めん【免】
〘名〙
① ゆるすこと。また、免除すること。
※
日葡辞書(1603‐04)「Menuo
(メンヲ) ヤル〈訳〉十支払わなければならないと
ころを、二許して、八支払えばよいように免除する」
② 職などをやめさせること。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉下「卑い処では免が恐いといふ肚で」 〔漢書‐武帝紀〕
③ 荘園制で、干害・風害などの事情によって、その年の
年貢・課役を免除または減免すること。また、その田地。損免。
※大乗院寺社
雑事記‐文正元年(1466)閏二月二五日「当庄負所は大宅寺・二階堂・無主院・勧覚院・一品院各半分免也」
④ 荘園で、特定の田地や在家の
領主に対する年貢・課役分を荘官などに報酬として支給すること。また、その田地・在家など。
免田。給田。免家
(めんけ)。
※上杉家文書‐文保二年(1318)七月七日・肥前河副庄内免田勘料安堵奉書「肥前国河副庄富益名祈田内極楽寺免弐町柒段勘

事」
⑤ 近世、
石高(こくだか)または収穫高に賦課する年貢の割合・租率。厘
(りん)。厘付
(りんづけ)。
免合(めんあい)。免付
(めんつけ)。
※梅津政景日記‐元和三年(1617)三月二八日「免は六つ成之所にて御座候を、只今は御高四百六十七石に罷なり候」
めん‐・ずる【免】
〘他サ変〙 めん・ず 〘他サ変〙
① 許す。免除する。
※平家(13C前)三「重科は遠流にめんず、はやく帰洛の思ひをなすべし」
② その人の功労・人柄・心情あるいはその人に関係ある第三者の
体面などにかけて罪を許す。多く「…に免じて」の形で用いる。
※御伽草子・弁慶物語(未刊国文資料所収)(室町末)「はじめのほどこそししゃうにも大なごんにもめんじけれ、この事さたにおよびけり」
※狂言記・岡太夫(1700)「是のお娘子にめんじて御免なされ」
③ 職をやめさせる。官職を解く。
※舞姫(1890)〈森鴎外〉「余が頗る学問の岐路に走るを知りて憎み思ひし官長は、〈略〉我官を免じ、我職を解いたり」
まぬが・れる【免】
〘自ラ下一〙 まぬが・る 〘自ラ下二〙 (古くは「まぬかる」) 危険なことや不利なことなどから、都合よくのがれられて、そのことに関わらないですむ。具合よく、好ましくない
物事に出あわないですむ。まのがれる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)四「一切の
怖畏を脱
(マヌカ)るること得む」
[
補注]
類義語「のがれる」は不快な状況から離れ去る意。「まぬがれる」は不快な状況に遭わないで済む意を表わす。
めん・じる【免】
〘他ザ上一〙 (サ変動詞「めんずる(免)」の上一段化したもの) =
めんずる(免)※和英語林集成(
再版)(1872)「Menji, -ru
(メンジル) または、dzuru, -
ta メンズル 免」
まのが・れる【免】
〘自ラ下一〙 まのが・る 〘自ラ下二〙 (古くは「まのかる」) =
まぬがれる(免)※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「但だ能く金剛波若を誦せば、此の厄を度(マノカル)可し」
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免
めん
中世においては、干害・風害などによって年貢(ねんぐ)を免除または減免することを意味したが、江戸時代においては、検地による生産高の把握が行われたことから、その意味も年貢を賦課するときの租率の意に変わった。免は「幾ツ何分何厘何毛」で表すが、「免五ツ三分」とは年貢率5割3分のことである。石高(こくだか)100石に対して免が「五ツ三分」であれば、石高に5割3分の免を乗じて年貢高は53石となる。関東地方などにおいては、一反につき「何斗何升何合取り」という反取(たんどり)が実施されていたため、この免によって年貢が賦課されていた所は少ない。また、免という文字がつく用語例に、一定額の年貢率を賦課する定免(じょうめん)や、凶作などで例年のように年貢を賦課することができない破免(はめん)などがある。
[川鍋定男]
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免【めん】
免相(めんあい)(免合)とも。江戸時代の貢租率ないしは貢租額をいう。石高に対する年貢高(領主取り分)の割合で,〈免一つ壱分壱厘壱毛〉と表示されれば11.11%のこと。ところで〈免〉は免じるの意であり,中世までは給免田,雑事(ぞうじ)免,浮(うき)免などと,本来の意で用いられていた。用法の逆転は慶長〜元和期(1596年―1624年)に起こったとされているが,なぜ逆転したかについては諸説があって定まっていない。
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免
めん
江戸時代の年貢の賦課率
免合 (めんあい) ・免相ともいう。本来は収穫高のうち生産者に残される部分の意。「免四つ半」といえば4割5分を示す。通常五つ前後が多いが,時期・豊凶・地域により異なる。免の決定には江戸初期には検見 (けみ) 法を用い,享保(1716〜36)ころより定免法 (じようめんほう) を用いた。
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デジタル大辞泉
「免」の意味・読み・例文・類語
めん【免】
1 やめさせること。免官・免職。
「卑い処では―が恐いという肚で」〈紅葉・二人女房〉
2 ゆるすこと。免除すること。
「―ヲヤル」〈日葡〉
3 江戸時代、石高または収穫高に対する年貢高の割合。免合。
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めん【免】
江戸時代の貢租率ないしは貢租額の意。〈免相(合)(めんあい)〉ともいう。納租額を記して領主から村方に交付する文書を〈免定(状)(めんじよう)〉と呼び,また各百姓への割付けを〈免割(めんわり)〉と称した。《田法雑話》には〈田畠の高壱石に付て取米何程と云あたりを免と云〉とあり,《地方凡例録(じかたはんれいろく)》も〈仮令ば下田高弐百石,免三つにて此取米六拾石〉としている。この免を基礎に,ならし免,土免(つちめん),定免(じようめん),段免などの用語も生まれた。
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世界大百科事典内の免の言及
【年貢】より
…まず代官所において,検地により確定された石高(こくだか)(または面積)を基準とし,その年の作柄を検見(けみ)した結果にもとづいて年貢納入高を決定する。これを小物成,浮役などと一緒に年貢割付状(可納割付(かのうわつぷ),免状ともいう)に記し,村請(むらうけ)の原則に従って村の名主,惣百姓中あてに下付すると,村では農家の所持石高に比例した高割りによって各戸の賦課高を決定する。この内,村の年貢高を決める方法は,時代によって変化している。…
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