保険契約者保護機構(読み)ホケンケイヤクシャホゴキコウ

デジタル大辞泉 「保険契約者保護機構」の意味・読み・例文・類語

ほけんけいやくしゃほご‐きこう【保険契約者保護機構】

保険会社破綻した場合に保険契約者保護するための仕組みとして、保険業法に基づいて設立された法人。平成10年(1998)12月発足。破綻会社から保険契約を引き継ぐ救済保険会社に資金援助等を行う。国内で営業するすべての生命保険会社および損害保険会社は、それぞれ生命保険契約者保護機構損害保険契約者保護機構への加入が義務づけられている。少額短期保険業者、再保険業務のみを行う保険会社、政令で定められた保険会社は加入義務がない。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「保険契約者保護機構」の意味・わかりやすい解説

保険契約者保護機構
ほけんけいやくしゃほごきこう

保険会社の破綻(はたん)時に、破綻保険会社と契約していた個人の保険を保護するため、1998年(平成10)12月にできた法人。生命保険会社と契約した個人のための「生命保険契約者保護機構」と、損害保険会社用の「損害保険契約者保護機構」がある。破綻保険会社の契約を引き継ぐ救済保険会社(受け皿会社)に資金援助し、救済保険会社が現れない場合、機構自体が契約を引き継いで保険金支払いなどを代行する。

 第二次世界大戦後初となる日産生命保険の破綻で、契約者は保険契約の継続は保証されたが、受け取る保険金額を大幅に削られる事態が生じた。このため政府は1996年に「保険契約者保護基金」制度を導入した。しかし、破綻保険会社の受け皿となる救済保険会社が現れない場合には保護基金が機能しない問題点があり、1998年の改正保険業法の施行で保険契約者保護機構の設立が決まった。つまり銀行預金者を保護する預金保険機構の「保険版」といえる。

 機構の保護対象となるのは再保険を除く、死亡保険生存保険、損害保険、疾病・傷害保険など。保険会社が保険金支払いのために積み立てている責任準備金の一定割合(死亡保険や生存保険は9割)を補償する。財源は保険会社からの負担金でまかない、足りない場合は借入れ(限度額は生命保険4600億円、損害保険500億円)で対応する。

 機構の支援金が枯渇した場合、生命保険契約者保護機構に限って、公的資金を使う仕組みが2009年3月末までの時限措置で認められていた。ただ2008年に起きた世界金融危機のあおりを受け、大和生命保険が破綻するなどの事態が生じたため、政府は公的資金活用の仕組みを2012年3月末まで延長した。

[矢野 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「保険契約者保護機構」の意味・わかりやすい解説

保険契約者保護機構【ほけんけいやくしゃほごきこう】

保険会社が破綻したとき,保険契約の移転などを円滑に行うために救済保険会社に資金援助するほか,救済会社が現れる見込みのない場合は,自ら破綻会社に係る保険契約の移転を受け,保険契約の管理・処分などを行うことによって保険契約者の保護を図る法人。1995年改正の保険業法で保険契約者保護基金として導入されたが,より広範な破綻処理策を行うこの機構が1998年12月,生命保険と損害保険でそれぞれ別個に発足した。保険会社はどこか一つの機構に加わることが義務づけられ,機構の資金は会員各社が負担する。生命保険契約者保護機構では,再保険を除く全保険契約を対象とし,責任準備金の90%が補償される。民間拠出金1000億円,公的資金枠4000億円の計5000億円が基金である。
→関連項目預金保険機構

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵 「保険契約者保護機構」の解説

保険契約者保護機構

1998年の保険業法改正に基づき、生命保険と損害保険のそれぞれに保険契約者保護機構(生命保険契約者保護機構/損害保険契約者保護機構)が設立された。保険会社が経営破綻した場合に保険契約者の保護を図り、保険業の信頼性を維持することが目的。生命・損害保険ともに、保険会社が破綻した場合の補償割合は、責任準備金(積立金)の90%。保険の種類によって、補償対象とならない場合もある。

(重川純子 埼玉大学助教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内の保険契約者保護機構の言及

【保険業】より

…これらの動きは従来からの,いわゆる保護行政が終わったことを意味する。 上記のような環境変化の結果,1997年に大蔵省は日産生命保険相互会社に対し,戦後はじめての業務停止命令を出した。それに伴い,新保険業法に基づく契約者保護基金制度を利用する処理策が出されたが,この制度は98年末により広範な破綻処理策である保険契約者保護機構に変わる。この機構は,生命保険と損害保険で別個につくられる保険業法で定められた法人で,保険会社の破綻に伴い保険契約の移転などの円滑な実施のため,救済保険会社に資金援助を行うほか,救済会社が現れる見込みのない場合においては,自ら破綻保険会社に係る保険契約の移転を受け,保険契約の管理および処分を行うことなどにより,保険契約者の保護を図るものである。…

※「保険契約者保護機構」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android