県中央部をほぼ東南に流れて土佐湾に注ぐ、四国第三、高知県第二の河川。愛媛県の
「延喜式」(内膳司)に年料として土佐国「押年魚一千隻、煮塩年魚五缶」と記される年魚(鮎)が、この川から内膳司の贄殿へ献上されたと考えられ、古くは贄殿川とよばれたが、のちに仁淀川となったという(南路志)。また平城天皇第三皇子で皇太子であったが薬子の変に連座して廃された高岳親王(真如法親王)が、貞観三年(八六一)南海道に向かったが(「三代実録」同年三月三〇日条)、親王は新居に着いたと伝え、川が淀川に似ているといったことから似淀川―仁淀川となったという伝えもある。慶長二年(一五九七)の秦氏政事記(蠧簡集)に「贄殿川」とみえ、「土佐幽考」は吾川と記して吾川郡の名の由来となったという。そのほか「土佐物語」などに「似淀川」、「土佐州郡志」などに「二淀川」と記される。なお「土佐国風土記」逸文に「神河。
縄文時代の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
高知県北西部,吾川(あがわ)郡の町。2005年8月池川(いけがわ)町と吾川村,仁淀村が合併して成立した。人口6500(2010)。
仁淀川町中部の旧村,吾川郡所属。人口3072(2000)。仁淀川上流域に位置し,西は愛媛県に接する。四国山地の中にあって,南端を仁淀川が東流し,北から土居川が合流する。大部分は山林で占められ,林業と畑作農業が中心。かつては製紙原料となるミツマタ,コウゾの栽培が盛んであった。現在は養蚕や茶の栽培のほか,山林資源の開発が進められているが,出稼ぎによる労働力の流出が著しい。仁淀川沿いに国道33号線が走る。
仁淀川町北部の旧町。吾川郡所属。人口2432(2000)。仁淀川上流域に位置し,西は愛媛県に接する。四国山地南側に位置し,町のほぼ全域が山地からなり,北から流下する安居川と西から流下する土居川(池川川)の沿岸にわずかに耕地が開かれ,集落が点在する。農林業を主とし,栗,茶,ユズの栽培のほか,米作,養蚕,畜産が行われる。地場産業に杉,ヒノキなどの山林資源を生かした製材や下駄製造がある。中心地の池川(土居)は土居川と安居川の合流点近くに位置し,松山街道の宿場町,市場町として発達した。天明期(1781-89)に土佐紙の買上げ値段の安さに抵抗して農民が決起した紙一揆発生の地でもある。
仁淀川町南部の旧村,旧高岡郡所属。人口2685(2000)。仁淀川上流南岸に位置し,北西は愛媛県に接する。北の旧吾川村との境を東流する仁淀川に,村の南部から長者川,岩屋川が北流して合流する。村域のほとんどが急峻な山地である。中世から近世にかけて高岡郡北東部山間は別府(符)山(べふやま)と総称されたが,村域はそのうちの西森名,別枝名の地にあたる。江戸時代は土佐藩家老深尾氏の知行地で,紙,茶などの山間特産物に対する統制と徴集は厳しく,一揆や騒動が起こっている。ミツマタやコウゾなどの生産は近年振るわず,畑作,養蚕のほか,用材,茶の生産が行われる。南西部にある鳥形山(1346m)では石灰石が採掘されている。岩屋川発源地の引割峠には大引割・小引割とよばれるケイ質岩の開裂がみられる。別枝の秋葉神社の祭礼(旧暦正月18日)に行われる〈練り〉は著名。
執筆者:萩原 毅
愛媛県石鎚山南斜面に発する面河(おもご)川を源流とし,高知県中央部を南東に流れて土佐市新居(にい)付近で土佐湾に注ぐ川。幹川流路延長124kmで四国第4位,全流域面積1560km2。四国山地を横断し,三波川,秩父,四万十(しまんと)などの地質構造帯を流れるので,下流のはんらん原や海岸へ各種の岩石や砂礫が供給される。流域の北限は,松山市南境の三坂峠にまで及ぶ。愛媛県側の面河川は,面河渓などの渓谷美や石鎚登山ルートで知られ,久万(くま)高原を流れる支流を久万高原町の旧美川村で合わせて高知県境に至り,仁淀川と名を変える。県境からいの町の旧伊野町まで,著しい穿入(せんにゆう)蛇行をみせて峡谷をつくり東西方向に流れる。越知(おち)町から旧伊野町にかけて,小さなはんらん原をみるほかは平地に恵まれない。下流部では,南下する本流に直交して流入する支流がみられ,狭い低地や高燥な高岡平野(土佐市),弘岡平野(高知市の旧春野町)などが開けるが,東西に丘陵性山地が横断し,三角州はほとんど発達していない。
仁淀川に沿って四国山地を横断し高知・松山両市を結ぶ幹線である現国道33号線のルートが明治中期以降開かれ,JRの定期バスも通じている(2002年高知~愛媛県落出間廃止)。豊かな水量と急流を利用した電力開発が第2次大戦前から行われていたが,戦後は面河,大渡(おおど)の多目的ダムの建設が進められ,発電以外にも農業・工業用水や都市の生活用水などを供給する機能も大きい。中・上流の山間部は,かつては傾斜地利用の焼畑地帯であり,明治期以降もミツマタが換金作物として栽培され,下流のいの町や土佐市,高知市の紙業地に水運で供給された。流域の過疎化が著しいが,久万高原の杉,仁淀川町の茶などの特産品もある。下流の高岡,弘岡の平野は,近世,野中兼山が仁淀川に鎌田堰,八田堰を造成し,用水路をひいて生産力を高めた豊かな農業地帯で,現在は施設園芸農業が盛ん。丘陵地には土佐ブンタンや新高ナシなど果樹栽培もみられる。
執筆者:大脇 保彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
四国の中央部、愛媛県石鎚(いしづち)山南斜面に源をもち、高知県中央部を南東流し、高知県土佐市と高知市の境界で土佐湾に注ぐ。一級河川。延長124キロメートル、流域面積1560平方キロメートル。愛媛県側では面河川(おもごがわ)といい、高知県内に入って仁淀川と呼称される。四国山地を横断するので、とくに中流部では穿入蛇行(せんにゅうだこう)の著しい峡谷をなし、平地に乏しい。早くから電源開発、治水工事が進められ、大渡(おおど)ダムなどが建設された。下流部では施設園芸を中心とする農業が盛んである。中・上流河谷沿いに、明治中期以降、高知、松山両市間を結ぶ道路がつくられ、現国道33号に継承されている。かつて中流の山間地はコウゾなどの製紙原料産地で、舟運利用により下流の伊野、土佐市高岡などに土佐和紙業中心地が形成された。
[大脇保彦]
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