日本大百科全書(ニッポニカ) 「健胃薬」の意味・わかりやすい解説
健胃薬
けんいやく
芳香や苦味によって嗅覚(きゅうかく)、味覚を刺激して反射的に胃液や唾液(だえき)の分泌を亢進(こうしん)させ、胃の機能(運動、分泌、消化)を促進させる薬剤で、食欲不振や消化不良に用いられる。苦味を利用するものを苦味健胃薬、芳香を利用するものを芳香健胃薬という。主として生薬(しょうやく)がこの目的で用いられ、苦味健胃薬にはゲンチアナ、センブリ、リュウタン、コロンボ根、ホミカ、コンズランゴ、オウレン、オウバクなどがあり、芳香辛味健胃薬としてははっか油、ウイキョウ、ケイヒ、サンショウなど食品としての香辛料を含むものがあり、その精油が芳香成分である。芳香健胃薬はまた駆風薬(腸内ガスを排出させる作用をもつ薬)としても用いられる。トウヒのように芳香と苦味を有するものは芳香苦味健胃薬という。健胃薬は一般的に消化酵素を配合して用いることが多いので、健胃消化剤ともいわれている。食べすぎ、胃酸過多のときに用いられる健胃散は、制酸剤としての炭酸水素ナトリウムにセンブリ末あるいはゲンチアナ末を配合したもので、これにさらにジアスターゼなどの消化酵素を加えてよく用いられる。健胃散は単に胃散ということもある。
[幸保文治]