(読み)げ

精選版 日本国語大辞典 「偈」の意味・読み・例文・類語

げ【偈】

〘名〙 (gāthā の音訳) 仏語経典中で、詩句形式をとり、仏徳賛嘆教理を述べたもの。四句から成るものが多いところから、単に四句ともいう。狭義には原始経典を分類した九分教・十二分教などの一つをさすが、広義には経の本文を重ねて韻文で説いた祇夜(ぎや)や、偈頌でない散文でも字数が三二字を一節とする首盧迦(しゅろか)なども意味する。伽陀(かだ)。偈他。諷誦(ふじゅ)。偈頌(げじゅ)。頌。偈陀
※勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章「第一有五行偈、正歎常住真実、願為帰依

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デジタル大辞泉 「偈」の意味・読み・例文・類語

げ【×偈】

《〈梵〉gāthāの音写偈佗げだ伽陀かだとも音写。句・じゅ諷頌ふじゅなどと訳す》仏語。経典中で、詩句の形式をとり、教理や菩薩ぼさつをほめたたえた言葉。4字、5字または7字をもって1句とし、4句から成るものが多い。頌。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「偈」の意味・わかりやすい解説


仏典における詩のこと。サンスクリットガーターgāthāの音写の省略形。正しくは伽陀(かだ)と音写し、漢語では頌(じゅ)あるいは讃(さん)とも翻訳される。古来インド人は詩を好む民族であるが、仏典においても、詩句でもって思想・感情を表現したものがすこぶる多い。これが漢語では、三言四言あるいは五言などの4句よりなる詩句で訳出される。たとえば、七仏通戒偈(しちぶつつうかいげ)「諸悪莫作(しょあくまくさ) 諸善(しょぜん)(衆善奉行(ぶぎょう) 自浄其意(じじょうごい) 是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」とか、無常偈「諸行無常(しょぎょうむじょう) 是生滅法(ぜしょうめつほう) 生滅滅已(しょうめつめつい) 寂滅為楽(じゃくめついらく)」とか、法身偈(ほっしんげ)「諸法従縁生(しょほうじゅうえんしょう) 如来説是因(にょらいせつぜいん) 是法従縁滅(ぜほうじゅうえんめつ) 是大沙門説(ぜだいしゃもんせつ)」などは、仏教の根本思想を簡潔に表現したものとして有名である。

高橋 壯]

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改訂新版 世界大百科事典 「偈」の意味・わかりやすい解説

偈 (げ)

サンスクリットのgāthāを音訳して偈陀(げた)・伽陀(かだ),意訳して偈頌(げじゆ),略して頌という。韻文で1句が五言,または七言で表現され,4句をもって一偈とするが,とくに長いものは重頌と称する。詩と同形であるが,その題材が仏教的であることを特色とする。禅宗では,禅僧が師家の啓発によって開悟したとき,その悟の心境を偈頌の形式をもって表現する。はやくは僧璨(そうさん)の《信心銘(しんじんめい)》,石頭希遷(せきとうきせん)の《参同契(さんどうかい)》など中国唐代の著にみとめられる。禅僧の語録は南宋以来その体裁を整えるが,語録には必ず偈頌が加わっていて,それには道号頌も含まれる。元の松坡宗憩(ずんばそうけい)撰の《江湖風月集》は有名な禅僧の偈頌集で,日本でも刊行され五山文学僧の範とされた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偈」の意味・わかりやすい解説



gāthā

頌 (じゅ) ともいわれ,一般に詩句のこと。仏教では経典や論書のなかに現れる韻文の部分をいい,ときには仏陀や菩薩をたたえる詩句をもいう。

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