デジタル大辞泉
「傍若無人」の意味・読み・例文・類語
ぼうじゃく‐ぶじん〔バウジヤク‐〕【傍若無人/×旁若無人】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
傍若無人
人前をはばからず勝手気ままな言動をすること。
[活用] ―な・―に。
[使用例] 卑弥子はなにも聞かなかったようにしばらく黙っていた。それから欲求不満の女子大生みたいに傍若無人に醜い高笑いをした[大江健三郎*日常生活の冒険|1964]
[使用例] 夕陽にかがやいた山門の背後にさして大きくない寺が見える。うしろは、崖の茶色の切りたった山につづいている。庫裏はうす暗く、ひんやりとして板の間には二、三羽の鶏が傍若無人に歩きまわっていた[遠藤周作*沈黙|1966]
[使用例] 十分近くも待たせたので、よほど重要な用件かと思えば、絵葉書をとり出して来て、うれしそうに眺めている。不届きな男、うわさ以上に傍若無人なやつだと思った[城山三郎*官僚たちの夏|1974]
[解説] 「傍らに人無きが若し」と読みます。「史記」に記された中国・戦国時代の刺客、荊軻の話に出てきます。
刺客というのは暗殺を請け負う人物ですが、荊軻は書を好み、社交的でもありました。仲間たちと街で飲んでは、楽器を弾き、歌って楽しむ日常でした。
酔いが回ると、仲間とともに大声で泣き、「旁らに人無き者の若し」だったと言います。ここでは「旁」の字が使われていますが、「傍」と同じです。
この荊軻が、後に秦王を殺そうとして失敗するまでが、「史記」には活劇ふうに描かれています。
「傍若無人」の現代語での使い方を見ると、いささか幅があります。電車の中で、周囲に乗客がいないかのように騒ぐ場合に使うのは、典型的な用法です。一方、「横柄、無礼」に近い意味でも使います。「息子が父親に対して傍若無人にふるまう」といった使い方です。「人を人とも思わない」に近いようです。
出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報