日本大百科全書(ニッポニカ) 「俵物(ひょうもつ)」の意味・わかりやすい解説
俵物(ひょうもつ)
ひょうもつ
一般的には近世中国向け商品として輸出された海産物をさすが、狭義には俵(たわら)包みされた煎海鼠(いりこ)・干鮑(ほしあわび)・鱶鰭(ふかひれ)の三色を、俵包みされない昆布(こんぶ)・鯣(するめ)・天草(てんぐさ)など他の諸色(しょしき)と区別して俵物と称した。「たわらもの」ともよんだが、長崎などでは「ひょうもつ」とよんでいた。海産物の中国向け輸出はすでに近世初期よりみられたが、それが江戸幕府の貿易政策のなかで公的性格をもつに至ったのは1698年(元禄11)以降である。もっともその背景としては、1684年(貞享1)の定高仕法(さだめだかしほう)公布以後、当時輸出品の中核的存在であった銅の流出激増を防止する対策として海産物が中国向け輸出品として登場して以降のことである。幕府は俵物会所を設け俵物集荷を行ったが成果はあがらず、さらに機構改革を行い全国的に集荷統制を行った。
[箭内健次]