伝播論(読み)でんぱろん(英語表記)diffusionism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伝播論」の意味・わかりやすい解説

伝播論
でんぱろん
diffusionism

民族学の進化論などに対する批判から発生した学説で,異なる文化間の類似や文化の歴史を文化の伝播としてとらえ,解釈する立場文化伝播主義ともいう。文化要素の地理的分布手掛りに,文化史の再構成を目指して 19世紀末から 20世紀前半に盛んになった。2つの学派に大別される。 L.V.フロベニウス,F.グレーブナー,W.シュミットに代表されるドイツ,オーストリアの歴史民俗学者たちは,遠隔地に類似した文化要素があるのは,一つの中心に発生した文化が伝播したためであるという文化圏・文化層説に基づいて人類文化史の再構成を試みた。一方イギリスの G.E.スミスや W.J.ペリーらは,古代文化はすべて古代エジプトで発生し,それが世界中に広まったという極端な伝播論を展開した。この説は現在では誤りとされ,伝播論は実証性に乏しいという批判も多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android