何方(読み)ドチラ

デジタル大辞泉 「何方」の意味・読み・例文・類語

どち‐ら【方】

[代]
不定称の指示代名詞
㋐不明または不特定の方向・場所をさす。「何方へおいでですか」「お住まいは何方ですか」
㋑複数の中から一つだけを、限定しないまま、取り立ててさす。「何方がお好きですか」「何方とも言えません」「私には何方も必要です」
不定称の人代名詞
㋐(多く「どちらさま」の形で)不明または不特定の人をさす。「失礼ですが、何方さまですか」「何方さまもお忘れ物のないように願います」
㋑複数の中から一人だけを、限定しないまま、取り立ててさす。「何方がお姉様ですか」「テニスをなさるのは何方ですか」「何方も存じ上げません」
[類語](1どっちいずかた何処どこいずこどこらどこいらどの辺どこやらいずれどこかどこそこ某所某地/(2どなた何者・どの方・どの人・どいつ何奴何人・誰か・誰かさん・どなたか・誰か彼か

どっ‐ち【方】

[代]《「どち」の促音添加》
不定称の指示代名詞。「どちら」よりもややくだけた感じの語。
㋐「どちら1㋐」に同じ。「交番は何方ですか」
㋑「どちら1㋑」に同じ。「何方でもいい方を買ってやるよ」
不定称の人代名詞。「どちら2㋑」に同じ。「何方が年上ですか」
[類語]何処どこどこそこいずこどこらどこいらどの辺どこやらいずかたどちらいずれどこか某所某地

いず‐かた〔いづ‐〕【何方】

[代]
不定称の指示代名詞。
㋐どちら。どこ。
「―に求め行かむ」〈伊勢・二一〉
㋑どれ。いずれ。
「―をも捨てじと心にとりもちては、一事も成るべからず」〈徒然・一八八〉
不定称の人代名詞。どなた。どちらさま。
「男も女も、―も、ただ同じ御心のうちに」〈堤・思はぬ方にとまりする少将
[類語]何処どこどこそこいずこどこらどこいらどの辺どこやらどちらいずれどっちどこか某所某地

ど‐な‐た【方】

[代]
不定称の人代名詞。「だれ」の意の尊敬語。「あの方は何方ですか」「何方かおいででしょうか」
不定称の指示代名詞。どの方向。どちら。
「―へ参らうずると」〈虎明狂・東西迷〉
[類語]何者・どの方・どの人・どいつ何奴どちら何人・誰か・誰かさん・どなたか・誰か彼か

いず‐ち〔いづ‐〕【方】

[代]不定称の指示代名詞。どっち。どこ。
「たらちしの母が目見ずておほほしく―向きてかが別るらむ」〈・八八七〉

ど‐ち【方】

[代]《「いづち」の音変化》不定称の指示代名詞。どっち。どちら。
「皆々―へおぢゃる」〈虎明狂・悪坊〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「何方」の意味・読み・例文・類語

どち‐ら【何方】

〘代名〙 不定称。
① 不特定の場所、方角を示す。どち。
浄瑠璃女殺油地獄(1721)上「かう行けば野崎大坂はどちらやら方角がない」
人情本・春色梅児誉美(1832‐33)四「ハイどちらからお出なさいました」
② 不特定の人を示す。「たれ(誰)」に相当する丁寧な言い方。
狂言記粟田口(1660)「上京にあね、下京に妹をもって御ざるがどちらにもめな子が御ざるによって」
歌舞伎お染久松色読販(1813)序幕「『これこれ、隣の座敷はどこの客じゃ』『どちらでござりますか、私は存ませぬ』」
③ 複数のもの、特に二つの中から、限定しないまま、そのうちの一つをとりたててさす。どち。
※浄瑠璃・淀鯉出世滝徳(1709頃)上「どちらへ似ても蛇の子孫
※宝の山(1891)〈川上眉山〉一「『何方(ドチラ)空樽』と尋ぬれば」

いず‐かた いづ‥【何方】

〘代名〙 不定称。
① 方向を表わす。どの方向。どちら。どっち。
伊勢物語(10C前)二一「いづかたに求め行かむと、門(かど)に出でて、と見かう見みけれど」
② 事物を表わす。なに。どれ。
※源氏(1001‐14頃)藤袴「いづかたのゆゑとなむ、えおぼし分かざめりし」
③ 場所を表わす。どこ。
徒然草(1331頃)九五「箱のくりかたに緒を付くる事、いづかたに付け侍るべきぞ」
④ 人を表わす。どなた。どちらさま。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「いづかたもいづかたも、ことごとしかるべき官(つかさ)ながら」

どっ‐ち【何方】

〘代名〙 (「どち(何方)」の変化した語) 不定称。多く、複数のものの中からの選択を示す。「どちら」よりくだけたいい方。
① 場所、方角など、いくつかの中の一つをさす場合。
雑兵物語(1683)下「鑓担はどっちへつんぬけたかかいくれ見へない」
② 二つの事物や人物からの選択を示す場合。
※巨海代抄(1586‐99)上「どっちが本源共どっちが末派共難分」
※みごとな女(1934)〈森本薫〉「それに頭も悪くない、どっちかといえば優秀です」

いず‐ち いづ‥【何方】

〘代名〙 (「ち」は場所を示す接尾語) 不定称。不定の方向、場所を表わす。
※万葉(8C後)五・八八七「たらちしの母が目見ずておほほしく伊豆知(イヅチ)向きてかあが別るらむ」
※平家(13C前)一一「尼ぜ、われをばいづちへ具してゆかんとするぞ」
[補注]上代には「いづく」が不定の場所、「いづち」が不定の方向という使い分けがなされていた。上代、平安期を通じて第一例のように助詞を伴わずにそのままで副詞的に使われる。

ど‐ち【何方】

〘代名〙 (「いづち」の変化したもの) 不定称。
① 不特定の場所、方角を示す。どちら。どっち。
※名語記(1275)三「人をどちゆくぞととへる、どち、如何。これは、いづちといふが、どちとなる也」
② 複数のもの、特に二つの中から、限定しないままそのうちの一つをとりたててさす。どちら。
※史記抄(1477)六「御内とは、どちが少く、どちが長じたぞと云心なり」

いずれも‐がた いづれも‥【何方】

〘代名〙
① 近世語。他称。複数の上位者を指す。
② 近世語。対称。複数の上位者を指す。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「ヤ、今日はいづれも方の幸(さいはひ)の参会でござる」
[補注]「いずれもさま」と同じとする説もあるが、「いずれもがた」の方が敬意が軽いと考えられる。

ど‐な‐た【何方】

〘代名〙 不定称。
① 方角をさす。どちら。
※保元(1220頃か)上「是れは何れの国よりどなたへ参ずる人ぞ」
② 人をさす。「だれ」の意の尊敬語。
※虎明本狂言・悪坊(室町末‐近世初)「どなたでござるぞといふていづる」

どっち‐ら【何方】

〘代名〙 「どちら(何方)」の変化した語。
※俳諧・広原海(1703)一「離魂病(かげやみ)の妻どっちらも去うやら〈翠簾〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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