保守的プロテスタント(米国の)(読み)べいこくのほしゅてきぷろてすたんと/ほしゅてきぷろてすたんと

知恵蔵 の解説

保守的プロテスタント(米国の)

米大統領選挙の勝敗は、保守的プロテスタントが握っているといわれる。1980年にレーガン大統領が当選した頃から、ファンダメンタリズム(原理主義、根本主義)と呼ばれる保守的プロテスタントの存在が注目されるようになった。ファンダメンタリズムという名称は、現在ではイスラム原理主義代名詞として使われることが多いが、もともとは米国で1910〜15年に出版された『ファンダメンタルズ』という保守的プロテスタント運動のパンフレットに由来する。ファンダメンタリズムは、聖書の無謬性(誤りがないこと)を主張し、進化論や、聖書を古典的テキストとして分析しようとする聖書批判学に対する強い反発として登場した。20年代には、テネシー州で進化論を教えることを禁じた法律に違反した、生物学教師スコープスをめぐる裁判(別名:モンキー裁判)を頂点に運動が盛り上がった。60年代には、ベトナム戦争混乱の中、伝統的な価値観の復活を主張して活発な運動を展開した。70〜80年代には、ケーブルテレビを始めとする通信技術の発達と共に、主にテレビなどのマスメディアを利用した大規模な伝道活動を行うテレヴァンジェリスト(televangelist=テレビ伝道師)と呼ばれる人々が現れる。彼らの中から、79年にジェリー・ファルウェルの設立した政治的組織モラル・マジョリティや、89年にパット・ロバートソンが設立したクリスチャン連合(Christian Coalition)などが現れる。後者は、家族の価値の回復、中絶禁止、公教育での祈りの復活、進化論を教えることの禁止、ポルノ追放などを訴えている。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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