偶蹄類(読み)グウテイルイ(英語表記)even-toed ungulates

デジタル大辞泉 「偶蹄類」の意味・読み・例文・類語

ぐうてい‐るい【偶×蹄類】

偶蹄目の哺乳類総称。第3指と第4指の2本が発達し、第1指は退化して2本または4本のひづめをもつ。草食性で、反芻はんすうするシカなどと、反芻しないカバイノシシなどとに大別される。10科に分類、約184種が知られる。→奇蹄類きているい

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精選版 日本国語大辞典 「偶蹄類」の意味・読み・例文・類語

ぐうてい‐るい【偶蹄類】

〘名〙 哺乳類に属する目の一つ、およびそれに属する動物の総称。四肢の指が二本または四本の偶数で、左右対称をなす。普通三番目と四番目の指だけが発達して単蹄を二分した形となる。草食性ないし雑食性で、胃は複房の場合が多い。イノシシ類、核脚類(ラクダラマなど)、反芻類の三亜目に分けられ、ウシ、シカ、キリンなどの反芻類が大部分を占める。偶蹄目。〔生物学語彙(1884)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「偶蹄類」の意味・わかりやすい解説

偶蹄類 (ぐうているい)
even-toed ungulates

草食性まれに雑食性のひづめをもった哺乳類,すなわち有蹄類の1目で,ひづめの数がふつう2,または4個の偶数のため偶蹄目Artiodactylaと名付けられた。ほとんどのものがひづめだけを地に着けて歩く蹄行性で,多くは走るのに適した体制をもち,前腕骨と下腿骨は,それぞれ上腕骨と大腿骨よりも長い。前・後足の軸は,他の指より大きい第3指と第4指の間を通り,おもにこれらの指のひづめで体を支える。これにつれて中手骨と中足骨も第3と第4が大きく,進化したものでは合一して1本の長い管骨となる。鎖骨がなく,前肢はほとんど前後にしか動かない。後足のかかとにある距骨は,その上端と下端が滑車になっていて,脛骨(けいこつ)との関節だけでなく,その下の足根骨(楔状骨(せつじようこつ)と舟状骨の合一した楔舟骨)との関節も可動性である。このため脛骨と後足は他の哺乳類より強く屈曲でき,歩幅を大きくとることができる。大腿骨には奇蹄類における臀筋(でんきん)の付着部である第三転子がなく,臀筋は脛骨に付着する。踵骨(しようこつ)は腓骨(ひこつ)と関節する。上の切歯と第1前臼歯(ぜんきゆうし)が消失する傾向と,下の犬歯が切歯状に変わる傾向が見られ,胃が数室に分かれて食物を反芻(はんすう)するものが多い。盲腸と多くは胆囊がある。進化した類では眼下腺,指間腺,中足腺,鼠径(そけい)腺などの臭腺が発達し,雄は頭に骨質の角をもつなど二次性徴が顕著なことが多い。

 奇蹄類と同じく踝節(かせつ)目から降下したもので,新生代第三紀の始新世前期に北アメリカに現れた最古の偶蹄類,イノシシ亜目のパラエオドン類はまもなく衰えたが,始新世中期に現れた反芻亜目のものは奇蹄類を駆逐してしだいに栄えた。家畜のブタ,ラクダ,ラマ,アルパカトナカイ,ウシ,スイギュウ,ヤク,バンテン,ガヤル,ヒツジ,ヤギなどのほか,現生の野生種は211種知られ,南極大陸とオーストラリア区以外のほとんど世界中に分布する。次の2亜目10科がある。(1)イノシシ亜目 上の切歯はよく発達し,犬歯は大きくきば状,中手・中足骨は管骨を形成しない。胃には食道溝がなく,反芻をしない。四肢は比較的短く,早く走るのには適していない。角はなく精巣は鼠径位である。イノシシ科(13種。ユーラシアスンダ列島アフリカマダガスカル),ペッカリー科(3種。南・北アメリカ),カバ科(2種。アフリカ)。(2)反芻亜目 上の切歯と犬歯はふつう退化し,胃には食道溝があり,食物を反芻する。四肢が長く,中手・中足骨は合一して管骨となり,高速で走るのに適する。多くは角をもち,精巣は陰囊内に降下する。ラクダ科(6種。アジア,南アメリカ),マメジカ科(4種。南アジア,アフリカ),ジャコウジカ科(5種。アジア),シカ科(41種。南・北アメリカ,ユーラシア,スンダ列島,ニューギニア,北アフリカ),キリン科(2種。アフリカ),プロングホーン科(1種。北アメリカ),ウシ科(134種。アフリカ,ユーラシア,北アメリカ)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「偶蹄類」の意味・わかりやすい解説

偶蹄類
ぐうているい
even-toed ungulates

哺乳(ほにゅう)綱の有蹄類の1目で、前後足の指の数が普通2本または4本の偶数のためにこの名がある。偶蹄目Artiodactylaの仲間は、ひづめだけを地につけて歩く蹄行性で、多くは走るのに適し、前腕骨と下腿(かたい)骨は、上腕骨と大腿骨より長い。足の軸は、他指より大きい第3、第4指の間を通る。前足の中手骨と後ろ足の中足骨も第3と第4が大きく、進化した類では合一して1本の長い管骨となる。鎖骨がなく、前肢はほとんど前後にしか動かない。後ろ足のかかとにある距骨は、上下の両端が滑車になり、脛骨(けいこつ)との関節のほか、足根骨との関節も可動性である。このため脛骨と後ろ足は他の哺乳類より強く屈曲でき、歩幅を大きくできる。大腿骨には奇蹄類にみられる第3転子(臀筋(でんきん)の付着部)がなく、臀筋は脛骨に付着する。上の切歯が消失し、下の犬歯が切歯状に変わる傾向がみられ、胃が数室に分かれて食物を反芻(はんすう)するものが多い。盲腸と、多くは胆嚢(たんのう)がある。進化した類では、眼下部、指間部、中足部、鼠径(そけい)部などに臭腺(しゅうせん)があり、雄は頭に骨質の角(つの)をもつことが多い。

 系統的には、奇蹄類と同じく踝節(かせつ)目から分かれ出たもので、新生代の始新世前期にイノシシ亜目のパラエオドン類が北アメリカに現れた。これはまもなく衰えたが、始新世中期に現れた反芻亜目はしだいに奇蹄類を駆逐して栄え、有蹄類の大部分を占めるに至った。家畜のブタ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、ウシ、スイギュウ、ヤク、バンテン、ガヤル、ヒツジ、ヤギなどのほか、現生の野生種は184種以上知られ、南極大陸とオーストラリア区以外のほとんど世界中に分布し、次の2亜目10科がある。

(1)イノシシ亜目 上の切歯はよく発達し、犬歯は大きく牙(きば)状。胃には食道溝がなく、反芻しない。四肢は比較的短く、管骨がなく、早く走るのには適さない。角はない。雑食性のイノシシ科(8種以上、ユーラシア、アフリカ)とペッカリー科(3種、南・北アメリカ)、草食性のカバ科(2種、アフリカ)がある。

(2)反芻亜目 すべて草食性で、上の切歯は退化し、胃には第3胃の入口に食道溝があり、食物を反芻する。四肢が長く、管骨があり、高速で走るのに適する。多くは角をもつ。ラクダ科(4種、アジア、南アメリカ)、マメジカ科(4種、南アジア、アフリカ)、ジャコウジカ科(3種、アジア)、シカ科(34種以上、南・北アメリカ、ユーラシア、スンダ列島、ニューギニア島、北アフリカ)、キリン科(2種、アフリカ)、プロングホーン科(1種、北アメリカ)、およびウシ科(123種以上、アフリカ、ユーラシア、北アメリカ)がある。

[今泉吉典]


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百科事典マイペディア 「偶蹄類」の意味・わかりやすい解説

偶蹄類【ぐうているい】

前後肢の指が2本または4本の有蹄獣。現生種は約200種。体重は第3,4指に均等にかかり,走るのに適した体をもつものが多い。ラクダ,マメジカ,シカ,キリン,ウシ類は反芻(はんすう)性だが,イノシシ,ペカリー,カバは反芻をせず,切歯および犬歯が発達する。→奇蹄類
→関連項目口蹄疫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偶蹄類」の意味・わかりやすい解説

偶蹄類
ぐうているい
Artiodactyla; even-toed ungulate

哺乳綱偶蹄目に属する有蹄獣の総称。指行性で,親指は退化し,指数は偶数になっており,体重はおもに第3,4指にかかる。多くは草食で,反芻胃をもつものがある。現生のものはイノシシ,ペッカリー,カバ,ラクダ,マメジカ,シカ,キリン,プロングホーン,ウシの9科に分けられ,約 150種が知られる。

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世界大百科事典(旧版)内の偶蹄類の言及

【肉食】より

…旧約聖書にも,可食・不可食動物についての規定がある。獣類のうち,反芻(はんすう)・偶蹄(ぐうてい)類は野生であれ,家畜であれ可食とされる。しかし偶蹄だが反芻しない豚は不可食である。…

【ひづめ(蹄)】より

…大型の草食哺乳類がもつがんじょうな靴状のつめで,重い体を支えて長距離を走るのに適している。典型的なものはウマ,バク,サイなどの奇蹄類,ウシ,カモシカ,シカ,キリン,イノシシなどの偶蹄類に見られるが,ゾウのつめもひづめである。一般の哺乳類の指端にある鉤(かぎ)づめの変わったもので,サルやヒトの扁(ひら)づめの大部分を占める爪壁(そうへき)が,指の端節を取り巻いて円筒状になり,その円筒の底を発達した爪底がふさいで,ちょうど靴をはいたように指の先を完全に包む。…

※「偶蹄類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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