佐州水替人足(読み)さしゅうみずかえにんそく

改訂新版 世界大百科事典 「佐州水替人足」の意味・わかりやすい解説

佐州水替人足 (さしゅうみずかえにんそく)

江戸幕府無宿対策の一つとして,逮捕した無宿を佐渡に送り,金銀山の水替労働に使役した制度。1778年(安永7)老中田沼意次の幕閣のもと,元佐渡奉行の提案により,逮捕した悪質の無宿を懲らしめのため佐渡に送ったのが最初である。年齢は20~40歳程度,鉱山谷間矢来で囲った136坪余の水替小屋場に収容し,人数は200人前後であった。小遣銭を支給し,原則として無期であるが,改悛の情が顕著であれば放免することもあった。1790年(寛政2)人足寄場成立後は悪質の規律違反者も送り,1805年(文化2)からは有宿,無宿を問わず追放刑の宣告を受けた悪質者も送致したから,刑罰的要素が強くなった。矯正よりも労働力の利用と無宿への威嚇およびその排除を目的とする保安処分的施設に終始し,その労働は〈必死の刑〉といわれるほど過酷で逃亡者が多かった。島からの逃亡を〈乗逃(のりにげ)〉といって佐渡で死罪とした。
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世界大百科事典(旧版)内の佐州水替人足の言及

【無宿】より

…無宿には大別して,無宿野非人(のひにん)と呼ばれる乞食,物もらいのような存在と,もうひとつは長脇差を差した浪人体の者や博徒的存在の者があった。無宿人が江戸などの都市およびその近在に多数徘徊し,社会不安を起こすようになったのは18世紀後半の田沼時代からで,幕府は1778年(安永7)無宿人を捕らえて再犯のおそれある者は懲らしめのため佐州水替人足(佐渡金山の水替人足)に使役することを始め,以来数次にわたり長崎,大坂などの無宿を含めて佐渡送りにしている。また1790年(寛政2)には火付盗賊改長谷川平蔵の建議によって,無罪の無宿人に生業を与えて更生させるための施設として江戸佃島に人足寄場(にんそくよせば)を設け,油絞りなどの手業を習役労働させ,身元引受人さえあれば出所を許した。…

※「佐州水替人足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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