八幡平(読み)はちまんたい

精選版 日本国語大辞典 「八幡平」の意味・読み・例文・類語

はちまんたい ハチマンたひ【八幡平】

岩手・秋田両県の県境にある楯状火山。ゆるやかな傾斜をもつ高原状の山頂近くには八幡沼・蟇(がま)沼などの火口湖があり、そのまわりに大湿原が展開する。十和田八幡平国立公園の一中心。標高一六一四メートル。

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デジタル大辞泉 「八幡平」の意味・読み・例文・類語

はちまんたい【八幡平】

岩手県北西部にある市。安比あっぴ高原・八幡平などのスキー場、藤七・松川・御在所などの温泉がある観光保養地。ホウレンソウの栽培が盛ん。平成17年(2005)9月に西根町松尾村安代あしろ町が合併して成立。人口2.9万(2010)。
岩手・秋田両県にまたがる火山。高原状をなし、標高1614メートル。十和田八幡平国立公園の主要地。温泉・スキー場が多い。

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日本歴史地名大系 「八幡平」の解説

八幡平
はちまんたい

奥羽山脈に連なる大火山高原で、西の鹿角市南部と仙北せんぼく田沢湖たざわこ町、東の岩手県二戸にのへ安代あしろ町・同岩手郡松尾まつお村の交点付近一帯を占める。最高部は八幡沼近くの標高一六一三・六メートル。岩手県側の東に茶臼ちやうす(一五七八メートル)、南の県境にもつこ(一五七八メートル)、西にやけ(一三六六・一メートル)、毛せん峠(一三二二メートル)が連なり、こももり・畚岳付近に数個の噴火口がある。高原には小池沼・湿原がある。頂上付近は平坦で八幡沼・がま沼の火口湖があり、広く岩手山・八甲田山・鳥海山を展望でき、二―三月の樹氷で知られ、変化に富むスロープに恵まれてスキーも盛んとなった。十和田湖田沢湖高原を含め十和田八幡平国立公園に指定。

八幡平
はちまんたい

安代あしろ町、岩手郡松尾まつお村、秋田県鹿角かづの市、同県仙北せんぼく田沢湖たざわこ町にまたがる標高一六一三・六メートルの山であり、またその山頂を中心とする高原と東の源太げんた森・茶臼ちやうす岳、南のもつこ岳、西のやけ山一帯を含む総称名でもある。十和田八幡平国立公園に属する。山名は坂上田村麻呂が蝦夷との戦いにおいて八幡大神を勧請したことに由来するという。複雑な火山地帯をなし、八幡平を中心とした一帯はどの方向から見ても盾を伏せたような形に見えるのでアスピーテ(盾状火山)とよばれる。泥火山・火山地獄などの火山活動の余塵を残す所も多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「八幡平」の意味・わかりやすい解説

八幡平[市] (はちまんたい)

岩手県北西部の市。2005年9月安代(あしろ)町,西根(にしね)町と松尾(まつお)村が合体して成立した。人口2万8680(2010)。

八幡平市北部の旧町。旧岩手郡所属。人口6390(2000)。県北西端に位置し,西は秋田県,北は青森県に接する。全域が奥羽山脈に属する山地で,中央部の山地を分水嶺として,東を太平洋に注ぐ馬淵(まべち)川上流の安比(あっぴ)川が,西を日本海に注ぐ米代川が流れる。町名は両川の名にちなむ。農林業が基幹産業で,米のほか,レタスを主とした高冷地野菜,リンドウなどの花卉の栽培,広大な山野を利用した畜産などが盛ん。木材,山菜,キノコも産する。JR花輪線が安比川と米代川の谷を結び,南端に八幡平がある。東北自動車道と八戸自動車道の分岐点にあたり,大型のスキーリゾート安比高原が開発されるなど,観光の町として発展している。

八幡平市南東部の旧町。旧岩手郡所属。人口1万9031(2000)。南西に岩手山,北部に七時雨(ななしぐれ)山(1063m)がそびえ,北上川支流の松川,赤川沿いに西根盆地が開ける。鎌倉時代末から南部氏の所領となり,平館(たいらだて)には天正年間(1573-92)に築かれた一戸(いちのへ)南部氏の居城跡が残る。農業が基幹産業で,平地では米作,山麓部では酪農,畜産が行われ,町営の牧野,畜産団地もつくられている。1719年(享保4)の岩手山噴火によって流れ出した焼走り溶岩流(特天)は長さ3kmに及び,荒涼とした景観を呈する。東北自動車道,JR花輪線が通じ,大更(おおぶけ)は八幡平登山の基地になっている。

八幡平市南西部の旧村。旧岩手郡所属。人口7064(2000)。北西に八幡平,南に岩手山がそびえ,これらの山群を源流とする赤川と松川が東流する。八幡平火山群中の茶臼岳南東麓には日本最大の硫黄鉱山の松尾鉱山があり,精製硫黄や硫化鉄鉱鉱山集落の屋敷台から搬出していたが,1969年閉山した。鉱山が稼働していた時期にはその排水が松川に流入し,本流の北上川の河床をも褐色に染めていた。広大な鉱山跡地は学校や住宅地となっている。八幡平,岩手山は十和田八幡平国立公園南部の観光の中心で,八幡平温泉郷や多くのスキー場があり,また松川上流には松川温泉や日本で初めて地熱発電を開始した松川地熱発電所もある。酪農,高冷地野菜,果樹の栽培も盛んである。JR花輪線,国道282号線が通じ,東北自動車道八幡平松尾インターチェンジが設けられている。
執筆者:

八幡平 (はちまんたい)

秋田・岩手両県の北部県境に広がる火山性高原。十和田八幡平国立公園に属する。狭義には高原中央にある最高峰の楯状火山(1613m)をいい,広義には東の茶臼岳(1578m),西の栂森(つがもり)(1350m),焼山(1366m),南の畚(もつこ)岳(1578m),大深岳(1541m)を結ぶ連峰およびその周辺地域を含む。おもに輝石安山岩の厚い溶岩流と火山灰層からなり,主峰の山頂部は約1.5km2にわたって平たんな台地状をなし,付近には八幡沼や蟇(がま)沼などの湖沼が点在し,これらをとりまいて広大な高層湿原が展開している。植生としては,標高600m付近からはブナ,1000m付近からはオオシラビソアオモリトドマツ),さらに上部にはハイマツが生育している。栂森と東の国見台との間の鞍部にあるもうせん峠は,付近に咲くガンコウランやコケモモなどの群落が毛氈(もうせん)を広げたように見えることからその名がある。また,南東の岩手山と結ぶ尾根上には湿性植物が分布する。

 山麓には秋田県側に志張(しばり)(単純泉,41~48℃),トロコ(弱食塩泉,97℃),蒸(ふけ)ノ湯後生掛(ごしよがけ),玉川,岩手県側に藤七(とうしち),松川など八幡平温泉郷と総称される素朴な温泉群がある。1970年,八幡平山頂を東西に横断する全長26.8kmの八幡平有料道路(アスピーテライン)が開通し(92年無料開放),車で訪れる観光客が増加した。西のブナ森や東の大黒森斜面にはスキー場があり,樹氷を縫う壮快な山岳スキーが楽しめる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八幡平」の意味・わかりやすい解説

八幡平
はちまんたい

秋田・岩手県境に広がる楯状火山(たてじょうかざん)。狭義の八幡平は標高1613メートルの八幡平頂上、八幡平山頂とよばれる地であるが、広義には八幡平頂上の東方にある茶臼(ちゃうす)岳(1578メートル)、西方の焼(やけ)山(1366メートル)などの火山群を含む高原状の山地をさす。標高600メートルではブナ林が多いが、1000メートルを超えるとアオモリトドマツ(オオシラビソ)の樹海となる。地形が平坦(へいたん)で季節風を遮るものがないので、アオモリトドマツの生育は悪く扁形(へんけい)している。八幡平頂上の東方には火口湖の八幡沼、ガマ沼など小沼が多く、周辺は湿原となっている。ミズバショウ、シラネアオイなどがみられる。焼山とその東方の栂森(つがもり)の間の毛氈峠(もうせんとうげ)付近にはガンコウラン、コケモモなどの植物群落がみられる。

 八幡平頂上からの展望は雄大で、岩手山、駒ヶ岳(こまがたけ)などを望むことができる。道路八幡平アスピーテライン(冬期は通行止)が東西方向に通じ、高原の探勝は比較的容易。藤七(とうしち)、後生掛(ごしょがけ)、トロコなど八幡平温泉郷があり、これらの温泉を基地とする春スキーのツアーを楽しむことができる。なお、冬期には積雪5メートルを超え、樹氷が生じる。十和田(とわだ)八幡平国立公園の一中心である。

[宮崎禮次郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八幡平」の意味・わかりやすい解説

八幡平
はちまんたい

岩手県秋田県の県境北部一帯の高原。気象庁が定義する活火山で,狭義には,八幡平頂上(1613m)を中心に,畚岳(もっこだけ。1578m),茶臼岳(1578m)を含む範囲と玉川の支流の湯田又川流域を含む。広義には駒ヶ岳(1637m),岩手山(2038m)を含めることもある。十和田八幡平国立公園に属し,多様な火山地形,高層湿原,高山植物の群落,アオモリトドマツ(オオシラビソ)の原生林などが保護されている。また,野趣に富む温泉群,樹氷なども有名。この地域の大半は,旧八幡平村で,1972年鹿角市の一地区となった。

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百科事典マイペディア 「八幡平」の意味・わかりやすい解説

八幡平【はちまんたい】

秋田・岩手県境の奥羽山脈上の活火山。安山岩からなり,頂上(1613m)付近は楯(たて)状の広い火山高原を呈し,アオモリトドマツの林や高山植物が生育,八幡沼,釜沼などがある。十和田八幡平国立公園に属し,樹氷が美しく山スキーに好適。周辺に八幡平温泉郷の諸温泉がわく。頂上付近までバスが通じる。
→関連項目田沢湖[町]日本百名山

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事典 日本の地域遺産 「八幡平」の解説

八幡平

(岩手県八幡平市;秋田県鹿角市;秋田県仙北市)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「八幡平」の解説

八幡平

(秋田県鹿角市)
森林浴の森100選」指定の観光名所。

八幡平

(青森県・秋田県)
日本百名山」指定の観光名所。

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