仁義(博徒・香具師)(読み)じんぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「仁義(博徒・香具師)」の意味・わかりやすい解説

仁義(博徒・香具師)
じんぎ

博徒・香具師(やし)などの初対面挨拶(あいさつ)をさす。その挨拶を互いに行うことを「仁義を切る」という。口上(こうじょう)として、いろいろな文句がみられるが「お控えなさい」ということばをしばしば述べることは共通している。前口上をいったあと、たとえば「手前生国(しょうこく)と発しまするは江戸にござんす。江戸と申しても広うござんす」といって、江戸の具体的な出生地を述べる。そのあと、自分の属する親分の一家名をいってから、「手前姓名を発しまするは失礼にござんす。何の何々」と本人の名前を相手に告げ、「面体(めんてい)お見知りおきのうえ、向後万端(きょうこうばんたん)よろしくおたのもうしやす」とひととおりの口上をいう。相手も「申し遅れまして失礼さんにござんす」と断り、同じように生国、名前などを順次述べていく。

 口上をいうのには、体を斜めに構え、頭をすこし下げ、右手を前に出し、相手の顔を見る、という独特のポーズで行う。一気に述べるようにし、ことばの詰まることや、言い間違えは本人の恥となり、相手に軽くみられる。熟練した者は、美辞麗句形容を上手に入れ、耳ざわりのよい口上を述べて相手を負かすことがある。口上のあと、お互いは仲間となる。

[芳井敬郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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