依怙(読み)えこ

精選版 日本国語大辞典 「依怙」の意味・読み・例文・類語

え‐こ【依怙】

〘名〙
① 頼ること。頼むこと。また、頼るべきもの。頼りにするもの。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※右記(1192)「厥友邪必其人邪也。厥友正必其人正。依怙心相移故云々」 〔法華経‐譬喩品〕
一方にかたよってひいきすること。えこひいき
平家(13C前)五「庁の下部(しもべ)の習ひ、かやうの事につゐてこそ、自らの依怙も候へ」
※集義和書(1676頃)一六「依怙なくすみやかに決断すれば、世間にほまれ有て、立身することあり」
自分利益。私利。また、わがまま
※甲斐大善寺文書‐建久八年(1196)一〇月日・甲斐柏尾大衆等解案「就中於寺内更無一分依怙。僅堂舎菴室居所計也」
曾我物語(南北朝頃)一「一旦のゑこに住すとも終には天罰降り来り」
[語誌]漢語本来の意味①から転じた②③の意で多く用いられる。「贔屓(ひいき)」も本来は「大いに力を入れること」の意であったものが対象が限定されることによって「自分の気に入った者に特に力添えすること」の意に転じ、「依怙」「贔屓」がほぼ同じ意になり、重ねて用いる用法も生じたと思われる。

い‐こ【依怙】

〘名〙 公平でないこと。不公平。えこ。
随筆・孔雀楼筆記(1768)一「ただ儒者の依怙(イコ)甚しきを笑のみ」

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デジタル大辞泉 「依怙」の意味・読み・例文・類語

え‐こ【依×怙】

一方だけをひいきにすること。不公平。えこひいき。
「あながち―の沙汰にはあたるまいと信じます」〈里見弴多情仏心
頼ること。また、頼りにするもの。
父母に早く別れて、まさに人の―なし」〈地蔵菩薩霊験記・一〉
自分だけの利益。私利。
「謀リヲモッテ人ヲ誑ラカシ、己ガ―ヲ尋ネウ者ワ」〈天草本伊曽保獅子と馬〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「依怙」の読み・字形・画数・意味

【依怙】いこ・えこ

頼りにする。魏・明帝〔櫂歌行〕楽府 哀しい哉、王土の民 瞻仰するも依怙するところ無し 国語では、えこひいき。

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