先天性幽門狭窄症(読み)せんてんせいゆうもんきょうさくしょう

改訂新版 世界大百科事典 「先天性幽門狭窄症」の意味・わかりやすい解説

先天性幽門狭窄症 (せんてんせいゆうもんきょうさくしょう)

正しくは先天性肥厚性幽門狭窄症congenital hypertrophic pyloric stenosisという。先天的に胃幽門部に長さ約2cm,幅約1.5cmの卵形ないし球形の硬い弾力性のある腫瘤ができる疾患。この腫瘤は主として輪筋層の肥厚に起因しており,筋肉の肥厚の結果,内腔の狭窄が起こるものであるが,けっして閉鎖には至らない。発生頻度は日本人よりも白人で高く,男女比は4対1で男児に多く,また第1子にやや多い。発生には多数の遺伝的および環境的因子が関与しているものと思われる。家族内発生頻度の増加が認められている。症状は胃出口部の狭窄に基づくもので,嘔吐が特徴的である。嘔吐は生後2~3週ころから始まり,噴水状で,吐物には絶対に胆汁を含まない。このほか,体重減少,脱水がみられ,症状の進行につれて明らかな低クロール性アルカローシスを示す。体カリウム量も減少する。上腹部に拡張した胃と,蠕動(ぜんどう)の亢進がみられ,1.5~2.0cmのオリーブ様の硬い幽門部腫瘤を触知することができる。これにより診断は確定する。造影剤使用によるX線検査でも幽門管の延長湾曲,狭小化(これをstring signという)などがみられる。

 治療は外科的療法による。すなわち,速やかに診断を確定し,脱水,電解質異常,貧血を矯正した後,ラムステット幽門筋切開術を行う。手術例の予後はきわめて良好である。現在では,硫酸アトロピンなどによる内科的治療も試みられている。
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