元素・原素(読み)げんそ

精選版 日本国語大辞典 「元素・原素」の意味・読み・例文・類語

げん‐そ【元素・原素】

〘名〙
① 化学で、成りたちや構造の最も簡単な成分。同一原子だけから成る物質。現在、原子番号一番の水素から九二番のウランまでの自然に存在する元素(四三番のテクネチウムを除く)と、四三番および九三番のネプツニウムから一一〇番のダームスタチウムまでの人工的につくりだした元素が確認されている。一一一番以降にも原子番号で呼ばれる未確定元素がある。化学元素
※遠西医方名物考(1822)一「硫黄の性質単一無雑にして一個の元素なり」
万物根源となる、それ以上に分解できないもの。たとえば、ギリシア哲学の四元素(地、水、空気、火)、仏典の四大(地、水、火、風)。
※西洋哲学史要(1901)〈波多野精一〉古代哲学史「エムペドクレース〈略〉さて彼は元素の数を四と定めたり。地、水、風、火即是なり」
③ ものを構成するもとになっているもの。構成要素
※百学連環(1870‐71頃)〈西周〉二「右各弊害ある三種の政治を以て elemental forms 即ち政体の元素となすなり」
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉下「人の性質の原素(ゲンソ)となるべき種々の性情」
④ 数学で、集合を作っている個々のもの。元。要素。
[語誌](1)「元素」は、蘭学での翻訳の必要からオランダ語の「Grondstof」を、「Grond」(元または原)+「stof」(素)のように直訳して作られたものであろう。
(2)幕末の「英和対訳袖珍辞書」(一八六二)では「Element」の訳語には見られないが、「Stamina」には「元素、分ケ難キ微細ノ分子」とあり、また明治初期の「附音挿図英和字彙」(一八七三)では「Element」の訳語に「元素」が登場する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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