仙北(市)(読み)せんぼく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「仙北(市)」の意味・わかりやすい解説

仙北(市)
せんぼく

秋田県中東部に位置する市。2005年(平成17)、仙北郡角館町(かくのだてまち)、田沢湖町、西木村(にしきむら)が合併、市制施行して成立。東部は秋田駒ヶ岳(こまがたけ)など奥羽山脈がそびえ、西部は出羽山地市域の約8割が森林地帯で占められている。中央部に日本でもっとも深い湖の田沢湖があり、その東側を玉川、西側を檜木内(ひのきない)川が南流、横手盆地に入り、市域の南端で合流する。JR田沢湖線(秋田新幹線)が通じ、角館駅で秋田内陸縦貫鉄道を分岐する。国道46号、105号、341号が通じる。

 市域の中世戸沢氏の支配を受け、江戸時代は秋田藩佐竹氏領。東部は豪雪地帯で、水力発電所が多く設置されている。林業が盛んでシイタケナメコ、クリなどを産する。北東部は十和田八幡平(はちまんたい)国立公園に含まれ、乳頭(にゅうとう)温泉郷、玉川温泉や、県立自然公園の田沢湖、抱返(だきがえり)渓谷、さらに「あきた芸術村」、スキー場など、観光資源が豊富である。秋田駒ヶ岳高山植物帯は国の天然記念物。玉川温泉の北投石は特別天然記念物。南部の角館は江戸時代には交通の要衝で、佐竹北家が所預(ところあずかり)となり、城下町では支藩的な行政が行われた。現在に至るまで当時の景観が残されており、表町などが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。「みちのくの小京都」とよばれ観光客も多い。角館のシダレザクラ153本は国指定天然記念物、檜木内川堤(サクラ)は国の名勝。角館祭りのやま行事(飾山囃子(おやまばやし))は国の重要無形民俗文化財で、山・鉾・屋台行事としてユネスコの無形文化遺産に登録。国指定の伝統的工芸品として樺細工(かばざいく)が知られている。江戸時代、西部の山地久保田(秋田市)近辺への薪の供給地で、また、藩財政にとって重要なスギ、ヒノキなどを産した。農業は米作中心で、肉用牛の肥育も行われている。西明寺グリを特産する。県の無形民俗文化財「戸沢ささら(獅子舞)」が残る。灯火を利用して巨大な紙風船を飛ばす「紙風船上げ」は冬の年中行事としてよく知られている。面積1093.56平方キロメートル、人口2万4610(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android