入立(読み)いりたつ

精選版 日本国語大辞典 「入立」の意味・読み・例文・類語

いり‐た・つ【入立】

〘自タ四〙
① ある場所にはいりこむ。深くはいる。
古事記(712)下・歌謡「大君の 心を緩(ゆら)み 臣(おみ)の子の 八重柴垣 伊理多多(イリタタ)ずあり」
※土左(935頃)承平五年二月七日「河尻にふねいりたちて」
② 親しく出入りする。親しく交わる。親しい関係にある。
※枕(10C終)一〇四「山の井の大納言は、いりたたぬ御せうとにても、いとよくおはすかし」
徒然草(1331頃)一一九「かやうの物も、世の末になれば、上さままでも入たつわざにこそ侍れ」
物事に深く関係する。精通する。通じる。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「学問に心入れて遊びの道にもいりたち給へり」
④ 物事の状態が複雑になる。入り組む。入り込む。
御伽草子・あしびき(室町中)「猶なほ入たちたる子細あるらむとて」

いれ‐たて【入立】

〘名〙
自分費用を負担すること。自前であること。自分持ち。自弁
※浄瑠璃・百日曾我(1700頃)傾城請状しきせの外は身のいれたてとの定めなり」
② 立て替えること。弁償をすること。
東寺百合文書‐る・応永一八年(1411)一二月二日・最勝光院方評定引付「彼敷地土貢以外減少、代官得分無之、結句為入立之式之間、可上表申之由」
日葡辞書(1603‐04)「Iretateuo(イレタテヲ) スル」

いり‐たち【入立】

〘名〙
① ある場所にはいりこむこと。親しく出入りすること。また、その人。
※枕(10C終)二六八「おほやけ所にいりたちする男、家の子などは、あるがなかによからんをこそは、選りて思ひ給はめ」
② (「れんちゅういりたち(簾中入立)」の略) 昔、宮中女房詰め所である台盤所(だいばんどころ)に参入することを許されること。また、その人。三位以上で直衣(のうし)勅許公卿を普通とする。
たまきはる(1219)「近う候ふ人は東の台盤所とて向ひたる方を通る。いりたちの人々などはそれにゐる」

いれ‐た・つ【入立】

〘他タ下二〙
① 立ち入らせる。親しく出入りさせる。
※枕(10C終)三一五「北の方いで来て後は、内にもいれたてず」
② 自分で費用を負担する。自弁する。また、立て替える。弁償する。
※高野山文書‐元応元年(1319)閏七月一〇日・太田庄桑原方雑掌定淵起請文「年貢正米弐拾石入立之、可運送

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