佳人之奇遇(読み)かじんのきぐう

精選版 日本国語大辞典 「佳人之奇遇」の意味・読み・例文・類語

かじんのきぐう【佳人之奇遇】

長編小説。全八編一六巻。東海散士作。明治一八~三〇年(一八八五‐九七)刊。アメリカ留学中の日本人東海散士とスペイン革命に失敗した将軍の娘幽蘭アイルランド独立運動の亡命者紅蓮との交情を通して、各国民族独立運動情熱を描いた、政治小説代表作

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デジタル大辞泉 「佳人之奇遇」の意味・読み・例文・類語

かじんのきぐう【佳人之奇遇】

東海散士の政治小説。全8編。16冊。明治18年~30年(1885~97)刊。米国留学中の東海散士とスペイン革命に失敗した将軍の娘幽蘭、アイルランド独立運動の亡命者紅蓮との交友を通して、各国の民族独立運動の情熱を描く。

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改訂新版 世界大百科事典 「佳人之奇遇」の意味・わかりやすい解説

佳人之奇遇 (かじんのきぐう)

東海散士の長編小説。1885-97年(明治18-30)刊。全8編,未完。物語はフィラデルフィアの独立閣で,アメリカの独立戦争に思いを馳せていた東海散士が,スペインのドン・カルロス党の幽蘭(ユーラン),アイルランド独立運動に献身する紅蓮(コーレン)の2佳人をかいま見るところにはじまり,ほのかな恋情がかもしだされる彼らの別離邂逅(かいこう)のあわいに,中国,エジプトハンガリーポーランドなど,ヨーロッパ列強の帝国主義の犠牲に供された,弱小民族の悲史が語られる。漢文体を下敷きにした華麗で格調高い文体を借りて,自由と独立を求めてやまない政治的ロマン主義がうたいあげられている。矢野竜渓の《経国美談》とならぶ明治政治小説の傑作である。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「佳人之奇遇」の解説

佳人之奇遇
かじんのきぐう

東海散士(さんし)の長編政治小説。1885年(明治18)10月の初編以降,97年10月の8編まで博文堂から刊行。物語はアメリカ遊学中の日本の青年東海散士が,スペインの王党と闘う幽蘭(ユーラン),アイルランド独立運動の闘士紅蓮(コーレン)の2佳人に出会い,ヨーロッパ列強下にある弱小民族の自由と独立のために連帯することを誓いあうことに始まり,19世紀後半の世界を舞台に,壮大なスケールで彼らの活躍が展開する。国権論を背景とした後期政治小説の代表。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「佳人之奇遇」の意味・わかりやすい解説

佳人之奇遇
かじんのきぐう

東海散士の長編小説。8編。 1885年から 97年にかけて断続して発表された。アイルランドの独立運動に挺身する美女や中国明朝の遺臣など,いずれも祖国を失った亡国の民に,同じく旧会津藩の運命を痛恨する東海散士を配し,波乱のロマンを展開しながら作者の政治思想を吐露する。世界の亡国の歴史に託して日本の危機を語るというモチーフも切実で,明治初期政治小説の代表作の一つ。

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旺文社日本史事典 三訂版 「佳人之奇遇」の解説

佳人之奇遇
かじんのきぐう

明治時代,東海散士の政治小説
初編を1885年に刊行して以後断続して書き継ぎ,最後の8編は'97年に及んだ長編小説。専制支配下に衰亡した祖国を復興するため,憂国の青年・美女が世界を舞台に活躍する筋。

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世界大百科事典(旧版)内の佳人之奇遇の言及

【アイルランド】より


【住民,言語】
 住民はケルト系であるが,バイキング,ノルマン,アングロ・サクソンなどの長年にわたる移住に伴い混血が繰り返されたため,アイルランド人特有の身体的特徴は見られない。赤毛を特徴とすると伝えられることが多く,日本でも東海散士が《佳人之奇遇》第3編(1886)の中でアイルランド女性の描写に赤髪と記しているが,統計上は人口の4%程度である。人口分布は地域により格差が大きく,首都ダブリンと肥沃な農耕地帯を有する東部のレンスター地方は比較的人口が多く,西部の牧草地帯を主とするコナハト地方はひじょうに少ない。…

【政治小説】より

…古代ギリシアのテーベの勃興に素材を求めたこの作品は一種の歴史小説で,前編ではテーベにおける民主政治の回復,後編ではスパルタを打ち破って国威を発揚するまでの経緯が巧みな話術で語られている。《経国美談》と並び称される政治小説の傑作,東海散士の《佳人之奇遇》(1885‐97)は,スペインの幽蘭(ユーラン),アイルランドの紅蓮(コーレン)の2佳人を配した浪漫的な叙事詩ふうの作品であるが,作者が力をこめて語る帝国主義の犠牲に供された弱小民族の悲史と自由と独立を求めてやまない彼らの熱情は,同時代の青年から熱狂的に支持された。《佳人之奇遇》についであらわれた政治小説は,民権運動の敗北と国会開設への楽天的な期待を背景に,政治的主張はうすめられ,写実的な傾向が目立つようになった。…

【東海散士】より

…79年岩崎家の援助をうけて渡米,ハーバード大,ペンシルベニア大で経済学を専攻する。85年の帰国をきっかけに,滞米中に想を得た政治小説《佳人之奇遇》(1885‐97)を公刊,弱小民族のナショナリズムをうたいあげた格調高い叙事詩ふうの文章が,青年読者から熱狂的に支持された。その後,谷に随行して外遊,条約改正にたいする反対運動を展開するが,中年以降は,進歩党,憲政党の幹部として,政治活動に専念した。…

※「佳人之奇遇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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