入目(読み)いりめ

精選版 日本国語大辞典 「入目」の意味・読み・例文・類語

いり‐め【入目】

〘名〙
① 目が引っ込んでいること。
名語記(1275)六「人のいりめなるをめりたりといふ」
② 賽(さい)の目で、有利な目が出ること。また、その目。
咄本・鹿の巻筆(1686)五「宵からみるに、親も入目はござらぬ」
③ (形動) 気が弱く内気なこと。控えめなこと。気の沈みがちであること。また、そのさま。
吾妻問答(1467頃)「此の道は〈略〉吉き程に、入めにもなく又さし出でても見えぬ様に」
浮世草子傾城禁短気(1711)一「夕飯過ぎて、日も西に座敷も入めな時分
④ 必要とする費用入費
※東寺百合文書‐ち・正長元年(1428)八月七日・廿一口方評定引付「金堂前砂代之事〈略〉此沙汰用途等入目ある之間」
※浮世草子・好色一代女(1686)三「さる女を久しくだました替りに、いやといはれぬ首尾になりて子を産(うます)うちの入目、是非に頼みたてまつる」

いれ‐め【入目】

〘名〙
① 江戸時代、大坂の蔵屋敷で貢納米が入札によって売り払われる時、落札者が代銀を蔵元または掛屋に納入する際に支払う手数料。
※稲の穂(1842‐幕末頃)「落札の米穀拾石に付弐分づつ懸屋へ遣す、是を入目といふ」
② 江戸時代、銀座において上納銀や献上銀枚包みなど、幕府御金蔵または御納戸に収納される包み銀に、本目の外に若干の銀を掛け足して入れること。入れ目銀。銀包み入れ目定法。
③ 江戸時代、綿買次問屋仲間の取引方法で、繰り綿の荷造りに際して本貫の外に若干の掛け足しをすること。
④ 江戸時代の雑税の一種。蜂須賀藩で、貢租米取り立てに際して行なった、正租の外の付加税。
眼球を失った人の眼窩(がんか)に入れる、ガラスやプラスチックなどで作った眼球。義眼。
随筆譚海(1795)九「番町の御家人何がしの息女、片目あしかりしを、入眼せしかば、よき目よりはよくみなさるるやうに成たり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「入目」の意味・読み・例文・類語

いり‐め【入(り)目】

[名・形動]
費やした金高。経費。出費
種々さまざまの―を幾晩かかかって漸く調べあげた積り書」〈露伴五重塔
控えめなこと。また、そのさま。
「―にもなく、又さし出でても見えぬ様に」〈吾妻問答
目が引っ込んでいること。
「人の―なるをめりたりと言ふ」〈名語記・六〉
[類語]費用掛かりついり用入用にゅうよう入費にゅうひ出費用度経費実費コスト雑費

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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