ひと【人】 の ふり見(み)て我(わ)がふり直(なお)せ
※浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)四「人のふり見て我がふり直すが第一の
伝授事」
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人のふり見て我がふり直せ
他人の行いの善悪を見て、自分の行いを反省し、改めよ。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
人のふり見て我がふり直せ
他人のふるまいを見て感じることがあったら、わが身を振り返り、改めるべきところを改めよ。他人の行いを批判する前に、まず自分のことを省みよ。
[使用例] 成功者すなわち世の手本と仰がれるように、失敗者もまた、われらの亀鑑とするに足ると言ったら叱られるであろうか。人の振り見てわが振り直せ、とかいう諺さえあるようではないか[太宰治*花吹雪|1944]
[使用例] 食物を扱う中村屋の者として、時々一流の料理屋で正式に食事し見学することは、当然必要なのです。〈略〉人の振り見て我が振り直せ、他店の使用人のサーヴィス、料理のよしあし、食器を運ぶ時に不愉快な様子はないか、さわがしい音は立たぬか、いろいろ自他を比較研究して、先輩の指導よりも有効に、自発的に多くの呼吸を知るのではなかろうか[相馬愛蔵・相馬黒光*一商人として|1938]
[解説] 「ふり」は、ふるまい、しぐさの意ですが、服装などの外見も含めてよいでしょう。幼児は、二~三歳になると、人をよく観察し、その姿やふるまいがおかしいと、すぐに指摘するようになります。判断の基準が少しわかってきて、批評精神が芽ばえているわけですが、そんなときに母親や年長者がよく口にすることわざで、ほとんどの人が耳にしながら育ったものと思われます。他人のことをとやかくいう前にわが身をふりかえることは、社会的に重要なマナーで、これを身につける上で大いに有効な役割を果たしてきたことわざといえるでしょう。
江戸中期からの表現で、現在もよく使われ、口にしなくとも、行動の指針や他人に対する批評としてよく脳裏に浮かんでくることばです。
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