先天性の病気〈総論〉

六訂版 家庭医学大全科 「先天性の病気〈総論〉」の解説

先天性の病気〈総論〉

(運動器系の病気(外傷を含む))

 運動器系病気うち先天性のものをいくつか取り上げて解説します。ここで「先天性」とは、母体から産まれ出る時にすでに異常がある場合を指し、出生後に異常が発生する場合は「後天性」と呼びます。

 先天性のもののなかには、遺伝子などが関与して発生する「遺伝性」のもののほか、妊娠中の母体内の環境によって生じるような病気も含まれます。さらに、母体内の環境といっても、妊娠初期の場合もあれば、後期の場合もありえます。

 ここで取り上げる病気は、ほとんどが形の異常(形態異常)です。整形外科疾患のなかでも、膝や足部などの形態は外観的にわかりやすく、診断自体も容易なものが多いのですが、股関節など体の奥のほうの異常は見つけにくいので注意が必要です。

 すべての病気に共通したことですが、その詳細を早期に正しく認識することが重要です。かつては早期診断を含めた乳児検診が充実していましたが、近年では徹底した検診体制がとられない傾向があり、股関節以外の病気の発見も遅れる可能性があります。

 病気のなかには、早期に認識されないと適切な治療のタイミングを失ってしまうものも多くあります。たとえば、股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)先天性内反足(ないはんそく)などは乳児期早期の治療が重要であり、また多指症(たししょう)では、こども自身の「物心」がつかないうちに治すのがよいとされています。

 先天性のものを含めた小児の運動器系の病気では、その後の発育による変化の可能性が高いので、多くは長期的な観察が必要になります。ここに述べる先天性の病気はいずれも、ことによると発育終了までの観察が必要であることを、家族も医療者側も念頭に置いて子育て診療にあたることが重要です。

奥住成晴

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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