付合(読み)フゴウ

デジタル大辞泉 「付合」の意味・読み・例文・類語

ふ‐ごう〔‐ガフ〕【付合/附合】

くっつけること。つけあわせること。
異なった所有者に属する2個以上の物が結合し、分離されると経済上著しく不利益をもたらすため、1個の物と認められること。動産不動産の付合の場合は原則として不動産の所有者が、動産どうしの付合の場合は主たる動産の所有者が所有権を取得する。

つけ‐あい〔‐あひ〕【付合】

連歌・俳諧で、五・七・五の長句と七・七の短句を付け合わせること。先に出される句を前句、これに付ける句を付句という。
1で、前句と付句を関係づける契機となる語句。寄合よりあいよりも広く、素材・用語のほか、情趣・心情などを含む。

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精選版 日本国語大辞典 「付合」の意味・読み・例文・類語

つけ‐あい ‥あひ【付合】

〘名〙
① 連歌や俳諧などで句を付ける時の契機とする語句で、前句の中のことば、題材や心情と関係のあるもの。寄合が用語、題材など形式的なものに関係があるのに対して、もっと広く情趣、心情など内容的なものまでをさす。付物(つけもの)
※十問最秘抄(1383)「又、付合は十方より取り寄るべき也、皆人近日一方よりよるやうに見ゆ、しかるべからず」
② 連歌や俳諧や雑俳などで、前句に次の句を付けること。前句に対して付句(つけく)の付け方の意味から前句と付句を総称していう。
※長短抄(1390頃)中「連歌の付合様々也、注するに及ばず」
③ 遊里で、遊女が客のことばや心に相応の挨拶(あいさつ)を返すこと。
評判記難波鉦(1680)四「前句付合(ツケアイ)関言葉」

つけ‐あわ・せる ‥あはせる【付合】

〘他サ下一〙 つけあは・す 〘他サ下二〙
① 二つ以上のものを寄せて離れないように合わせる。くっつける。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② 関係のあるものを添えあしらう。他のものを並べ加える。配合する。配置する。特に料理で、主となる魚・肉などに、味や香り、栄養などのバランスがよくなるよう、野菜などを添える。
③ 二つのものをひきくらべその間の異同をしらべる。つきあわせる。
連俳で、前の句に付けて次の句をよむ。
※俳諧・聞書七日草(1716‐36頃)「松浦御息女を盗み、飛鳥井の君などをうばい取たる心ばへも、つくし人のよそほひに便て付合せたるは、船の茶の湯を打たる響なり」
⑤ 取引市場で取引所の会員が、売注文と買注文を組み合わせて取引所を通さず、店頭で売買を成立させる。〔大坂繁花風土記(1814)〕

つき‐あ・う ‥あふ【付合】

〘自ワ五(ハ四)〙
① 互いにくっつく。両方からくっつく。
② 交わる。交際する。
※羅葡日辞書(1595)「Forum〈略〉ハウバウノ アキビトノ tçuqivǒ(ツキワウ) トコロ
※通俗古今奇観(1814)四「彼と往来(ツキアフ)ものはすべて大頭児(おほあたま)
③ 行動をともにする。また、仕方なく相手とともに行動する。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)三「帰り道で胡椒を買はねへきゃアならねへ、おつき合(ヤイ)ナ」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉三「野暮をいはないでつきやひたまへ」

つき‐あい ‥あひ【付合】

〘名〙
① つきあうこと。互いにつくこと。
※俳諧・伊勢山田俳諧集(1650)「しらみうつれるきぬきぬの袖 方々のつきあひなりし舟の内〈孝晴〉」
② 人と交わりをもつこと。交際すること。また、行動をともにすること。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※虎明本狂言・口真似(室町末‐近世初)「あの人にはつき合もなひすいきゃう人じゃものを」
③ 人と交わるのに必要な心得。他人との関係の上で守らなければならない義理
※雑俳・柳多留‐九(1774)「つき合を御ぞんじないと母にいひ」
洒落本・青楼女庭訓(1823)春「千歳屋はほんのお突(ツキ)あひで、入らっしたうへの事だから」

つけ‐あわせ ‥あはせ【付合】

〘名〙
① 他のものを添えること。また、そのもの。特に料理で、主になる魚や肉に添える野菜や、酸味、香味のあるもの。
怪談乳房榎(1888)〈三遊亭円朝〉一一「折へ詰めてちょっと附合(ツケアハ)せも成丈(なりたけ)腐らぬものを」
② 二つのものをひきくらべ、異同の有無をしらべること。つきあわせ。
③ 取引市場で取引所員が客の売注文と買注文のうち銘柄・期限などが同一のものを組み合わせて、市場に出さずに売買を成立させること。つきあわせ。〔取引所用語字彙(1917)〕

くっつき‐あい ‥あひ【付合】

〘名〙 男女が、正式な手続きを踏まないで夫婦になること。また、その夫婦。できあい。できあい夫婦。くされあい。くっつき。くっつきもの。
※人情本・春秋二季種(1844‐61頃)二「くっつき合(アヒ)とは云ものの半七さんを亭主と極てゐる吾のことでございますから」

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改訂新版 世界大百科事典 「付合」の意味・わかりやすい解説

付合 (つけあい)

連歌・俳諧用語。〈寄合(よりあい)〉と同義に用いることもあるが,普通には17音節(5・7・5)の長句と14音節(7・7)の短句を,ことば,意味,情趣などを契機として付け合わせたもの,また交互に付け連ねることをいう。付合の集積によって成立した連句文芸では,発句(ほつく)以外の句をすべて付句(つけく)と呼ぶが,2句一章の最小単位では,付けられる句を前句,付ける句を付句と称する。前句が長句,付句が短句の付合は短歌に似るが,前句が独立しつつも蓋然性に富む意味内容をもち,その判断を付句の作者の読みにゆだねるという点で,短歌とはまったく異なる。付合とはいわば創作と鑑賞の複合行為であり,付合という用語そのものが封建時代の割拠的な社会における仲間との付き合いを語源とするとおり,相互扶助の生活共同体を母胎とする精神共同体の産物であった。付合にはさまざまな類型と手法があり,連歌の時代,すでに15体(二条良基著《連理秘抄》),80体(伝宗祇著《連歌諸体秘伝抄》)等と細分化されていた。芭蕉らの俳諧時代においても,ことば,意味をそれぞれ付合の契機とする〈物付(ものづけ)〉〈心付(こころづけ)〉のほか,余意,余情による〈移り〉〈響き〉〈匂ひ〉〈位(くらい)〉〈俤(おもかげ)〉〈推量〉などの名目が見いだされる。芭蕉自身にも〈付句十七体〉の伝授があったという(《去来抄》)。しかし,細分化し複雑化した付合も,煮つめれば,〈奥山に船漕ぐ音は聞ゆ也/なれる木のみやうみ渡るらん(紀貫之)〉(《菟玖波集》)のような,ことばの応接による単純な謎解き問答体を原初の風体とする〈親句(しんく)〉と,〈青天に有明月の朝ぼらけ(去来)/湖水の秋の比良のはつ霜(芭蕉)〉(《猿蓑》)のような,余情豊かな景曲体を典型とする〈疎句(そく)〉の2体に整理される。付合文芸の2系列である連歌も俳諧も,その歴史は親句から疎句への推移としてとらえられる。それはそのまま,付合の詩的深化を物語るのである。
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付合 (ふごう)

法律上,所有者を異にする数個の物が結合され,社会的・経済的にみて新たな一個の物が成立したとみられること。たとえば,A所有地上にBがその所有する種苗を植え付ける,A所有建物につきBが増改築をするなどの場合,不動産に対し動産(種苗,建築材料)が付合したのであり,A所有の宝石または漁船にB所有のプラチナ台または発動機を,こわさなければ分離しえない程度に結合させる場合には,動産と動産が付合したのである。付合が生ずると,複数の物が一個の物となるゆえ当然その所有関係は異なってくる。不動産の付合では,不動産所有者Aが従として付合した動産の所有権を吸収取得し,その結果Bは所有権を喪失する(民法242条本文)。ただし,Bに地上権とか賃借権とかの権原(法律的・事実的行為をすることを正当とする法律上の原因)があり,それに基づいて動産を付属せしめた場合には,付属した物がなお独立の所有権の客体たりうる限り(土地に樹木を植栽したとか,建物増築部分が区分所有権(〈建物の区分所有〉の項参照)の客体たる独立性を有するときなど),付合が生ぜず,Bはなおその物に対する所有権を留保する。権原に基づき播植した種苗が生育し独立性を有するに至ったときも同様である(242条但書)。動産の付合の場合は,新たな一物(合成物)の所有権は主たる動産の所有者が取得する(243条)。しかし,主従の区別ができないときは,各動産の所有者は付合当時の価格割合に応じて合成物を共有する(244条)。なお,以上の付合により物の所有権を喪失した者は,新たな一物の所有権を取得した者に対し,償金を請求しうる(248条)。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「付合」の意味・わかりやすい解説

付合
つけあい

連歌,俳諧の用語。 (1) 連歌,俳諧で,5・7・5の長句に対して7・7の短句を,または7・7の短句に対して5・7・5の長句を付け合せること。またはそのようにして付け合された2句一組のこと。その先行する句を前句 (まえく) ,あとの句を付句 (つけく) という。付け方により,心付 (こころづけ) ,物付 (ものづけ) ,詞付 (ことばづけ) ,匂付 (においづけ) などさまざまの名がある。 (2) 付句のなかの物とか詞とかが,前句のなかの物とか詞とかに一読して関係のあることがわかるもの。たとえば松に鶴,柳に燕のように詩歌,故事,伝説などによって連想されるものなど。

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