京枡(読み)きょうます

精選版 日本国語大辞典 「京枡」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ます キャウ‥【京枡】

〘名〙 枡の一種。京都を中心に使われていたところからいう。方四寸九分(約一四・七センチメートル)、深さ二寸七分(約八・一センチメートル)。それまで種々雑多であった枡を、秀吉天下統一後、京都の商業枡に統一したもの。江戸時代を通して標準となった。
多聞院日記‐天正一六年(1588)六月一七日「唐みそまめ一斗五升〈略〉京升にて入了」

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デジタル大辞泉 「京枡」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ます〔キヤウ‐〕【京×枡】

戦国時代から京都を中心に用いられた枡。豊臣秀吉によって全国統一の公定枡とされた。1しょう枡は、方4寸9分(約15センチ)、深さ2寸7分(約8センチ)。江戸初期には容量を異にする江戸枡も使用されたが、寛文9年(1669)京枡に統一。昭和34年(1959)法的に廃止。

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改訂新版 世界大百科事典 「京枡」の意味・わかりやすい解説

京枡 (きょうます)

1669年(寛文9)江戸幕府によって指定された全国統一的な公定枡。その1升枡についていえば,内法(うちのり)で縦・横ともに曲尺(かねじやく)の4寸9分,深さは2寸7分,すなわち容積6万4827立方分の枡である(1分=3.0303mm)。1斗,5升,1升,5合,1合の穀用枡のほか,それぞれの液用枡も定められた。

 中世には,零細な私的土地支配の進展にともない,統一的な枡の使用は見られず,とくに室町時代には,その傾向は極度に達した。しかし反面,商業の発展,商業圏の拡大から,枡統一の気運が高まり,また京都が政治的のみならず,交換経済の最大の中心地であったので,畿内では京都十合枡,あるいは京枡と称する京都の通用枡が,しだいに権威を持つに至った。1568年(永禄11),織田信長が上洛すると,この京都十合枡を公定枡に指定した。信長の死後その政策を継承し,太閤検地を全国に実施した豊臣秀吉は,その基準である石盛(こくもり)に,京枡(京都十合枡)を採用したので,京枡の使用は全国化した。ただしこのころの京枡の容積は,6万4349立方分くらいであったと推定される。また当時の大名の中には,領内の余剰米大坂に廻米するものもあって,諸藩でも京枡を採用するものが増加した。

 90年(天正18)江戸に入部した徳川家康は,その後,江戸と京都に枡座設け,京枡の独占的な製造販売を許可した。このような経過の中で,京都枡座の京枡の容積は漸次増加し,寛永年間(1624-44)ごろには,6万4827立方分に達した。しかるに江戸枡座の京枡は旧量を保っていたので,とくに〈江戸枡〉と称して区別された。その結果,すでに全国経済が確立していた当時としては,取引などの面で大きな支障を見るに至った。そこで幕府は1669年(寛文9)に法令を発して,江戸枡を京都の京枡と等量にすることを規正した。それが前述した京枡統一令である。その後幕府は江戸,京都の両枡座を通じて統制を加え,幕末に至った。明治維新政府は両枡座の独占営業を廃止したが,1870年(明治3),再び京枡を公定枡に指定した。しかし1964年メートル法完全実施を機会に,京枡は,終焉を遂げた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「京枡」の意味・わかりやすい解説

京枡
きょうます

豊臣秀吉(とよとみひでよし)が制定した尺貫法の枡。秀吉は検地の際、各地域によって違っていた度量衡を統一していったが、枡については当時京都中心に使用されていた縦横4寸9分(約14.8センチメートル)四方、深さ2寸7分(約8.1センチメートル)の一升枡を基準とした。これが京枡である。これにより、石盛(こくもり)の決定や年貢収納には京枡が広く用いられるようになった。この京枡は、従前の方5寸、深さ2寸5分の一升枡の方を1分詰め、深さを2分増したもので6万4827(六四八二七、いわゆる「むしやふな」)立方分になった。穀用の5合以上には弦鉄(つるがね)を設けたが、この分の体積は見込まれていない。液用は木地枡(きじます)といい、弦鉄を設けない。種類は穀用、液用とも、一升枡のほか一合、二合半、五合、五升、七升、一斗枡がある。江戸幕府成立後、枡座は京都と江戸にそれぞれ設けられ、京枡と江戸枡があったが、1669年(寛文9)江戸枡の容量(6万2500立方分)を京枡と同じにしたことにより、公定枡は京枡に統一された。1875年(明治8)大蔵省は穀用枡の弦鉄分を補正するため深さを1厘増して、実積6万4827立方とした。これが現行の一升枡であるが、これを江戸枡としているのは誤りである。

[北島万次・小泉袈裟勝]

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百科事典マイペディア 「京枡」の意味・わかりやすい解説

京枡【きょうます】

戦国時代,京都中心に使用された枡。1568年織田信長が上洛すると,これを公定枡とした。太閤検地を実施した豊臣秀吉は,その基準となる石盛(こくもり)に京枡を採用,一升枡は縦5寸1分,横5寸1分5厘,深さ2寸4分5厘で,現行の0.986升に当たる。江戸初期は関西の京枡と江戸の江戸枡を併用。1669年京升に統一,一升枡は縦・横4寸9分,深さ2寸7分で,現行にほぼ近いとみられる。→
→関連項目検地

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「京枡」の解説

京枡
きょうます

京判・京番とも。京都およびその周辺で使用された枡で,量制統一の基準となった。江戸時代にはとくに京枡座が製作した枡をさす。豊臣秀吉は太閤検地に際して,石高の統一的算定のために商業の中心地であった京都で使用されていた枡を基準とした。播磨国姫路野里村の検地枡の規格は,口の縦5寸1分,横5寸1分半,深さ2寸4分半,容積約6万4349立方分(約1.79リットル)である。同時期の京枡(古京枡)は1升入りで,方5寸,深さ2寸5分,容積6万2500立方分(約1.74リットル)であり,両者の容積は一致しない。江戸幕府は,1669年(寛文9)に当時の京枡(新京枡)で全国の量制を統一したが,その規格は1升入りで,方4寸9分,深さ2寸7分,容積6万4827立方分(約1.80リットル)であった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「京枡」の意味・わかりやすい解説

京枡
きょうます

京判ともいう。枡の一種。平安時代から江戸時代初期までは多種類の枡があって一定しなかった。豊臣秀吉が検地にあたり,当時京都を中心に広く使用された京枡を年貢収納の基準としたのは統一の試みであった。江戸時代に入ると関東では幕府制定の江戸枡が,西国では京枡が使用されていたが,幕府は寛文9 (1669) 年京枡に統一し,京都の福井作左衛門が製作した。方4寸9分 (約 14.8cm) ,深さ2寸7分 (約 8.2cm) ,容積 64.827立方分 (1升すなわち約 1.8l) である。その製作,頒布には江戸と京都の両枡座があたり諸藩の多くもこれを採用した。明治政府も明治3 (1870) 年これを公定枡とし,1966年の計量法改正によるメートル法の完全実施まで使用された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「京枡」の解説

京枡
きょうます

戦国時代,京都を中心とした地域で使用され,江戸時代から全国標準となった枡
豊臣秀吉が中世以来まちまちであった枡の全国統一をはかるため採用。当時の枡は現在よりやや小さかったが,江戸初期,規格も乱れ,関西の京枡と江戸で製作された京枡が併用されていた。そこで1669年,秀吉制定の枡に統一して新京枡とし,その製造・販売を樽屋に担当させた。

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世界大百科事典(旧版)内の京枡の言及

【尺貫法】より

…その1升の大きさは,《伊呂波字類鈔》(鎌倉時代作)の1斗枡の寸法から換算して,近世の約6合であると思われる。しかし,この宣旨枡もあまり普及せず,量の単位が全国的に一応の統一を見るのは,豊臣秀吉による京枡の制定,徳川家康による枡座の開設を経て,新京枡が制定された1669年(寛文9)以降のことである。その新京枡の1升枡の大きさは内法4寸9分平方,深さ2寸7分であり,6万4827立方分に等しい。…

【升∥枡】より

… 豊臣秀吉は全国の検地を実施するとともに,収穫量の算定基礎を統一するため枡の大きさを定めた。これが今日の枡(京枡)の原形である。その一つと見られるものが現存する。…

【枡座】より

…幕府は,江戸では樽屋藤左衛門を,京都では福井作左衛門を枡座とし,それぞれ縦横4寸7分5厘・深さ2寸9分,縦横4寸9分・深さ2寸7分の枡を公定枡として製作,販売にあたらせていた。そして寛文期(1661‐73)には,全国的流通の活発化などを背景に,幕府は諸国枡の調査を実施し,その結果をもとに1669年京枡をもって全国の枡を統一しようとし,江戸の樽屋と京都の福井とを枡座に定め,枡の製作,販売を独占させようとした。しかし大藩では,枡座の枡を規準として独自に枡を作成するものもあった。…

※「京枡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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