僧綱(読み)そうごう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「僧綱」の意味・わかりやすい解説

僧綱
そうごう

僧尼綱維を保ち、諸寺を監督するために設けられた僧官総称。中国に始まり、職位には僧統、僧録などの称を用いた。日本では、京師の諸寺より推挙された智徳(ちとく)兼備の人物が任命され、綱所(こうじょ)にあって事務を行い、僧正(そうじょう)、僧都(そうず)、律師(りっし)の三階の称が用いられ、これをさらに大・少・正・権などに分けた。人数も『弘仁格(こうにんきゃく)』には僧正・大僧都各1人、少僧都2人、律師4人と定められたが、のちに漸次増員し、864年(貞観6)にはこれらに相当する僧位として、僧正に法印大和尚位(ほういんだいかしょうい)、僧都に法眼(ほうげん)和尚位、律師に法橋上人位(ほうきょうしょうにんい)が設けられたこともあって、人数の増加に拍車をかけ、1086年(応徳3)には27人と激増し、有名無実となった。現在では各宗で僧の位階を示すのに用いる。

石田瑞麿

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精選版 日本国語大辞典 「僧綱」の意味・読み・例文・類語

そう‐ごう ‥ガウ【僧綱】

〘名〙
① 令制で、僧尼を統率し、法務を処理するために任命された僧官。僧正・僧都・律師の三つ。
※令集解(701)喪葬「大宝元年〈略〉七月四日勅裁、僧綱賻物者、僧正准正五位、大少僧都律師並准従五位之」
② 僧官と僧位の総称。平安時代にはいって、制定をみた僧位九階のうち、修行位四階が有名無実となったため、別に僧綱の位階として定められた法印・法眼(ほうげん)・法橋の三位を僧正・僧都・律師の三官に加えたもの。
※小右記‐永延三年(989)三月五日「有僧綱召。〈略〉僧綱員数今度満廿人。同公卿員数歟」
※宇治拾遺(1221頃)一五「験徳あらたなりとて、僧都に任ずべきよし、宣下せらるれども、『かやうのかたゐは、何条僧綱になるべき』とて、返し奉る」
③ 「そうごうくび(僧綱領)②」の略。
※諸聞書条々「物を着に、六拾より内はゑりを折てきる也。六十より外は、そうかうに着へき也」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「僧綱」の意味・わかりやすい解説

僧綱
そうごう

仏教の僧尼を統轄し,大寺院などを管理する役職。中国の僧官にならって,推古 32 (624) 年に僧正,僧都,法頭が設けられたが,さらに弘仁 10 (819) 年に僧正,僧都,律師の3綱がおかれ,各階級が定められ,のちにはただの称号と化した。

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デジタル大辞泉 「僧綱」の意味・読み・例文・類語

そう‐ごう〔‐ガウ〕【僧綱】

僧尼を統率し諸寺を管理する官職僧正僧都そうず律師が置かれた。
僧官僧位の総称。僧正・僧都・律師と、法印法眼ほうげん法橋ほっきょう
僧綱領そうごうえり」「僧綱頸そうごうくび」の略。

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旺文社日本史事典 三訂版 「僧綱」の解説

僧綱
そうごう

僧尼を取り締まり,諸大寺を管理する僧職
僧正・僧都・律師からなる。624年に初めて設けられ,律令時代には重要な意味を持った。819年には僧正・大僧都・少僧都各1人,律師4人と定められた。平安末期以後実質を失った。

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世界大百科事典 第2版 「僧綱」の意味・わかりやすい解説

そうごう【僧綱】

仏教界の統制にあたる中央の僧官。624年(推古32)ある僧が斧で祖父をなぐった事件を契機に,百済の僧観勒(かんろく)を僧正(そうじよう),鞍部徳積(くらつくりのとくしやく)を僧都に任じたのが制度的な始まりである。律令制下では僧正,大僧都,少僧都,律師および実務を担当する佐官からなる機構であった。僧尼令によると,僧綱は治部(じぶ)省玄蕃(げんば)寮の統属下にあって,その職務は僧尼名籍と寺院資財の管理,〈法務の綱維〉とよばれる僧尼の統轄や教学の振興をおもな内容とした。

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世界大百科事典内の僧綱の言及

【僧位】より

…しかし全位にわたっては施行されず,8世紀末になると賢大法師位はなくなり,伝灯,修学,修行の3系列にそれぞれ大法師位,法師位,満位,住位,入位の5級に整備された。平安時代には修学,修行の2系列も消え,しかも盛んに昇叙されるため,僧綱(そうごう)はほとんど伝灯大法師位となった。そこで864年(貞観6)僧綱の位階として法印大和尚位(ほういんだいかしようい),法眼和上位(ほうげんかしようい),法橋上人位(ほつきようしようにんい)の3階を設けた(法印,法眼,法橋)。…

【僧官】より

…日本では624年(推古32)百済の僧観勒(かんろく)の奏上によって僧正,僧都を任じたのが始まりである。その後,645年(大化1)十師(じつし)に改まったが,律令制の施行にともない683年(天武12)僧正,僧都,律師からなる僧綱(そうごう)が成立した。これは中央の僧官であるが,701年(大宝1)諸国に国師が任ぜられ,地方の仏教界の統制にあたった。…

※「僧綱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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