佐平(読み)さへい

改訂新版 世界大百科事典 「佐平」の意味・わかりやすい解説

佐平 (さへい)

朝鮮古代の百済の官制。百済の官位16等制の第1等官位名であるとともに,中央の最上級官庁の長官名でもある。佐平の設置時期を《三国史記》では260年とするが,中国史料では6世紀以降とする。百済末期には上佐平・大佐平の最高官職名があらわれるが,それまでは次の六佐平制であった。(1)内臣佐平 王命の伝達上奏の取りつぎなどを行う首相。(2)内頭佐平 国庫を管理する大蔵大臣。(3)内法佐平 儀礼関係の責任者で,宮内大臣に当たるか。(4)衛士佐平 王の身辺を護衛する近衛大将。(5)朝廷佐平 刑罰監獄のことをつかさどる法務大臣。(6)兵官佐平 宮廷外の軍事をつかさどる国防長官。六佐平制度からもわかるように,百済の政治組織は,高句麗,新羅より整備されていた。しかし,祭政一致的な選挙方法で宰相が選出され,王族の活躍も目だつが,大姓八族といわれる貴族たちが中心になっていた。この六佐平制度も貴族連合体制での行政実務の分担制とみられる。
百済
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の佐平の言及

【百済】より

… 百済では三国抗争の激化に伴って,中央集権的体制を取る必要に迫られ,泗沘遷都を契機に領主的貴族制を脱皮し,中央集権的な宮廷貴族制に移行した。その政治体制は前代までと同様,貴族連合体制を維持し,中央官制は内臣佐平(首格),内頭佐平(大蔵大臣格),内法佐平(宮内大臣格),衛士佐平(近衛大将格),朝廷佐平(法務大臣格),兵官佐平(軍務大臣格)の六佐平を頂点に,内官・外官の官職も整備された。これらの運営には貴族の合議制・請負制をとっていた。…

※「佐平」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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