八杉貞利(読み)やすぎさだとし

精選版 日本国語大辞典 「八杉貞利」の意味・読み・例文・類語

やすぎ‐さだとし【八杉貞利】

ロシア語学者。東京出身。東京帝国大学卒業後、ロシアに留学帰国して、東京外国語学校教授となる。昭和三九年(一九六四レニングラード大学から名誉文学博士号を受けた。歌人としての活動もある。主著「岩波ロシヤ語辞典」「詩宗プーシキン」など。明治九~昭和四一年(一八七六‐一九六六

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デジタル大辞泉 「八杉貞利」の意味・読み・例文・類語

やすぎ‐さだとし【八杉貞利】

[1876~1966]ロシア語学者。東京の生まれ。東京外国語学校教授。日本におけるロシア語・ロシア文学研究に多大に貢献した。著「露西亜語学楷梯」「ロシア語辞典」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「八杉貞利」の意味・わかりやすい解説

八杉貞利 (やすぎさだとし)
生没年:1876-1966(明治9-昭和41)

ロシア語学者。東京に生まれた。日本のロシア語学界の先達の一人であり,現在日本でロシア語学の研究にたずさわる者の大部分は,直接・間接にその教えをうけている。東京帝国大学文科大学言語学科卒業後,1901年ロシアに留学して,ボードゥアン・ド・クルトネらについて比較言語学とスラブ語比較文法を修めたが,04年日露戦争が起こったため帰国,その間1903年に東京外国語学校(現在東京外国語大学)教授となり,37年定年退官まで,約30年にわたり同校ロシア語科主任教授の職にあり,そのかたわら東京帝国大学,早稲田大学などの講師をもつとめた。

 代表的著書は《岩波版露和辞典》(1935)。語彙ごい)および用例の豊富さ,訳語の正確さはこの辞書のすぐれた特徴であるが,とくに語形変化とアクセントの移動の表示は,当時,世界のどのロシア語辞典にも見られなかったほど完全なもので,日本のロシア語学習者に与えた便益ははかり知れぬものがあった。なお文学方面の著書に,《詩宗プーシキン》(1906),語学方面では《露西亜語学階梯》(1916),《ロシヤ語文法》(1939)がある。いずれも啓蒙的なものであるが,著者の深い学殖をうかがわせる。晩年の大きな仕事は《岩波ロシヤ語辞典》で,60年完成した。長男八杉竜一(1911-97)は生物学史家として知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八杉貞利」の意味・わかりやすい解説

八杉貞利
やすぎさだとし
(1876―1966)

ロシア語学者。東京に生まれ、1900年(明治33)東京帝国大学文科大学言語学科を卒業。翌1901年ロシア語研究のため官命によりロシアに留学、ペテルブルグ大学でボードアン・ド・クルトネーに師事した。1904年日露戦争勃発(ぼっぱつ)に伴い、急遽(きゅうきょ)帰国。以後、東京外国語学校(現、東京外国語大学)教授としてロシア語教育に専念し、独自の体系的ロシア語教授法を編み出した。1951年(昭和26)日本ロシヤ文学会を創設して初代会長となり、日本におけるロシア語学・文学の研究の進展に貢献した。主著に『岩波ロシヤ語辞典』(1960)、『露西亜語学階梯(かいてい)』(初版1916)があり、若き日の文学的業績に『詩宗プーシキン』(1906)がある。また、歌道に通じ、歌集『ろしや酒』(1965)がある。

[栗原成郎 2018年10月19日]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「八杉貞利」の解説

八杉貞利 やすぎ-さだとし

1876-1966 明治-昭和時代のロシア語学者。
明治9年9月16日生まれ。ロシアに留学中の明治36年東京外国語学校(現東京外大)教授となる。37年日露戦争で帰国。日本におけるロシア語教授法を確立した。日本ロシヤ文学会初代会長。昭和41年2月26日死去。89歳。東京出身。東京帝大卒。著作に「詩宗プーシキン」「露西亜(ロシア)語学階梯(かいてい)」「岩波ロシヤ語辞典」。

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世界大百科事典(旧版)内の八杉貞利の言及

【ロシア語】より

…日本における組織的なロシア語教育は,1873年(明治6)伝道師ニコライが東京に開いた正教神学校,およびその翌年政府の創設した東京外国語学校において開始された。比較言語学に基づく科学的なロシア語の研究は八杉貞利によってその基礎がおかれ,井桁貞敏(1907‐80),木村彰一(1915‐86)らによって発展をみた。第2次大戦後は国際社会におけるロシア語の比重増大の傾向を反映して,日本のロシア語教育も空前の規模に達したが,大学院までの専門課程を備えた大学は日本ではまだ少数である。…

※「八杉貞利」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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