先史時代(読み)せんしじだい(英語表記)prehistoric age

精選版 日本国語大辞典 「先史時代」の意味・読み・例文・類語

せんし‐じだい【先史時代】

〘名〙 文献・記録が存在せず、考古学地質学などが主要な研究領域となる時代。⇔歴史時代。〔哲学字彙(1881)〕

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デジタル大辞泉 「先史時代」の意味・読み・例文・類語

せんし‐じだい【先史時代】

文献的史料の存在しない時代。日本では旧石器時代から弥生時代をさす。ただし、弥生時代を原史時代とみる説もある。→歴史時代

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「先史時代」の解説

先史時代(せんしじだい)
prehistoric age

文献や文字による歴史記録の存在しない時代。考古学はそのような時代の歴史の解明を中心課題としている。1865年,イギリスのジョン・ラボックが旧石器時代の独立を確証してから以後,本格的な研究が進展していった。研究の対象としては石器土器の型式・編年,動植物地理など多くの要素を含む研究である。先史時代と歴史時代の考古学が区別される際には,文献史料の有無が問題になるばかりではなく,それを遺物の実年代や作者,使用者などの決定に利用する方法が問題になる。先史時代も地域によってずいぶん異なるものであるが,記録,文献に頼れない以上,過去の人間生活を反映したいっさいの物件,例えば木工具,農具,調理器,食器服飾,家具,調度,武器,祭器楽器運搬・交通手段などの遺物の研究が重要な役割を占める。

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改訂新版 世界大百科事典 「先史時代」の意味・わかりやすい解説

先史時代 (せんしじだい)

考古学における時代区分の一つ。文献記録という意味での歴史が出現する前の時代。これに対して文献記録の不十分な時代を原史時代,豊富な時代を歴史時代と呼ぶ。日本では,弥生時代までを先史時代,古墳時代を原史時代として扱う。しかし《魏志倭人伝》の存在を重視して,弥生時代を原史時代に含める人もある。また歴史は人類出現以来存在するという立場の人は,先史,原史,歴史の区分自体を認めていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「先史時代」の意味・わかりやすい解説

先史時代
せんしじだい
Prehistoric Age

文献によってはその様相が知られない遠古の時代をいう。1836年、スウェーデンニルソンS. Nilson(1787―1883)が初めて提唱したが、その根底には、文献によって知られる過去が歴史であるという伝統的な考え方があった。「歴史」を先史時代と歴史時代に分けるのは、歴史の概念を二またかけて用いたことで、学問的厳密さを欠いている。考古学的調査発達によって、歴史は人間の生成とともに始まることが明確になってきた現在、「先史時代」という語は遺物にすぎなくなっている。また歴史を大きく二分しているのは、文字の発明・使用ではなく、生産経済の発明または採用ということを念頭に置かなければならない。

[角田文衛]

『角田文衛著『古代学序説』(1976・山川出版社)』

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百科事典マイペディア 「先史時代」の意味・わかりやすい解説

先史時代【せんしじだい】

考古学の時代区分の一つ。文献記録が存在する以前の時代をさし,文献記録が不十分ながらも存在する原史時代,豊富に残る歴史時代と並列して使用される。日本列島では,縄文時代までを便宜的にこう呼ぶこともある。しかし,文献の有無を基準に時代を区分することは,人類の歴史の多様性を考慮しないものだとする批判もある。→三時代区分法
→関連項目北方ユーラシア文化

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「先史時代」の意味・わかりやすい解説

先史時代
せんしじだい

考古学上の年代区分の一つ。人間の歴史のうちで,文字をもたず,したがって文字による史料が残されることのなかった時代をいう。この時代のことを研究するには,人間がつくったもの (遺跡,遺物) で現在まで残存しているものが,その資料となる。 (→先史学 )  

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旺文社世界史事典 三訂版 「先史時代」の解説

先史時代
せんしじだい
prehistoric age

文献的史料が出現しない時代
文字による記録の現れた歴史時代に対する語で,遺跡・遺物などを手がかりに考古学・人類学・民俗学・社会学などで究明する時代。

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世界大百科事典(旧版)内の先史時代の言及

【採集狩猟文化】より

…しかし,彼らの生活様式は,今日なお人類の原初的な文化の伝統を引き継いでいると考えられる。
[先史時代]
 人類史の90%以上を占める前期旧石器時代は,ヒトの進化と文化の発達がきわめてゆっくりと進行した時代で,この時代の猿人(アウストラロピテクス)とそれに続く原人(ホモ・エレクトゥス)は,粗雑な加工の石核石器や剝片石器を有していたにすぎない。これらの石器は,狩猟用の武器というよりも,木槍や棍棒あるいは掘棒といった狩猟具,採集具の製作用具として,また,獲物を解体するための刃物として使用されたと考えられる。…

※「先史時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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