日本大百科全書(ニッポニカ) 「人身保護法(イギリス)」の意味・わかりやすい解説
人身保護法(イギリス)
じんしんほごほう
Habeas Corpus Act
1679年イギリスで、国家当局による不当な投獄を防ぐために制定された法律。原語のヘービアス・コーパスとは、法廷あるいは裁判官の前に「身柄を提出すべし」の意で、これを命ずる令状を「身柄提出令状」、一般に「人身保護令状」という。人身保護令状はコモン・ロー体系にごく古い時期からみられたが、チューダー朝以降、この令状を提出された獄吏は拘禁中の当該収監者の罪状を説明せねばならなかったところから、不当な拘禁から個人の身体の自由を守る手段とみなされるようになった。しかし実際上は、裁判所が休廷中は令状は発行されず、また収監者を海外の獄舎に移すことで令状の効力を免れるといった例も多くみられた。そこで議会はこの法律によって人身保護令状発行の対象を刑事犯全体に拡大し、その迅速化を図るための細目を定め、以後当局による不当な投獄は大いに抑制された。
[大久保桂子]
『高木八尺他訳『人権宣言集』(岩波文庫)』