何処(読み)いずこ

精選版 日本国語大辞典 「何処」の意味・読み・例文・類語

いず‐こ いづ‥【何処】

〘代名〙 (「いずく」の変化した語) 不定称。場所を表わす。平安時代から用いられた。どこ。
神楽歌(9C後)採物「本 この杖は 伊津古(イつコ)の杖ぞ 天にます 豊岡姫の 宮の杖なり」
読本春雨物語(1808)樊噲上「いづこより来たる。あやしき男也」
[語誌]和文資料では場所を問う用法に限定されるが、平安期の訓点資料には「いづくにか・いづこにか・いづくにぞ・いづこにぞ」のような形で、理由を問う用法が現われる。特に「ぞ」を伴う形には場所を問う用法はなく、「いづくんぞ」などの訓点語を生みだした。

いず‐く いづ‥【何処】

〘代名〙 (「く」は場所を表わす接尾語) 不定称。場所を表わす。「いづこ」の古形だが、平安時代以後も併用された。どこ。
古事記(712)中・歌謡「この蟹や 伊豆久(イヅク)の蟹 ももづたふ 角鹿(つぬが)の蟹 横去らふ 伊豆久(イヅク)に到る」
歌舞伎・傾城仏の原(1699)二「『いづくへも立退かん』ト打ちつれ出でんとしたりしが」

いど‐こ【何処】

〘代名〙 (「いづこ」の変化したもの) 不定称。「どこ」の古形。
※三条西家本土左(935頃)承平五年一月二九日「『ここやいどこ』ととひければ、『とさのとまり』といひけり」

どっ‐こ【何処】

〘代名〙 「どこ(何処)」を強めた、俗ないい方。
※杜詩続翠抄(1439頃)七「とっこまでも遠く行んず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「何処」の意味・読み・例文・類語

ど‐こ【処/所】

[代]《「いづこ」の音変化「いどこ」がさらに変化した語》不定称の指示代名詞。はっきりと指示できない場所や状況などをさす。
どの場所。どの部分。どんなところ。「―へ行こうか」「―が悪かったのか」
どのような程度。どのような段階。どれ程。「―まで本気なのか」「仕事は―まで進んでいるのか」「―も痛くない」
[類語]いずこどこらどこいらどの辺どこやらいずかたどちらいずれどっちどこかどこそこ某所某地

いず‐こ〔いづ‐〕【処】

[代]《「いずく」の音変化で、平安時代以降の語》不定称の指示代名詞。どこ。
「むかしの光いま―」〈晩翠荒城の月
[類語]どこどこそこどこらどこいらどの辺どこやらいずかたどちらいずれどっちどこか某所某地

いず‐く〔いづ‐〕【処】

[代]《「いずこ」の古形》不定称の指示代名詞。どこ。
「―より来りしものそ」〈・八〇二〉

いど‐こ【処】

[代]《「いずこ」の音変化》「どこ」の古形。
「ここや―と問ひければ」〈土佐

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普及版 字通 「何処」の読み・字形・画数・意味

【何処】いず(づ)こ

どこ。唐・杜甫〔牛頭寺に上る〕詩 何れの處か、鶯(あうてい)切(しき)りなり 時を移して獨り未だ休(や)まず

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