交響詩(読み)こうきょうし

精選版 日本国語大辞典 「交響詩」の意味・読み・例文・類語

こうきょう‐し カウキャウ‥【交響詩】

〘名〙 標題音楽の一つ。管弦楽曲のうち、詩や伝説や風景などによる標題を付して文学的、絵画的内容を表わしたもの。リストにより創始され、リヒャルト=シュトラウスドビュッシーなどによって引き継がれた。交響楽詩。シンフォニックポエム

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デジタル大辞泉 「交響詩」の意味・読み・例文・類語

こうきょう‐し〔カウキヤウ‐〕【交響詩】

標題音楽の一種。特定の文学的または絵画的内容を描写する楽曲で、ふつう1楽章形式のものをいう。リストにより創始された。

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百科事典マイペディア 「交響詩」の意味・わかりやすい解説

交響詩【こうきょうし】

詩的あるいは絵画的内容を表現しようとする管弦楽曲。一般に標題音楽と呼ばれるものの中に入る。多楽章の標題的な曲は〈標題交響曲〉(ベルリオーズ参照)と呼ばれるのに対し交響詩は通常単一楽章の形式であるが,のちにはレスピーギの〈ローマ三部作〉のような多楽章の曲も書かれた。F.リストが自作《タッソー》(1854年)をsymphonische Dichtungと呼んだのが起源。リストのほか,フランクスメタナサン・サーンスドボルジャーク,R.シュトラウスシベリウスなどの作品が19世紀後半から20世紀初頭にかけて多数生まれた。以後,同じような形式の管弦楽曲でも〈交響詩〉のタイトルを冠した作品はごく少ない。→交響曲ライトモティーフ
→関連項目オネゲルスーク絶対音楽ムソルグスキーラフマニノフ

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改訂新版 世界大百科事典 「交響詩」の意味・わかりやすい解説

交響詩 (こうきょうし)

19世紀半ばに確立された管弦楽による標題音楽の一種。リストがはじめ序曲として作曲した《タッソー》を1854年に交響詩symphonische Dichtungと呼んだのが最初である。交響詩の先駆としては,管弦楽による標題音楽,とくに標題交響曲(ベルリオーズの《幻想交響曲》など)があるが,これが多楽章形式なのに対して,交響詩は一般に単一楽章形式の場合に用いられる。交響詩の直接の出発点になったのは,ベートーベンの《エグモント》序曲,メンデルスゾーンの《フィンガルの洞窟》などの演奏会用序曲で,またレーウェはすでに1830年に詩人バイロンの作品にもとづく管弦楽作品《マゼッパ》に〈音詩〉の呼称をあたえ,この名はR.シュトラウスも愛用した。リストによる交響詩の名称の使用は,音楽と詩の密接な結合によって音楽を革新しようという彼の理念を示している。彼は伝統的な交響曲作曲家と,詩作する交響曲作曲家とを区別し,後者の使命は,自己のイメージと心の状態を明確に再現することにあると説いた。ベルリオーズの固定楽想の手法はリストの交響詩にうけつがれ,表現内容の暗示と構成上の役割をになった。彼の13の交響詩は各国の音楽に大きな影響を与え,ドイツではR.シュトラウスによってひとつの頂点が築かれた。19世紀の国民主義は交響詩の展開を促進し,作曲家は自国の風景や伝説をこのジャンルでとりあげた。チェコのスメタナの《わが祖国》,シベリウスの《フィンランディア》などのほかロシアのムソルグスキー,リムスキー・コルサコフチャイコフスキー,フランスのサン・サーンス,フランク,デュカースらの作がある。印象派では《牧神の午後への前奏曲》などがドビュッシーによって作られているが,その性格はロマン派の傾向から大きく転換している。現代では,レスピーギの《ローマの松》を含む三部作やオネゲルの《パシフィック231》などがあるが,ロマン派的な音楽思潮から生まれたこのジャンルは,その後,退潮に向かった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交響詩」の意味・わかりやすい解説

交響詩
こうきょうし
symphonic poem
tone poem

おもに詩的ないし絵画的内容に基づいてつくられた管弦楽のための標題音楽の一種。通常は、標題に基づいた多楽章の標題交響曲などと区別するため、単一楽章の音楽に対して用いられる。標題付きの管弦楽曲はすでに1700年前後にみられるが、交響詩という語が使われたのは、リストの『タッソー』のワイマールにおける演奏(1854)が最初である。リストは、ユゴーの詩による『山上にて聞きしこと』『マゼッパ』、シェークスピアによる『ハムレット』、ラマルチーヌの詩による『レ・プレリュード(前奏曲)』など、文学、絵画に基づいた交響詩を13曲残し、このジャンルの最初の作曲家とされる。しかし文学的、歴史的、絵画的なものの主観的表出を好むロマン主義と結び付いたこの種の音楽作品は、リスト以前にベートーベンの『エグモント序曲』、メンデルスゾーンの『フィンガルの洞窟(どうくつ)序曲』などにその先駆をみることもできる。リストは、ベルリオーズが『幻想交響曲』などの標題交響曲で用いた固定楽想の手法を用いて発展させ、文学的・絵画的内容を一定の楽想を用いて暗示するとともに、曲に変化と統一を与える要素として活用した。リスト以後、交響詩は国民主義と結び付いて、スメタナの連作交響詩『わが祖国』に代表されるように、自国の歴史や風土が内容となった。また、管弦楽やその機能の拡大に伴い、リヒャルト・シュトラウス、ドビュッシーにより、色彩的効果を盛り込んだ作品が生み出された。

[美山良夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「交響詩」の意味・わかりやすい解説

交響詩
こうきょうし
symphonic poem

標題付き管弦楽曲の一種。 19世紀なかばリストが使いはじめた呼称。狭義には1楽章形式のものをさし,多楽章のものは標題交響曲として区別される。リストの『マゼッパ』『レ・プレリュード』をはじめ多くの作品ではベルリオーズの「固定楽想」の手法がさらに推し進められ,動機によって音楽以外の要素が明確に描写され,かつ曲全体の変化と統一が保たれている。以後ドイツでは R.シュトラウスに,またヨーロッパ各国の国民主義の作曲家に受継がれ,B.スメタナの『わが祖国』,A.ボロディンの『中央アジアの草原で』などの自国の風景や伝説を描くもの,ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』のように雰囲気や印象を暗示するものなど,多くの名曲が生れた。

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音楽用語ダス 「交響詩」の解説

交響詩

文学的・絵画的な内容を表現した管弦楽曲。

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世界大百科事典(旧版)内の交響詩の言及

【標題音楽】より

絶対音楽と対立し,共に19世紀に生まれた言葉であるが,両者の境は流動的で,かつ相互に影響し合っている。標題音楽の概念は論者によりさまざまに用いられるが,上述の意図をもった器楽曲を指すものと解し,声楽曲でも用いられている標題音楽と同様な処理は標題音楽的手法と呼び,下位のジャンルとして標題交響曲,交響詩(標題をもった,たいていは1楽章の管弦楽曲)を含むと考えるのが一般的である。 標題交響曲は標題音楽的な交響曲で,交響詩と異なり多楽章形式である。…

【ロマン派音楽】より

…こういうロマン的ベートーベン像が生きていた当時には,シューマンなどの世代は〈新ロマン主義者Neuromantiker〉と呼ばれもした。この言葉は現在はほとんど用いられないが,19世紀中葉以後に台頭した,リスト,ワーグナーを中心とする交響詩・楽劇への運動を〈新ドイツ楽派Neudeutsche Suhule〉の名で呼ぶことは今日もよくなされる。こういう標題音楽的傾向は,交響曲に代表される器楽の純粋な表現性を守るメンデルスゾーン,シューマンの行き方に対して,世紀後半には優勢になっていった。…

※「交響詩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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