人口比例選挙(読み)じんこうひれいせんきょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人口比例選挙」の意味・わかりやすい解説

人口比例選挙
じんこうひれいせんきょ

衆議院参議院の国会議員選挙において、選挙権を有する人(有権者)の数に比例して選挙区割りを行い、議員1人当りの有権者数が平等に保たれた状態で行われる選挙。1人1票ともいう。最高裁判所裁判官の国民審査に際し、民主主義基盤である「一人一票」に対する最高裁の裁判官の意見を有権者に広く伝えることを目的として発足した「一人一票実現国民会議」の資料によると、人口比例選挙を原則としているアメリカでは、たとえば、人口約1280万人のペンシルベニア州の下院選挙の場合19の選挙区があり、最大有権者人口の小選挙区と最小有権者人口の小選挙区の差は1人である。一人一票実現国民会議は小選挙区を全廃し、全国を議員定数300の1区とする案を投げかけている。

 総務省が発表した2012年(平成24)12月の衆議院選挙投票日の有権者数によると、衆院選小選挙区割りで生じる議員1人当りの有権者数の差は、最大で29万1016人であった。これは千葉4区(49万5212人)と高知3区(20万4196人)の比較である。衆院選は、1996年(平成8)に中選挙区制から小選挙区比例代表制に移行する際、過疎地で急激に議員定数が減少することへの緩和策として1人別枠方式を導入した。これは小選挙区300議席のうち、都道府県にあらかじめ1議席ずつを割り振り、残った議席を人口比をもとに配分するもので、これが投票の価値に著しい不平等を生じさせる原因となった。最高裁は2011年(平成23)3月の投票の価値の不平等をめぐる訴訟判決で、衆議院小選挙区区割りに用いられた1人別枠方式を違憲とする判断を示したが、この判決の趣旨を充足するような選挙区割りの改正は、行われなかった。2012年12月の衆院選を巡る同様の訴訟16件では、その14件で違憲の判決が示され、そのうちの2件では一定の条件つきながら、選挙を無効とする厳しい判断が示される結果となった。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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