人生は朝露のごとし(読み)じんせいはちょうろのごとし

精選版 日本国語大辞典 「人生は朝露のごとし」の意味・読み・例文・類語

じんせい【人生】 は 朝露(ちょうろ)のごとし

人間一生は、朝の露が陽を受けてすぐに消えてしまうように、きわめてはかなくもろいものであるというたとえ。〔漢書蘇武伝〕

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故事成語を知る辞典 「人生は朝露のごとし」の解説

人生は朝露のごとし

人間の一生とははかないものだ、というたとえ。

[使用例] 牧師が言うには、ある人はこの人生を夢のように、はか無い朝露のように思うものも有る。基督キリスト信徒は決してそうは思わない[島崎藤村*春|1908]

[使用例] 翌日加藤君の危篤の報に接し、次の日に亡くなった。人生朝露のごとしといえあまりのことに自分は自失しそうだと書いてあった[横光利一*睡蓮|1940]

[由来] 「漢書伝」に見える、前漢王朝の武将りょうのことば。紀元前一〇〇年、前漢王朝の使者として北方の異民族、きょうを訪れた蘇武は、匈奴内紛に巻き込まれ、捕虜にされてしまいました。匈奴は、蘇武を降伏させようと、穴蔵に閉じ込めたり極寒の地に住ませたりして、一〇年以上もひどい目に遭わせますが、蘇武は鉄の意志で乗り越え、降伏しようとしません。そこで、漢から降伏してきた武将、李陵が、説得役を命じられました。李陵は、蘇武の家族が今は生きているかどうかもわからなくなっていることを告げ、「人生は朝露の如し、何ぞ久しく自ら苦しむことくの如き(人生とは、日が昇れば乾いてしまう朝露のようにはかないもの。どうしてこんなにも長く、自分から苦しみを受け続けているのですか)」と口説きます。しかし、蘇武の心は変わりませんでした。匈奴の政策転換によって、蘇武が漢へと生還を果たしたのは、捕虜となってから実に一九年後のことでした。

[解説] はかなく消える朝露と、蘇武の強烈な意志の対比が、昔から読む人の心を打ってきた物語。蘇武に言わせれば、はかない人生だからこそ、己の信念を曲げたくない、ということだったのかもしれません。

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