依網池・依網屯倉(読み)よさみいけ・よさみのみやけ

百科事典マイペディア 「依網池・依網屯倉」の意味・わかりやすい解説

依網池・依網屯倉【よさみいけ・よさみのみやけ】

大阪市住吉区にある大依羅(おおよさみ)神社周辺にあった古代の人工池および天皇直轄領。依網池は天皇の命により掘られたと伝え,池を含む一帯に依網屯倉が広がっていたとみられる。池については《日本書紀》崇神天皇62年10月条,推古天皇15年冬条,《古事記》崇神天皇段,仁徳天皇段,屯倉については《日本書紀》仁徳天皇43年9月条,皇極天皇元年5月条に記述があるが,池の築造年代,築造主体とも明確でなく,屯倉の起源も明らかではない。5世紀前半の仁徳朝から7世紀初頭の推古朝にかけてのころ,大王権力によって依網池を造り,農地を開拓して屯倉を設置し,〈依網屯倉阿弭古〉がその管理に当たったと考えられる。《和名抄》に,摂津国住吉郡大羅(おおよさみ)郷(大依羅神社のある住吉区南東部),河内国丹比(たじひ)郡依羅(よさみ)郷(現,大阪府松原市北西部),同郡三宅(みやけ)郷(現,松原市北部)がみえるが,依網屯倉はこれらの地にまたがる広大なものであったと推定できる(現,大阪府堺市の北東部にも及んでいたとする説もある)。池は大依羅神社の近くにいまも〈依網池〉があり,痕跡と考えられる。《万葉集》巻7(施頭歌)の柿本人麻呂の歌に詠み込まれている〈依網の原〉は,依網池周辺の原とされる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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