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人造絹糸を縮めた呼名で,人工的に作った光沢のある絹糸のような糸という意味でつけられた。長繊維を人絹,短繊維(ステープルファイバー)をスフと呼ぶ。ビスコース人絹,銅アンモニア人絹および酢酸繊維素人絹(アセテート)が作られている。絹糸に似た繊維を作るのは化学者の夢であって,1882年に硝化法人絹が発明され,92年にビスコース人絹(ビスコースレーヨン)が作られ1904年に工業生産に移され,今日でも世界各国で大量に作られている。銅アンモニア人絹cuprammonium rayonはキュプラcupraまたはベンベルグ(商品名)と呼ばれ,製法の発明はビスコース法より早く1890年であり,97年に初めて工業化された。ベンベルグは天然絹糸に似た外観と手ざわりをもつ高級人絹であるが,生産費が高いため,生産量はビスコースレーヨンよりはるかに少ない。アセテートacetateは1894年からイギリスで研究され,第1次大戦中に工業化された。ビスコースviscoseは原料にセルロースを主成分とする亜硫酸パルプを,ベンベルグはそれより高価なコットンリンターまたはセルロース含有量の高い木材パルプを原料に用いる。いずれもセルロースを反応させて溶液とし,紡糸口金から凝固浴へ押し出してセルロースへ戻して紡糸する。これに対して,アセテートはアセチルセルロースのまま糸にしたものである。人絹織物は絹織物の安価な代用品として作られ,平人絹織物,人絹ちりめん(縮緬),人絹しゅす(繻子),人絹塩瀬(しおぜ)などが人絹糸から織られる。
執筆者:瓜生 敏之
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人造絹糸を略したもので、レーヨンともいう。繊維素を原料として化学的操作によって製造する連続糸で、1884年、フランス人シャルドンネChardonnetによって完成された。製造には、(1)ビスコース法、(2)銅安法、(3)酢酸法、(4)硝化法などがあるが、このうちビスコース法によるものの生産量が多い。性能は、均質な長繊維であるため、光沢・繊度が自由に変えられて、滑りやすく、汚れがつきにくく、染色性のよいことが特徴である。利用範囲は広い。
[角山幸洋]
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【歴史】
繊維を人工的に作ろうというアイデアは古くからあったが,具体化されたのは19世紀に入ってからである。綿のような安価なセルロース系天然繊維から高級な絹に似た人工繊維(人造絹糸,略して人絹ともいう)を作ろうという努力が始まった。ニトロセルロースがフランスのブラコネH.Braconnetによって1832年セルロースと硝酸から合成されたので,スイスのC.F.シェーンバインが46年にこれをエーテルとアルコールに溶かして糸に引いたのが始まりである。…
※「人絹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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