借上(かしあげ)(読み)かしあげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「借上(かしあげ)」の意味・わかりやすい解説

借上(かしあげ)
かしあげ

鎌倉時代から室町時代初めの金融業者。高利、無担保で米銭を貸す。「かりあげ」「しゃくじょう」ともいう。借上の名は、古代~中世利息をつけて貸付を行った「出挙(すいこ)」の和訳で、「借」は「出」から、「上」は「挙」から生まれたことばであるとも、あるいは身分の高い者が低い者から借用したことからおこった名ともいう。

 鎌倉時代の貨幣経済の発達につれて出現し、『庭訓往来(ていきんおうらい)』に、「泊々借上(とまりとまりのかしあげ)、湊々替銭(みなとみなとのかえせん)、浦々問丸(うらうらのといまる)」とあるように、港町に多くみられた。本所領家(ほんじょりょうけ)も、地頭御家人(じとうごけにん)も、経済的窮迫のため借上から米銭を借り、そのかわりに彼らに所領からの年貢徴収をまかせることも行われた。この場合、借上を代官に任ずる形をとることが多いが、その結果負債に苦しみ、地頭職(じとうしき)を失う御家人もあったので、幕府は1239年(延応1)これを禁止したが効果なく、その後も盛んに行われた。当時「山僧(さんそう)・借上」と並び称せられたように、延暦寺(えんりゃくじ)の下級僧侶(そうりょ)である山僧には、借上を業とする者が多かった。また女性の借上もかなりいた。鎌倉時代後期から土倉(どそう)または土蔵とよばれる倉庫をもつ高利貸業者である土倉が現れ、室町時代には担保貸付を行う土倉の称が一般化した。

[清水久夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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