるいは期日を定め,あるいは臨時に,年中行事として行われた。朝廷ではその運用について《延喜式》などの式で定めたが,式の編纂が行われなくなってからは,貴族が私的に著した《西宮記》や《北山抄》等の故実書に記された公事の実際が重視された。公事をとりしきったのは,上卿(しようけい)と呼ばれる公卿と弁官,外記,史等の官人であるが,やがて貴族の家柄の固定とともに,公事の知識を継承する家が成立し,その家では代々,日々の公事の実際を日記に書くことが行われた。…

【金公事】より

…江戸幕府法における民事訴訟(公事)のうち借金銀,売掛金などおもに利息付または無担保の金銭債権に関する訴訟の総称。本公事(ほんくじ)に対する概念で,金銀出入ともいう。…

【裁判】より

…とくに身分,家格,席順,土地の境界(境相論(さかいそうろん)),用水(水論)等の争いについては強硬にその主張を貫こうとした。裁判所の待合所である腰掛(腰掛茶屋)はおおむね繁忙であり,1774年(安永3)江戸には弁護士に類する公事宿(くじやど)が198軒もあった。もっとも公事宿は訴訟代理権を欠く訴訟補佐人にすぎず,庶民はその策略的技術を嫌って,内心は尊敬していなかった。…

【済口】より

…江戸時代の民事裁判手続(出入筋(でいりすじ))において,和解(内済(ないさい))が成立すること。民事事件(公事(くじ),出入物)では奉行所は終始内済を勧めるのであって,裁判のどの段階においても内済することが可能である。親類,町村役人のほか,寺院や公事宿(くじやど)(訴訟関係者の宿泊する宿屋で,主人・下代は弁護士類似の役割を果たす)などが仲介者(噯人(あつかいにん)・扱人)となるのが通常であった。…

【出入筋】より

…刑事裁判手続たる〈吟味筋(ぎんみすじ)〉に対する概念であるが,可罰的事案が出入筋で裁判されることもある。出入筋の訴訟事件を〈出入物(でいりもの)〉あるいは〈公事(くじ)〉と称し,これに〈本公事(ほんくじ)〉と金銭債権に関する〈金公事(かねくじ)〉の別があって手続を若干異にした。江戸時代には,当事者の人別(にんべつ)地を支配する領主がそれぞれ裁判権を有したが,他領・他支配に関連する訴訟,すなわち〈支配違(しはいちがい)え懸る出入〉や,武家を相手取る場合などは,原則として幕府評定所の管轄となる。…

【番頭】より

…畿内周辺の紀伊,近江,加賀,能登などに多くみられる。荘園領主に対する月次(つきなみ)の公事(くじ)(夫役(ぶやく)や綿,絹,酒などの雑公事(ぞうくじ))を勤めるために,荘園の下地(したじ)は幾つかのに編成されており,その番が公事をかけられる単位となっていた。このため荘園内の番の数は12ヵ月に割り振ることができるよう6の倍数になっているものが多い。…

【夫役】より

…本貫地からの逃亡は,労働力収奪を拒否する律令農民の抵抗の一形態であった。 11世紀から12世紀に,本格的に展開する荘園制社会における農民負担は,年貢と公事(くじ)であり,公事は雑公事(ぞうくじ)と夫役に区別されている。夫役は,領主や荘官の直営地である佃(つくだ)の耕作労働,築堤や池溝の整備,さらに道路の造作などの土木工事,年貢など貢納物の運搬労働,領主の邸宅の清掃労働などに大別することができる。…

※「公事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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